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『ヘブバン』に学ぶ最新グローバルマーケティング&ルーデルによるデータ戦略解説【Adjust Ignite Tokyo 2024 セッションレポート】

2024年7月18日、アプリの計測・分析ツールを提供するAdjustは、アプリマーケティングに関するカンファレンス「Adjust Ignite Tokyo 2024」を開催しました。本稿では「【2024年度版】ゲームアプリが未来に向けて取り組むクロスボーダーのマーケティングプロモーションとデータ戦略」のレポートをお届けします。

(Sponsored by Adjust)

 

モバイルゲームのマーケティングにおける課題とは

 

講演はMOTTO 代表取締役の佐藤基氏、
Adjust Enterprise Customer Success Managerの山根竜二氏、
ルーデル 執行役員 ソーシャルゲーム事業本部 データサイエンス部部長の吉永辰哉氏、
ライトフライヤースタジオ マーケティング部副部長の加藤耕輔氏が登壇し、
まずはモバイルゲームのマーケティングにおける課題・危機感が共有されました。

 

左から順にAdjustの山根氏、ルーデルの吉永氏、ライトフライヤースタジオの加藤氏、MOTTOの佐藤氏

 

加藤氏が挙げたのは「ゲーム/マーケティング/企業内の人材や役割の多様化」です。ユーザーのライフスタイルやプレイスタイルの変化、VTuberの隆盛など、モバイルゲームを取り巻く環境やユーザーの行動は多様化し続けています。
マーケターもSNS担当、リアルイベント担当など役割を細分化されるケースも多かったのですが、ユーザーの行動の多様化に伴い、カスタマージャーニーを描きづらくなるため、多様なスキルセットが求められ、領域を超えた役割が求められるようになるとしました。

 

吉永氏は「これまで以上にマーケティング効果とシビアに向き合う必要性」に言及しました。マーケティングのチャネルが増えるとマーケターが取れる選択肢も増えるので、どの選択が一番妥当か、費用対効果を最大化するにはどうすればよいかの判断が非常に難しくなります。最大効率で新規ユーザーを獲得するだけでなく、最大効率で定着させられているかの判断・分析もより一層重要になります。

 

 

モデレーターの佐藤氏からは、両氏の発言を補足する形でグローバルゲーム市場の現況が語られました。国内モバイルゲーム市場は約1.2兆円規模と言われていますが、海外市場も含めるとこれが10兆円規模になり、さらにPCやコンソールゲーム市場も含めるとその規模は20兆円規模にもなります。

 

佐藤氏は「だからこそ、これからは海外に目を向けなければならない」と続け、そのためのキーワードとして「グローバル」、「プラットフォーム」、「メディア」の3つが挙げられました。

 

 

 

『ヘブバン』に見るグローバル展開の成功例

 

「グローバル」と「プラットフォーム」に関しては、加藤氏からライトフライヤースタジオが展開する『アナザーエデン 時空を超える猫』と『ヘブンバーンズレッド』(通称『へブバン』)の取り組みが紹介されました。

 

2017年にリリースされた『アナザーエデン 時空を超える猫』は、国内市場での成功を経て2018年頃から海外展開の検討が始まりました。ゲームをグローバル展開する際は、海外でも自社でパブリッシングを行うか、ローカライズ(翻訳)も含むパブリッシングを行ってくれる現地会社のパートナーを探すかを決めるのが最初の大きな選択ですが、ライトフライヤースタジオは前者を選択しました。

 

現地でプロモーションに協力してくれる会社を探しつつ海外展開に耐えられる体制を社内で整え、2019年1月から英語版・韓国語版・繁体字版を配信しています。

 

やがて、2022年にゲームブランド・Keyとの共同タイトルである『ヘブンバーンズレッド』が国内でローンチし、翌2023年には韓国・繁体字圏でも配信がスタート。具体的な取り組みとしては、まずソウルと台北でリリース前に制作発表会が行われました。

 

 

当初はライトフライヤースタジオが上記2地域でどれほどの知名度を持っているか、どれほど『ヘブバン』に注目してもらえるか不安だったそうですが、韓国も繁体字圏も日本のゲーム市場への注目度は高く、多くの現地メディアが制作発表会に参加。直接コミュニケーションを取りながらスタートを切りました。

 

それを皮切りにプロモーションを強化し、現地で大規模なOOHを展開、さらにリリース直前には「台北ゲームショウ」にも出展し「日本から来た期待の新作タイトル」という流れを作れたとのこと。

 

また、リリース後の情報として『ヘブバン』は、繁体字圏のアプリストアで売上ランキング1位を獲得するなど、日本発ゲームタイトルの海外展開として、最大規模の成功を記録しました。

 

 

