“思いがけない出会い”から潜在関心層を捉える―Yahoo! JAPAN トップページを使った「セレンディピティ・マーケティング」とは[インタビュー後編]
by ニュース
on 2023年6月01日 in前編(URL)では、「Yahoo! JAPAN」および「Yahoo!ニュース」の現状や運営方針、ヤフーの強みなどについて話を聞いた。後編ではこれらのメディアの力を使って、潜在関心層へアプローチする新しいマーケティング手法「セレンディピティ・マーケティング」について、ヤフー株式会社の宮村壮 マーケティングソリューションズ統括本部 営業推進本部 販売推進部 部長に話を聞いていく。(Sponsored by ヤフー)
※前編はこちら(URL)
最適化だけではない、広告が持つ本来の力とは
―後編では、広告事業の部門をご担当されている宮村さんに、セレンディピティ・マーケティングの内容についてお聞かせいただきたいと思います。まずは、セレンディピティ・マーケティングが生まれた背景ですが、マーケティングコミュニケーション領域における近年の課題をどう考えていますか?
課題は大きく2つあると考えています。まず1つ目は、生活者が触れる情報において「フィルターバブル現象」が進んでいる、という点です。
フィルターバブル現象とは、生活者がまるで泡に包まれたように、フィルタリングされた情報しか見えなくなることを指します。広告に限らず、レコメンドや最適化の進化により、この状況は加速していると思います。皆さんも、興味がある動画を連続で視聴したり、知りたいことを検索したりしていたら、時間が大幅に経過していた、ということはないでしょうか。また、ネット上の評価が高い店や場所に人が集中している、といった傾向もあるように感じます。
世の中には、最適化の外にある、まだ見ぬ素敵なサービスや商品との出会いが眠っているはず。そのあたりのバランスを見直す時期に来たのではないかと考えています。
もう1つは、そういった課題を、現状の王道のメディアプランでは解決しきれないこと。広告主様により実態は千差万別ですが、「テレビCM+デジタル広告」といったメディアプランの型は、現在の主流といえるかと思います。
テレビCMは、先ほど申し上げた「出会い」に強い媒体ですが、昨今のテレビ離れと言われる状況や、まったく関心のない層へも情報を届けてしまう、という課題があります。それを補完するのがデジタル広告ですが、弊社の調査では、デジタル広告は依然、80%ほどが顕在目的の出稿、という結果が出ています。
技術革新やアルゴリズムの進化から、「知りたい」への回答力にスポットライトが当たりがちですが、「知りたかった」を、マーケティングの力で真にどう叶えるかを、業界全体で考えるタイミングに来ていると思います。それに対する施策を、ヤフーからも提案していきたいと考えています。
マーケティングの理想形を体現できる手法
―そういった時代背景、課題感のもとに生まれたのがセレンディピティ・マーケティングですね。セレンディピティ・マーケティングとは、具体的にどのような手法なのでしょうか?
「セレンディピティ(Serendipity)」とは「思いがけない出会い」といった意味の言葉です。
セレンディピティ・マーケティングは、Yahoo! JAPANのトップページや、Yahoo!ニュースに溜まっている膨大なニュース閲覧データを使って、潜在関心層にアプローチできる、新しいマーケティング手法。潜在関心層とは、無関心層と顕在層の間に存在する、いわば「真の潜在顧客」のことです。
例えば、転職に全く興味がないA群、転職に関する検索をしているB群、転職関連の動画を見ているC群が存在するとします。インターネット上の行動を鑑みると、B群とC群はすでに顕在層です。こういった状況で、A群に転職関連の広告を配信しても全く反応せず、無駄打ちになります。
しかし、A群でも、今の仕事に大きな不満はなく、本気で転職を検討してはいないが、「なんとなく」転職関連のニュース記事を見始めるユーザー群が発生するとします。これが「潜在関心」のイメージです。
このニュースが持つ、潜在関心を表すデータと、ニュースが持つ「マス性」の高いメディア接点を活用し、マーケティングのサイクルを回していく手法が「セレンディピティ・マーケティング」です。
―潜在関心層にアプローチできる、とのことですが、マーケティングにおいて潜在関心層を狙っていくことの重要性についてお聞きしたいです。
ニュース閲覧者は非常に規模が大きく、インターネットユーザーの約80%が閲覧しています。これは、SNS閲覧やEC購買を超える規模です(※2)。そんな規模を持つ未来の見込み顧客に、定量的かつ戦略的にアプローチを行えることはとても重要だと考えています。
先ほど「デジタル広告の80%が顕在目的の出稿」とお伝えしました。そうなっている理由は、一般的なユーザーは基本的に「~が知りたい」「~が欲しい」と思ったことをきっかけに、デジタル上で行動しますが、広告出稿はその行動データを活用しているからです。潜在関心層が持つ「なんとなく」という曖昧なニーズは、デジタルが苦手な領域。だから、自社に関心を持ってくれる可能性がある市場の定義ができていなかったのです。
規模と効率の両立が重要なマーケティングにおいて「自社に関心を持ってくれる可能性がある人が最大分母となる市場でマーケティングができる」というのは、普遍的な理想の一つだと思っています。
―ではセレンディピティ・マーケティングは、どういった目的で活用すると効果的なのでしょうか?
