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インプレス×FLUXが仕掛ける、Browsiを活用した新しいビジネス戦略とは[インタビュー]

1992年の創業以来、IT関連を中心にさまざまな専門メディアを展開しているインプレス。
オープンインターネットの厳しい競争環境で、新しいテクノロジーをうまく活用しながらのかじ取りが求められるなか、同社が昨年FLUXの支援を受けて導入したBrowsiの導入効果と今後の期待について、同社デジタルマーケティング室 室長の大薮氏、アドテクの広告運用を担当する山田氏、そして、FLUXのメディアアカウントエグゼクティブ部の下田氏へのインタビューに、お話を伺った。

(Sponsored by FLUX)

 

-自己紹介をお願いいたします。

大薮氏:インプレスでデジタルマーケティング室 室長をしている大薮と申します。
我々インプレスは1992年にアスキーの共同創業者の一人である塚本慶一郎が創業し、現在はIT関連をはじめとする各種専門メディア事業を展開しています。さらにインプレスのグループ会社では多岐に渡り、IT事業以外では、例えば音楽やデザイン、山岳自然のような各種領域に専門特化をしたメディアビジネスも手掛けています。
そのなかで我々は法人営業部門において、プログラマティック広告の運用をはじめとする業務を担っております。営業部門と連携をして、タイアップ記事のPVを増やすなど、アドテクを使って自社の純広告の価値を高める施策や、自社メディアの会員獲得なども行っています。

山田氏:大薮のもとで、アドテクの広告運用をメインに担当しております。そのなかで、FLUXさんとお付き合いをさせていただき、Browsiの導入を直接担当しました。

下田氏:FLUXにてメディアアカウントエグゼクティブ部 でマネージャーを務めております。私の部署では、媒体社様の対面として、Prebid Wrapperの他、Browsiや各種アドテクプロダクトの提供、メディア事業全体のコンサルティングを行っています。私はプレイングマネージャーとして、マネジメントをすると同時に、媒体社のお客様とも直接お仕事をさせていただいております。

 

ユーザー体験とマネタイズとの難しいバランス

-インプレスさんが感じておられる現在のデジタル広告ビジネスの環境と課題について、お聞かせください。

大薮氏:プログラマティック広告の収入は長期間にわたり、単価下落の傾向が続いています。何も対策をしないでおくと、広告収入が下がってしまうという状況が長い期間続いています。
対応策として手を付けやすいのは広告枠を増やすことになるのですが、市場全体でそれをすることで、広告在庫が増えて、広告単価が下落します。そうするとまた広告枠を増やし、その結果読者にも嫌がられてしまう、というようなサイクルに陥っています。
メディアにとっては、マネタイズと読者のユーザー体験とのバランスをどう取るかということについてずっと課題としてあり続けています。
また、クッキーレスに向けて数年前にDMPを導入し、ウェブの閲覧履歴を集めていわゆるオーディエンスターゲティング系のメニューも準備をしましたが、これをプログラマティックで活かしきれていないというのも課題として挙がっています。
ですので、新しいソリューションやトレンドに関する情報収集しながら、出来ることをやっていくというのが現状です。

 

-元々FLUXさんとインプレスさんは、いつ頃からお取引があったのでしょうか

下田氏:Prebidを導入するときにお取引を開始して以降、かれこれ4年5年ほどのお付き合いとなります。

 

-FLUXさんがインプレスさんにBrowsiを提案されるに至った背景についておきかせください。FLUXさんからご覧になられたインプレスさんは、どのような課題を持たれていると感じましたか?

下田氏:媒体社が今直面している悩みは色々あります。クッキーレスにまつわる問題もそうですし、最近話として上がりやすいのは、広告収入を得ることだけを目的に作られる、MFAに関する問題です。
インプレスさんに関しては主要な10数媒体でPrebidを導入していただいているのですが、媒体や記事ごとにコンテンツの長さがさまざまであることで、媒体ごとに、ユーザーにとっても、広告収入の観点でも最適な広告枠の配置を効率的に決めることが難しかったというのが特徴です。
極端に長い記事もある一方でとても短い記事もあるため、記事の長さに応じて広告枠を何個設定するのかということを、効率的にコントロールするのが難しいという課題がありました。
そのことがBrowsiの提案をしたということにつながります。Browsiはユーザビリティや、広告主にとっても重要な指標であるviewabilityを考慮し、AIがユーザーをスコアリングして、記事の長さに応じて一人一人に最適な広告枠の位置や数を判断して挿入してくれます。
ユーザー側からすると、ある人と別の人とが同じ記事を見ていても、それぞれの記事内で表示される広告枠の数や位置が異なるという体験をすることになります。
これまでは媒体社が広告枠の位置や数を変更する場合には、媒体社側でエンジニアに一定の作業をしていただく必要がありました。そこでBrowsiを導入いただくことで、弊社側で変更に関する作業をすべて対応することが出来るようになりました。
これにより、広告枠の数や位置の変更や調整にかかるインプレスさん側の工数がほぼなくなりました。

 

