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Teadsがアテンション指標の最新動向を発表[ニュース]

グローバルメディアプラットフォームであるTeadsは、6月6日、東京の六本木で開催されたAdvertising Week Asia 2023にて、アテンション指標の最新動向について議論を行うパネルディスカッションを開催した。

 

ビューアビリティとの最大の違いとは

TeadsのManaging Director of East Asiaを務める今村 幸彦氏は、これまで広告の品質を評価する指標として用いられてきたビューアビリティと、近年注目が高まりつつあるアテンションの違いを説明。前者はユーザーが視認できる範囲に表示されていることを意味し、あくまでも「広告が目にされる可能性が高い」ことを示す一方で、後者は「実際に見られた」ことを把握するための指標である点に大きな違いがあると述べた。

なお、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)や米国の媒体指標協議会(MRC)といった主な業界団体は、「広告の50%以上の範囲が連続して、ディスプレイ広告であれば1秒以上、動画広告であれば2秒以上」表示された際に、ビューアビリティが確保された広告表示として見なすとの考えを示している。

しかしながら、この定義に基づくと、一般的にはユーザーの関心を惹きやすいと考えられるサイズの大きな広告は、モバイル端末上ではスクロールなしで一度に表示できる範囲が限定されるがゆえに、ビューアビリティが確保されていないと見なされる可能性が高くなる。今村氏は、こうした具体例を挙げた上で、ビューアビリティが高くとも、必ずしも広告効果は高くない場合があり得ると指摘した。

 

ビューアビリティがある広告(点線)と実際に見られた広告(実線)の割合を比較した棒グラフ。最大で45%もの乖離が生まれている

 

電通のInternational Brands, Director of Analytics and Innovative Solutionsを務めるグラント・ジョシュア氏は、ビューアビリティはプログラマティック広告市場の黎明期に重宝された指標ではあるものの、当初想定していたほどには広告効果との関連性がないことが次第に明らかになってきたと説明。広告がどれだけきちんと目にされ、消費者の関心を惹き、さらに広告の効果があったかを計測するためのより適切な指標として、代わってアテンション指標への注目が高まりつつあるとの考えを述べた。

 

アテンション指標の利点とは

ジョシュア氏は、ユーザーが広告を実際に目にしたか否かを計測するアテンション指標は、広告想起率と密接に関与しており、売上増などの最終的な事業成果との関連性も高いと主張。業界全体としていまだ開発途中の段階にあるアテンション指標が確立されれば、最終的な事業成果に基づく広告配信の最適化を行いやすくなり、広告表示一回当たりの広告効果が高まることで、フリークエンシーを抑制すると同時に新たなユーザーへのリーチ拡大に向けて広告予算を配分できるようなるなどいくつもの利点が生まれると伝えた。

続いて今村氏は、ユーザーのアテンションを得やすい広告の特徴として、以下の4点を挙げた。

 

  • 視聴可能時間が長い
  • 強制的な広告表示ではない
  • 有名なタレントの起用や秀逸なキャッチコピーを活用した優れた広告クリエイティブである
  • 広告自体と広告の表示面との関連性がある

 

この4項目に対し、エスエス製薬株式会社のDigital Marketing Managerを務める新免 珠美氏は、医薬品という商品の特性上、ユーザーの心情に寄り添うようにとりわけ留意していると発言。最後まで観てもらえなければメッセージが伝わらない広告クリエイティブやターゲットマッチを用いた場合以外では、強制視聴の広告配信は行っていないと述べた。

 

アテンション計測プロジェクトが始動

パネルディスカッションの後半部では、電通が実施した調査プロジェクトである「アテンションエコノミー調査」についての紹介が行われた。ジョシュア氏によると、地上波テレビの視聴率が低下し、テレビCMだけでは十分なリーチを得ることができなくなった現状を受けて、大手広告主がデジタル広告への予算配分を増やしている。この過程において、テレビCMと同様の内容をオンライン上でも配信すれば良いのか、またオンライン広告配信でテレビCMに相当する効果を得ることができるのかといった様々な疑問が広告主から寄せられているという。

そこで本調査プロジェクトでは、テレビ視聴者とモバイル端末ユーザーの中からモニター参加者を募った上で、モニタリング調査を開始した。2023年9月ごろにはモバイル端末、また2024年にはテレビ広告の測定結果がそれぞれ公表される予定であるという。また電通は、本調査の結果を参考にしながら、アテンション指標に基づく新たな広告の課金体系を整備するとしている。

 

 

アテンション指標の用途は、広告配信後の効果計測のみに留まらない。電通では事前のA/Bテストへの活用も検討している。その際に考慮すべきは、媒体やフォーマットに応じてアテンションのあり方は大きく変わるという点だ。例えば次々と画像をめくるように閲覧するInstagramと動画視聴を主とするYouTubeでは、視聴時間や視聴態度が大きく異なる。そこで、媒体や広告フォーマットごとに異なるアテンション指標を整理し、それぞれの媒体に応じた最適化を目指す。

また将来的にはデータパートナーと接続し、ID管理などを通して取得した購入関連情報などと照らし合わすことで、アテンションと売上増などの最終的な事業成果との関係性についても明らかにしていくとの考えを示した。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。