業界関係者が予測する2023年のCTVトレンド
by ExchangeWire.com / Supported by CARTA HOLDINGS on 2023年2月06日 in ニュース
ExchangeWireの2023年予測シリーズの第1弾である本記事では、広告業界の各分野の関係者に、コネクテッドTV(CTV)の今後の展望について考察してもらった。2大ストリーミングプラットフォーム、すなわちNetflixとDisney+が広告付きプランを導入したことで、今後数ヶ月間、CTVマーケティングに対する関心が高まることは確実だ。
新たな時代の幕開け
2023年は、新たなAVOD(広告付きVOD)プラットフォームの登場により利用可能なプレミアムインベントリが急増する、新たな時代の幕開けとなるでしょう。とはいえ、CTVは依然として断片化の問題を抱えており、この断片化された環境で事業を行うには、時間と予算、それに専門知識が欠かせません。
CTVがもたらす1対1のインタラクションは、オーディエンスの特定セグメントをターゲットにできるため、マーケターにとって時間と予算を投じるに値するものです。ただし、マーケターは、膨大なCTVインベントリに直接アクセスできるキュレーション技術を積極的に取り入れ、そこにターゲティングデータを重ねて、常時オン環境での広告購入をカスタマイズすることで、消費者との密な関係を最大化する必要があります。そうすることで、広告主は無駄を削減しつつ消費者に直接リーチすることができ、この高度に複雑な新興分野において、消費者、広告主の双方にメリットをもたらします。
ザンダー プログラマティックCTVサプライ部門ディレクター、フナイン・カーン(Hunain Khan)氏
消費者向けプラットフォームへの転換
2023年は、CTVが欧州でも注目される年になると思います。しかし、私は「CTV元年」といった誇張表現は避けています。広告収入モデルは、Netflix、Disney+、Paramount+、HBO/Discovery+といった大手の参入により、大きく成長するでしょう。ただしNetflixとDisney+は、視聴者の広告負荷について慎重な姿勢を保ち、割安とはいえサブスクリプション料金を払っている視聴者をいらつかせないように注意深く対応すると思います。
長期的成長の鍵は、主要なコンテンツ制作者がこのプラットフォームを優先するようになり、番組や映画の初放送が従来のチャネル発ではなくなることです。これによって、視聴者の目が必然的にストリーミングプラットフォームに向けられるようになり、徐々にではありますが着実に、広告費も増加していくでしょう。私の考えでは、こうした流れは他のCTVプロバイダーにも有利に働くと思われます。視聴者がスマートTVという選択肢に注目しはじめることで、見たことのない無料コンテンツが大量に存在しているということを、彼らが知るきっかけとなるからです。
パブマティック EMEA CTV/OTT部門ディレクター、ヒテーシュ・バット(Hitesh Bhatt)氏
若気の至り
2023年もCTVの視聴者数は増え続けるでしょう。AVOD市場にNetflix、Paramount、Disney+といった新たな勢力が加わることがその主な要因です。先日のVideoWeekのイベントでは、(アリートリサーチ [Arete Research])のリチャード・クレイマー氏が、CTVは10代の若者のセックスのようなものだと語りました。誰もがその話をするけれど、実際に経験があるのはごく一部の人だけで、その一部の人もまだ上手くはないという意味です。
クレイマー氏はうまく要点を突いていますね。CTV視聴の大部分を占めるのはBVOD(放送局型VOD)とYouTubeであり、CTVのロングテールに位置するチャンネルのほとんどは極めて小規模なので、BARB(英国のテレビ視聴実態調査機関)にも捕捉されていません。それでも、まだ計画段階のものも含めて、2023年にはロングテールのチャンネルが大きく成長し、そのおかげで私たちは、コスト効率よく、しかも良質のコンテンツを通してオーディエンスにリーチできるようになるだろうと、私は考えています。ただしプランナーは、個々のチャンネルに、より適したクリエイティブを選択し、DCO(動的なクリエイティブ最適化)をもっと活用する必要があるでしょう。またインベントリを精査して、クライアントにアドフラウドがないことを保証する必要もあるでしょう。
セブンスターズ AVプランニング部門責任者、ニコラ・ティーグ(Nicola Teague)氏
効果的でアドレサブルなCTVには、プログラマティックのイノベーションが不可欠
