コネクテッドテレビのマネタイズ戦略の最前線―ATS Tokyo 2024イベントレポート
デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2024」が2024年11月22日、都内にて開催された。
「コネクテッドテレビのマネタイズ戦略の最前線」と題した本セッションには、OpenX Managing Director, APAC ミッチェル・グリーンウェイ氏、Publica SVP of Product, ジェームズ・ウィルアイト氏、EssenceMediacom Japan Associate Media Planning Director 本田 峻介氏が登壇。グローバル展開をする企業を招聘し、コネクテッドテレビ広告のマネタイズにおける先進事例の紹介やグローバル動向分析などを行った。
ウィルアイト氏は、米国市場においては主な放送局はCTV広告在庫の20%を、さらにストリーミングサービス事業者に至っては90~100%をプログラマティック広告取引で販売していると報告。近い将来に日本市場においても同様にプログラマティック広告取引が本格的に活性化される可能性を示唆した。
グリーンウェイ氏も、地上波CMの営業体制を受け継ぐことができた放送局とは対照的に、新興のストリーミングサービス事業者はプログラマティック広告取引を有効活用することで広告在庫を広域的に販売することに成功していると報告。また本田氏は、スーパーボウルやNBAファイナルといった国民的な人気を集めるライブ中継コンテンツが多い米国市場では先行してCTV広告への需要が高まったものの、近年では日本市場も確実に追随しつつあるとの見方を示した。
また日本のCTVパブリッシャーにとって重要なのは独自のプレミアムコンテンツであるという点で両社の見解は一致。加えて本田氏は、先進的なCTVパブリッシャーはSNS上のショート動画などを通じて番組宣伝を行うことで新規視聴者を獲得していると紹介した。
CTV広告の効果測定のあり方について、グリーンウェイ氏はCTV広告が「ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングの架け橋」となるべきとして、CTV広告キャンペーンでクリックのみを成果として求めることは得策ではないとの考えを提示した。
ウィルアイト氏もパフォーマンスマーケティングへの適用自体は否定しないものの、CTV広告は来店計測や購買行動分析により適していると同調。同じく本田氏もCTV広告の「アシスト」力を評価する見解を示した。
ブランドセーフティ対策については、ウィルアイト氏が、Integral Ad Science のようなアドベリフィケーションツール提供企業が広告主を、SSPがパブリッシャーを保護する立場にあり、後者においてはDSPの選別に加えてプログラマティックギャランティード(PG)やPMPなどの枠組みの整備を通じて対策を行っていると説明。グリーンウェイ氏は、CTV事業に一定以上の事業投資を行うことで信頼を蓄積してきた企業と提携し、それらの企業に対してブランドセーフティ対策やDSP接続先を確認した上で、広告在庫の外部開放についてもPG→PMP→RTBなど段階的に進めていくことを提案した。本田氏はこれら一連の対策が施されたことで、広告主の間ではCTV広告在庫はブランドセーフティが既にほぼ確保されていると想定するようになってきているのではないかと述べた。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。