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急成長を続けるデジタル音声広告市場と Spotifyの戦略

 

AirPodsを代表とするヒアラブルデバイスの爆発的な普及により、国内外でデジタル音声広告市場の成長が続いている。
2016年、米国で1650億円だったデジタル音声広告市場は、2022年には8850億円にまで拡大し、音声は第5のデジタル広告フォーマットに位置づけられるほどの成長を遂げた。

そんなデジタル音声広告市場の拡大をけん引するのが、全世界で約6億1,500万人以上のユーザーを抱える世界最大級のオーディオストリーミングサービスSpotifyだ。

今回、Spotify、デジタル音声広告の成長背景、Spotifyの音声広告の特徴や活用事例を紹介するメディアラウンドテーブルを開催した。
本記事ではその様子をお届けする。

 

 

高い成長率をキープするデジタル音声広告市場の可能性

 

「Spotify デジタル音声広告事業 メディアラウンドテーブル」では初めに、ゲストスピーカーの株式会社オトナル代表取締役 八木太亮氏が、デジタル音声広告の最新動向を報告・解説した。

デジタル音声広告の成長背景や特徴、強みについて、
「デジタル音声広告市場は、世界的に成長を続けています。特に成長率が目覚ましい米国市場では、音声広告が検索連動広告、バナー広告、動画広告、SNS広告に並ぶ“第5のデジタル広告フォーマット”として注目を集めています」と紹介。

デジタル音声広告の特徴として、

 

1.ながら時間へのリーチ
掃除をしながら、ランニングをしながらといった、テレビや動画、SNSでは届かない生活シーンにアプローチすることができ、効率よく広告を提供できる。

 

2.音声ならではのアテンション/高いブランド認知性能
「目をそらすことはできても、耳を閉じることはできない」(『リーセンシー論/アーウィン・エフロン』)の言葉の通り、音声広告は動画広告と違い、スキップされにくく、認知されやすい。

 

3.データを活用したターゲティング&効果検証が可能
ラジオのような不特定多数に電波で届ける音声メディアではターゲティングが難しかったが、Spotifyをはじめとしたデジタル音声サービス内のデジタル音声広告であれば、年齢や性別、職業、地域を絞った広告展開ができる。また、短い時間に絞ったターゲティング広告も可能である。リーチやブランドリフト効果の測定が容易であり、効果的な広告戦略を構築できる。

 

と解説した。

 

 

スポティファイジャパンの壁には多数のアーティストサインが飾られている。
写真は人気グループ「SEKAI NO OWARI」のサイン。

 

 

国内のデジタル音声広告市場の成長をけん引するSpotifyの取り組み

 

続いて、スポティファイジャパン広告事業部統括 立石ジョー氏より、Spotifyのブランド特性やユーザー特性、複数の広告事例や現在注力している取り組みなどが紹介された。
ここでは、筆者が特に興味を持ったSpotifyの取り組みについて紹介する。

 

Spotifyの2019年と2023年末のポッドキャスト聴取の比較をすると、国内Spotifyユーザーにおける1ヶ月あたりのポッドキャスト聴取時間は約185倍に増加、月に一度以上ポッドキャストを聴取するSpotifyユーザーの数は約50倍に増加と、ポッドキャスト事業が急成長していることがわかる。

立石ジョー氏は、ポッドキャストリスナーの特徴について、
「ポットキャストは、興味のあるトピックについて深く掘り下げたいときにも活用される傾向があります。Z世代は特にカルチャーや新しい知識を得るツールとして日常生活に取り入れており、聴取時間も長く習慣化されエンゲージメントの高い傾向が見られます。」と解説。

そのうえで、広告主が幅広いコンテンツを聴取するリスナーとつながることができる、初のオーディオ広告のマーケットプレイス「Spotify Audience Network」が昨年より国内でも利用開始になったことを紹介。現在は、企業が運営するSpotifyオリジナルまたは独占配信ポッドキャスト番組に対し広告を出稿することができるとのこと。

さらに、デジタル音声広告に適したクリエイティブの開発に関する関心の高まりを受けて、Spotify広告のクリエイティブアワード「Spotify Hits」を今年日本でも初めて開催することも発表した。

 

最後に立石ジョー氏は、
「私たちSpotifyは、革新的なソリューションや豊富な測定機能を通じて、広告主の皆さまのビジネス成長をお手伝いししてまいります。今後は、イノベーションとエデュケーションをいっそう追求し、国内のデジタル音声広告の成長にも貢献できればと考えておりますので、今後もご注目いただければ幸いです」
と締めくくった。

 

 

スポティファイジャパン上級執行役員 広告事業部統括 立石ジョー氏。

 

ABOUT 町田貢輝

町田貢輝

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学法学部法律学科卒業。編集プロダクション、出版社でエンタメ、健康、IT関連の雑誌と書籍の編集・進行管理に従事。2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。DX領域のメディア運営全般ならびに、調査研究を担当する。