デジタル広告でのブランディングに関わる課題を解決―新規プラットフォームのOnyxを立ち上げたOutbrainの戦略とは[インタビュー]
特定の商品やサービスを求めているわけではないユーザーにアピールし振り向いてもらう必要があるブランディングキャンペーンに関して、デジタル広告はかねてから的確な効果測定が難しいという課題を抱えてきた。この課題に正面から向き合い、新たなソリューションを開発したのが、オープンウェブにおけるリーディングテクノロジーカンパニー Outbrainだ。同社はいかにしてブランド広告の最適化を実現しようとしているのか。新規広告プラットフォームである「Onyx by Outbrain™」(オニキス、以下Onyx)の責任者に話を聞いた。
(Sponsored by Outbrain)
新しいブランディング・プラットフォーム
―自己紹介をお願いします。
Outbrainにてブランドソリューション・EVP(エグゼクティブ ヴァイス プレジデント)を務めるアヤル・スタイナーと申します。いくつかのデジタル企業を経て、2012年にOutbrain にジョインしました。最初はオーストラリアとニュージーランド両市場の立ち上げを担い、APAC事業のマネージングダイレクター及びデマンドサイド事業の責任者を経て、現在はOnyxという新規広告プラットフォームの責任者を務めています。
―担当されている新規事業の概要についてお聞かせください。
Outbrainは創業以来、主にレコメンドウィジェット事業者として認知されてきました。記事下に埋めこんだウィジェットが次に読むべき記事をレコメンドする機能を開発し、パブリッシャーにはトラフィック増加とユーザー獲得と収益改善、そして広告主にはリードや新規ユーザーの獲得や売上増加などを実現するソリューションとしてCPC課金方式で提供してきたのです。つまり、これまでは主に獲得型の広告プラットフォームとして高く評価いただいていました。
一方、マーケティング活動においては、認知度向上や検討層向けのアプローチを目的としたブランド広告も重要です。日用消費財をはじめとして、世の中にはオンライン広告で目にしても、すぐにオンラインで購入をしない商品が山ほどあります。例えばシェービングクリームは、広告を見た直後ではなく、次にドラッグストアやスーパーを訪れた際に買うのが一般的でしょう。実際に多くの広告主がブランディング目的で動画やリッチメディアを活用しています。しかしながら、デジタル広告におけるブランディングキャンペーンには数々の本質的な課題が立ちはだかっていたことも事実です。
そこで日本市場では2024年1月より、Onyxというブランディングキャンペーンに特化した全く新しい広告プラットフォームの提供を開始しました。米国、英国、フランス、イタリア、ドイツで既に2023年6月から本格的な運用を開始しており、本サービスを導入した広告主の数は100社以上に及びます。これまでのように記事下のネイティブ広告ではなく、記事中に動画やその他のリッチメディアの広告枠を整備し、アテンション最適化を行っていることが特長です。
―従来のOutbrainとOnyxはそれぞれ独立した広告プラットフォームということですか。
日本市場であれば、Outbrain Japanが窓口となるという点は同じです。ただし、メディアバイング手法が異なります。広告在庫の買い付けは、Outbrainというアドネットワークからではなく、弊社が所有するDSP、またはその他既存のDSPを介したプログラマティック取引を通じて行います。またCPM課金であるというのも大きな違いです。
―これまでOutbrainが得意としてきたパフォーマンス広告と、Onyxが扱うブランド広告では、必要とされるデータや知見が異なるのではないでしょうか。
Outbrainの最大の強みは、パブリッシャーと直接コード・オン・ページ型で連携していることから得られる膨大なデータにあります。広告リクエストの送受信だけを行うその他多くのSSPやアドネットワークとは大きく異なります。
この詳細なデータと機械学習を用いて、パブリッシャー及び広告主の事業に有用な最適化を行うという手法自体は、パフォーマンス広告にもブランディング広告にも適用できます。その上で、従来のスタンダードなOutbrainはパフォーマンスを、Onyxはアテンションを最大化するために最適化を行います。
またプレミアムパブリッシャーとの提携に加えて、DoubeVerify社のビューアビリティ及びブランドセーフティとAdelaide社のアテンション測定機能を取り込み、2021年に買収したvideo intelligence社の動画コンテンツ最適化機能、そしてインハウス部隊となるBrand Studioによるクリエイティブ制作機能など、ブランド広告に必要な環境はすべて取り揃えました。