AI時代の新しい広告運用

-なるほど。インプレスさんは、Browsiの導入に当たり、どのような点に期待されたのでしょうか。

大薮氏:導入に向けたテストを昨年(2023年)10月頃より開始し、3段階で検証を進めていきました。2023年に広告のPV単価が大きく下がった時期があり、様々な対策を検討する中で、FLUXさんより前々からご提案いただいたBrowsiの導入を検討し始めたことがきっかけです。
テスト導入において、導入前後を比べると、広告収入は5%から15%ほど上昇し大きな期待を持つことが出来ました。
どこも似たような状況だと思うのですが、出版社系の媒体社は特にエンジニアがあまり多くいないので、エンジニアのリソースをどう確保するかが基本的な問題になっています。私たちの会社には広告専門のエンジニアがいないので、いろんなシステムを見ている人間に広告の仕事を割り込ませることになり非常に難しいのです。
先ほど下田さんからもお話があった通り、導入にあたり当社のエンジニアの工数が増えなかったことも、大きな効果の一つです。

 

山田氏:導入にあたっては16媒体でテストを行いました。その効果検証が非常に大変だったのですが、すべてFLUXさんにお任せできたのがとても良かったです。
その結果を社内で検討し、数字も良かったので導入に至りました。サポートは非常に手厚く、導入後もチューニングなどのご提案を細かくいただきました。これにより媒体ごとのばらつきもなくなり、大変助かっています。

下田氏:実際のところインプレスさんのパフォーマンスは非常に良いです。トライアルは何段階にも分けて実施しましたが、タイミングも良く、非常に良い結果が出ました。他の媒体社と比べても、同じくらいの広告挿入量で高い効果を発揮しています。
導入後においても、例えば仮にインプレスさんで7月の売り上げが月後半に足りないという話になった場合に、広告枠を一時的に増やすこともできます。今まではエンジニアに依頼して広告枠を追加してもらう必要がありましたが、Browsiを使えば、最短即日で対応が可能になります。具体的には、今まで3つしか入れていなかった広告枠を1週間だけ5つに増やすとか、そのような対応も可能です。こうした小回りの効く使い方ができるのは非常に便利です。

 

-Browsiは今、業界で普及が進んでいるのでしょうか?

下田氏:業界全体ではかなり進んでいて、私たちのような媒体社向き合いの事業者を通して多くの媒体社に導入されています。当社経由でも数十億PVという レベルで導入が進んでいる状況です。

 

-FLUXさんから提供される場合のサポートは、他社とどのように差別化されているのですか?

下田氏:チューニングの要素が重要で、そこが差別化のポイントです。日本国内ではFLUX経由の導入実績が最も多いため、多数の運用事例があります。これにより、他社の成功事例を基にした最適なチューニングを提供できます。横展開の元データが多いことが大きなメリットです。

 

新たなテクノロジーが生み出す、新しいビジネス戦略

-今後のBrowsiの機能やサポートについて、期待されることや改善点があれば教えてください。

大薮氏:今のところパーソナライズされた広告がうまく表示されています。特に大きなクレームもありませんので、今後は純広告と連携してサイトジャック的な手法をパーソナライズに取り入れ、さらに効果的に広告を出す取り組みを進めていけるといいなと思っています。
Browsiにはその機能は既にありますので、これをどう活用していくかがポイントです。既存の機能を活用して、より効果的に広告を展開していきたいと考えています。
今は純広告がなかなか売れなくなってきているので、私たちも差別化が重要です。例えば、スマホの全広告枠をクライアントの広告で埋めるなど、高い効果を実現する方法を考えています。

下田氏:最近、広告主がビューアビリティを重視し始めているという話が多くなってきました。見られていない場所に広告が出ていたという問題がニュースで取り上げられました。
例えば、ある大手人材会社の試算によると、1.5億円の広告費が無駄になったことが明らかになりました。見られていない場所に多くの広告が投下されていたのです。プログラマティック広告やDSPを利用する際、広告主がビューアビリティにキャップをかけることが増えています。例えば、ビューアビリティが70%以上の場所にしか広告を出さないといったことです。Browsiはビューアビリティを予測して広告を出すので、その要望に応えることができます。
最近になり広告主がこの問題に気付いて対処し始めており、今後この動きは加速すると思います。

大薮氏:メディアは基本的に新しい読者を獲得して、その中の一部がファンになり、ファンもいずれはやめていくという繰り返しです。マネタイズしながら、できるだけユーザー体験を損なわないようにしたいと思っています。パーソナライズの部分は今、主にスクロールに基づいていますが、例えば来訪頻度に応じて表示させる広告の量を調整するといったテストをして、うまく根付くようにしたいですね。
実際のところ、それができている媒体はほとんどないと思います。流入経路で分けるとか、ABテストで試すとか、そういうことが可能です。例えば、Yahoo!から来たユーザーにはこうする、Xから来たユーザーにはこうするというテストを行うことができます。

下田氏:おっしゃる通りですね。BrowsiはABテストも可能なので、いろいろな方法で効果を測定できます。そういった知見が溜まってくると、メディア全体の戦略にも役立てることが可能となります。
私からも今後の展望について少しお話しさせていただければと思います。メディアビジネスにおいては、ユーザビリティをどう担保して、かつマネタイズをするかの両立が大きな課題です。BrowsiやPrebid 、その他のプロダクトを活用しながら、ユーザビリティを確保しつつ最適な販売方法を突き詰めていきたいと考えています。
私たちは国内で最もBrowsiの導入実績が多く、本国とも密な協力関係にあり、提案や要望出しも随時しております。
インプレスさんからもご要望があれば、私たちにお伝えいただければBrowsiと連携をとりよりよい取り組みが出来るようにしていきたいと思っております。

大薮氏:引き続き、一緒に取り組んでまいりましょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。