なお『ヘブバン』は、中国版ではbilibili、英語版ではYostar Gamesとともにパブリッシングをすることが発表されていますが、今までの自社での海外でパブリッシング経験が、パートナーシップを組む上でも活きていると語りました。

 

加藤氏は、自社タイトルの海外展開を検討している企業への助言を求められると「(日本と海外諸国の)文化的な違いを100%理解するのは難しいですが、理解をしなければ現地で成功を納めるのは難しい。現地へ出張して、現地の企業との対話を経て市場を知り、現地の街に出て、ユーザーの生活行動様式を少しでも理解することも大切で、丁寧に時間とお金をかける必要がある」と語りました。

 

ライトフライヤースタジオの社内マーケティング部は約4分の1が外国籍のスタッフで、海外展開する際は現地のプロモーション展開を企画する要のチームとなっているそうです。また、グローバル展開にあたっては、Adjustからも現地への紹介、グローバルチームとの協力など、さまざまな形でのサポートがあったとのことです。

 

 

モバイルにはない体験を提供するSteamへのプラットフォーム展開

 

『ヘブバン』は上記のようなグローバル展開に先駆け、国内においてローンチの約半年後にSteamでも配信を開始しました。海外では、モバイル端末よりPCでゲームを遊ぶことに親しんだユーザーが多い国・地域もあるため、そうした層への訴求が期待されます。

 

Steam版はモバイル版とデータ連携を行えるのでスマホからの移行はもちろん、外出時はスマホ、自宅ではSteamというプラットフォームの選択も簡単に行えるほか、ゲームパッドへの対応、4K出力への対応など「モバイルではできない体験」を味わえるように設計。こちらもモバイル版と同様に結果を出しています。

 

 

山根氏は、それらのコンソールへの流入元の計測は、Adjustのソリューションの1つである「PC & コンソール計測」で確認できると報告しています。

サーバー間セッション計測(S2S計測)を採用しており、クライアントのゲームサーバーからAdjustのサーバーに直接データを送ることで広告クリックから得られたエンゲージメント情報やマッチングした流入元情報を計測・分析します。

 

 

クロスプラットフォームの計測にも対応しているので、あるユーザーが外出時にモバイルで広告を見てアプリをインストールし、帰宅後に同じゲームのPC版をプレイ・課金した際も、それらの結果をすべてモバイルアプリに出稿した広告に紐づけることができるとのこと。

 

また、ゲームから離れていたユーザーがキャンペーンなどのテレビCMを見たのを機に復帰する事例も見られるため、新規ユーザーのみならず、復帰ユーザーの動向(復帰KPI)を見るのも大切であると強調しました。

 

 

 

あらゆるデータを分析し、新規ユーザーを定着させる

 

残る1つの「メディア」というテーマについては、吉永氏が任意のゲームに関するデータをあらゆる角度から視覚化・検証することの重要性が示唆されました。

 

プロモーションに関してもっとも大切なのは「広告費用を回収できているか」で、そのうえで「獲得した新規ユーザーを定着させることができているか」を見るのが重要です。

 

 

新規ユーザーの定着には、離脱要因の分析が肝要であるとしました。チュートリアルはクリアしているか、最初のステージはクリアしているか。ロード時間が長くはないか、ゲームの挙動が不安定でクラッシュしていないか(クラッシュすることでユーザーの離脱を招いていないか)など、ユーザーの離脱が多く見られる瞬間を特定し、それを改善・解消することで定着を図れます。

 

 

さらに、ルーデルならではの取り組みとして「AIを活用した新規ユーザーのLTV予測」が紹介されました。吉永氏によると、あるユーザーのゲーム開始初日の詳細な行動ログ・プレイログを機械学習モデルに解析させることで、その後半年~1年間程度のLTV予測モデルを構築できるようになってきており、かなりの精度を誇るようになってきたとのことです。

 

 

最後に加藤氏は、「モバイルゲームのマーケターを10年近く務めているが、グローバル、マルチプラットフォーム、メディアミックスなど変化も大きく、今が一番楽しく、一番成長できる時期だと思っている。これからもさまざまなチャレンジを積み重ねていきたい」とコメント。

 

吉永氏は「データサイエンスの領域は日進月歩で、最先端の技術を適切にキャッチアップしていくことが大切。生成AIの活用も自分のミッションの1つなので、最新の技術を事業運営やマーケティングに生かす道をこれからも模索していく」と語り、セッションを締めくくりました。

ABOUT 町田貢輝

町田貢輝

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学法学部法律学科卒業。編集プロダクション、出版社でエンタメ、健康、IT関連の雑誌と書籍の編集・進行管理に従事。2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。DX領域のメディア運営全般ならびに、調査研究を担当する。