アテンション指標は日本市場に根付くのか
―Onyxにアテンション最適化機能を導入したのはなぜですか。
ブランディングキャンペーンでは、これまでビューアビリティや視聴完了率などが主なKPIとして用いられてきました。しかしながら、これらの指標ではブランド広告効果を計測するには不十分であるというのがオンライン広告市場関係者のほぼ共通認識です。
「視認できる位置に広告が表示されている」ことを意味するビューアビリティや「動画が最初から最後まで流れた」ことを意味する視聴完了率と、サイト流入またはブランドリフトの相関性は必ずしも明白ではありません。画面の上部や横にずっと表示されながらもユーザーが注意を向けていない広告がたくさんあることを考慮すれば、容易に理解いただけると思います。一方でユーザーが実際にどれだけ広告に対して注意を向けているかを測るアテンション指標と広告効果には高い相関性があるとの研究結果がいくつも発表されています。
―複数あるアテンション測定事業者の中で、なぜAdelaide社を提携先として選んだのでしょうか。
Adelaide Metricsでは、ページ滞在時間、広告サイズ、広告密度などに加えて、ユーザーのアイトラッキングデータやインタラクションデータなどを統合的に分析し、アテンション測定を行います。精緻な仕組みであることに加えて、独立性と客観性を担保するサードパーティ事業者であり、既に世界的に認知されているという点は大きいです。またリアルタイムでデータを取得し、実装も容易であるという点も高く評価しました。
―日本市場ではまだアテンション指標が広く普及していないかと思うのですが。
実は、米国市場では既にマーケターの36%が本格的にアテンション指標を活用しているとの調査結果が出ています。ただし、米国でもアテンション指標に基づく広告運用はまだ始まったばかりです。アテンション最適化によって、メディアプランニングやメディアバイングそしてクリエイティブが今後いかに変化していくかを見守っている状況にあることについては変わりありません。よって、日本でも米国と同様に少しずつ広まっていくと考えております。
マーケターの責務とは
―Adelaide社のアテンション測定データは、具体的には、どのように広告の最適化に生かされるのでしょうか。
Outbrainがパフォーマンスを最大化したように、Onyxではアテンションを最大化するために、コンテクスチュアルデータを駆使して、ユーザー体験の一部として広告体験の最適化を図ります。ユーザーの興味・関心に応じた品質の高い広告であれば、ユーザーは広告を受け入れます。
また大量の広告に日々接している現代のユーザーは、広告に対してそう簡単にアテンションを払わなくなってきています。一般的な規格のバナー広告は十分な効果を発揮できなくなっています。一方で、ユーザーの目を引くような動画広告を制作するのは容易ではない。そこで当社のBrand Studioが、お手持ちの静止画や動画素材から、ユーザーが自発的に見たいと思うような動画またはインタラクティブ広告を作成するサービスを提供しています。
Onyxは、アテンション最大化に必要なクリエイティブ、配信面、テクノロジーの3要素を兼ね備えた唯一無二のプラットフォームであると自負しています。
アテンションと成果には高い相関関係があることがわかる
―オンライン広告市場には今後どのような変化が待ち受けていると思いますか。
いよいよ今年に迫ったGoogle ChromeにおけるサードパーティCookie廃止により、ターゲティングが難しくなることは間違いありません。ユーザーが今まさにどのようなことに関心を持っているかについて精緻な情報を提供するコンテクスチュアルデータの重要性が再注目されるでしょう。
また消費者の社会的責任が提唱されるようになったのと同様に、今後はマーケターにも広告投資に関する責任が求められるようになると思います。本来的には広告費はパブリッシャー、つまりは実際に取材・執筆・撮影・編集活動を行う記者や編集者たちに還元されるべきです。そうでなければ、民主主義の根幹となる良質なジャーナリズムは枯れ果ててしまうでしょう。
当社は、パブリッシャーを支援するオープンウェブ事業者であることに誇りを持っています。ジャーナリズムの領域に影響を与え、より良くしていく力を持っているのはマーケターの皆様です。広告効果に加えて、広告費の社会的投資先という観点からも魅力的な広告プラットフォームとなるべく、引き続きオープンウェブを支援し続けていきたいと思います。
Outbrain Japan株式会社
https://www.outbrain.com/jp/
Onyxに関するお問い合わせはこちら
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。