潜在関心層は“未来の顧客”なので、いわゆるブランディングやアッパーファネルを狙っていきたいときに活用できます。ユーザーの興味に対して、しっかりと回答するような、適切なコミュニケーションを中期的に行い、ブランドのSOV(シェア・オブ・ボイス)を上げていくことで、自社の興味喚起につながったり、検討行動をした際の第一想起を獲得できたりすることが期待できるかと思います。
実際、アルコール飲料関連や自動車関連の記事を閲覧している潜在層へ、求めている情報・広告のコミュニケーションを行うことで、検索や購買などの顕在行動につながった、といった検証結果も出ています。
ユーザー行動をサービス横断で比較・分析
―Yahoo! JAPANがセレンディピティ・マーケティングを効果的に実施できるのはなぜでしょうか?
大きく分けて3つあります。
1つ目は、手前味噌ではありますが、弊社が国内最大級のニュース媒体であること。1日7,500本にも及ぶ配信記事や、Yahoo! JAPANにおける月間830億PV(※1)という数字は、潜在層データが日々、膨大に蓄積されていることを意味します。
2つ目は、潜在層へアプローチする上で「掲載面」として適切であること。
先ほど(前編)、小林からお話しした点ですが、Yahoo! JAPANはフィルターバブル現象に陥らないよう、最適化された情報だけでなく、マス性の高い情報も掲載することを心掛けています。「Yahoo! JAPANに来れば思いがけない出会いがある」というユーザーの期待があるメディアかと思いますので、セレンディピティ・マーケティングとの親和性が高いと自負しています。
最後に、Yahoo! JAPANには複数のサービスがあるため、例えばあるユーザーの「検索」という顕在行動と「ニュース記事を読む」という潜在行動の両方を把握することができ、そのうえで(個人が特定できない形で)比較・分析、プランニングができるということです。
例えば、自社ブランドを検索しているユーザー群が、普段どういったカテゴリのニュース記事を閲覧しているか分析を行う、といったような、より戦略的・立体的な活用が考えられるのかなと思います。
Yahoo!ニュース トピックス直下の広告がスタート
―小林さん、宮村さんのお話を聞いて、セレンディピティ・マーケティングに興味を持たれた方もいると思います。現段階でできる具体的な出稿プランやメニューについてお聞かせください。
広告主様の目的によって変わりますが、今日お話しした「潜在関心層をデータで捉える」という目的であれば、Yahoo!ニュースの閲覧データを活用したプランが考えられます。
ニュース記事閲覧データは、弊社内で基準を満たしたカテゴリから選んで頂く方法があるのですが、その中からターゲットを定義する前に、ボリューム感を可視化できます。また、「その層が本当に潜在層なのか?」といった“確からしさ”は、検索サービスや自社コンバージョンとの重複数を出すことで、シミュレーションすることも可能です。(※3)
ターゲット策定後は、恒常的にコミュニケーションを行い、ユーザーの興味に正しく答えていくことで効果を得られると考えています。Always On(常時稼働)の取組みになると思うので、定点的なレポーティングも重要で、それも弊社がご支援できる領域だと思います。
また、広告商品としては3月に新商品として、Yahoo!ニュース トピックスの直下に広告を掲載できる「Yahoo! JAPAN トップページ トピックスPR SP」をリリースしました。
Yahoo!ニュース トピックスは、ユーザーが今日の世の中の出来事を知るために閲覧しており、Yahoo! JAPANの中で最もユーザーから注目されているポジションのひとつとなります。
本メニューは1日掲載で、その日にスマートフォンでYahoo! JAPANトップページを訪問した全ユーザーに必ず表示される、まさにユーザーに「思いがけない出会い」を提供できる商品です。我々としても、積極的に提供していければと思っています。
将来はLINEも活用したエンゲージメントの獲得にも期待
―それでは最後に、セレンディピティ・マーケティングの今後の展望やお取り組みについてお聞かせください。
まずは、潜在関心層へのマーケティング活動には大きな意味がある、ということを、改めてマーケターの皆さんに強くお伝えしていきたいと思います。その過程で出てきたさまざまなご意見や課題も、議論しながら、最終的には広告主様の事業への貢献、およびマーケティング業界を少しでも良くしていける状況を目指していきたいですね。
そのうえで、Yahoo! JAPANおよびYahoo!ニュースとして実現可能なことには全力で応えていきたいです。データを活用した分析・レポート、より潜在層に効果がある広告枠やクリエイティブの開発など、考えられることはまだまだあると思うので。
更に未来のお話ですが、ヤフーと合併を控えているLINEが持っているアセットも活用することで、足し算ではなく掛け算になるような新しい価値を生み、潜在関心層からエンゲージメントの領域まで、一気通貫でマーケティングをご支援できる世界観を作り上げていきたいです。
・「セレンディピティ・マーケティング」公式サイトはこちら(URL)
・Yahoo!マーケティングソリューション 公式サイトはこちら(URL)
(ヤフー株式会社より)
・この記事に関するアンケートにご協力ください。回答は今後の参考とさせていただきます(URL)
(※1)「Nielsen Mobile NetView」2020年1月~2023年1月データ、カテゴリレポートによる
(※2)ヤフー株式会社自社調査 (2022年1月~12月の月平均)
(※3)ニュース閲覧データの活用についてはご提供条件がございます。詳細はYahoo!マーケティングソリューションの担当営業までお問い合わせ下さい。
ABOUT 柏 海
ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。