2022年、CTVは急成長を続けましたが、このチャネルに関してはまだ答えの出ていない課題がいくつかあります。世界のCTVデバイスの数は11億台に達し、今も増えつづけていて、プログラマティックの世界にはなくてはならないチャネルになりました。2023年は、プログラマティック技術がより発達し、CTVにも効率化がもたらされる、新時代の幕開けになるでしょう。
こうした効率化は、規模拡大の実現に不可欠であるだけでなく、標準化されたアプローチを提供する上でも欠かせません。放送局は引き続きストリーミングサービスへの投資を続けると予想されます。これに応じてマーケターは、広告予算を従来型テレビネットワークからストリーミングに振り替えはじめるでしょう。
業界全体としての私たちの課題は、CTVチャネルにおいて、消費者に上質な視聴体験を提供しつつ、どこまで自動化を進めることができるかということです。CTVは、メディアオーナーがインベントリのコントロールを取り戻しその収益を最大化させるため、また、マーケターにより多くの入札機会を提供するため、自動化を取り入れるべき時期を迎えているのです。
インデックスエクスチェンジ 南欧地域担当マネージングディレクター、オーギュスタン・ドゥクレ(Augustin Decré)氏
データソースの活用
CTVの広告購入プロセスをシンプルにするためのキュレーション技術が次々登場するでしょう。ほとんどのエージェンシー持株会社がAV専門部署を立ち上げ、CTVに特化したクライアントサービスの提供や効率化に取り組んでいるため、この動きをサポートするようなテクノロジーも急増するかもしれません。
エコシステム全体で、さまざまな既存の機能やデータソースを活用すべきです。例えば、最近実装されはじめた「意図シグナル」などに注目が集まっています。この分野におけるデジタル技術の専門家は、放送事業者と緊密に連携し、その専門性を生かして、既存の優れた機能の上に追加的な価値を構築できます。こうしたゴールを放送とデジタルの両者で達成できれば、2つの世界の長所が融合し、エコシステムはいっそう活気づくでしょう。両サイドの人々は、すでにこのことを認識しています。このまま彼らが統合への道を歩んでいくことを期待しています。
キャプティファイ 英国プレジデント、スティーブ・ペレイラ(Steve Pereira)氏
オムニチャンネルと成果:CTVが目指すべき道
NetflixやDisney+が広告プラットフォームを導入したため、マーケターは急成長するCTVがもたらす機会を最大限に活用しようと、本腰を入れ始めるでしょう。そのため業界には、次世代にふさわしい指標への切り替えが求められ、ビューアビリティなどの古い指標からの転換が急がれるものと予想されます。そして、その新しい指標の代表例がアテンションです。
CTVにおける広告間の競争は、オーディエンスのエンゲージメントをめぐって激化するでしょう。そのため、2023年はパフォーマンス最大化の試みのひとつとして、アテンションを軸としたキャンペーン測定と最適化の事例が劇的に増加すると思われます。この動きの意味するところは、広告がプレミアムでブランドセーフティな環境で高品質なメディア上で展開されるというだけでなく、すべてのスクリーンで一貫した品質で表示されることが求められるということです。しかし、CTVのエコシステムが拡大し、成長戦略の柱となる一方、成果にフォーカスしたオムニチャンネル戦略も、マーケターにとって目指すべき方向のひとつでありつづけるでしょう。
ティーズ 英国マネージングディレクター、ジャスティン・テイラー(Justin Taylor)氏
略語を封印しよう
私はCTVが、特にこの分野への新規参入者のために、もっとわかりやすくなることを期待しています。ITVXに象徴されるように、テレビ業界がデジタルファーストへの転換を進めるにつれ、CTVへの理解と投資を阻害している要因が改善されてくるのは自然な流れです。例えば、入札プロセスの際に処理されるデータの一貫性を高めたり、パフォーマンス指標とインクリメンタリティ指標を統合したり(これによりCTVがメディアプランで重要な地位を占めることが証明できます)、サプライのサイロ化を解消したりすることは、業界にとって有益です。
そして最後に、もう略語は封印しましょう!広く一般に受け入れられたいのであれば、用語はわかりやすくなくてはなりません。例えば、OTTという言葉をいまさら使う必要があるでしょうか?FAST、AVOD、BVODといった業界特有の略語をやめて、「リニアストリーミング」や「オンデマンドストリーミング」といった言葉に置き換えてはどうでしょうか?
VDX.tv 英国クライアントパートナーシップ部門ディレクター、マット・キーティング(Matt Keating)氏
CTVのプランニングとレポーティングの統合
ブランドはCTVの予算を増額しています。キャンペーンを即座に開始したり中断したりでき、また費用対効果を測定し、成果レポートも得られるといったCTVの強みを実感しているからです。
CTVは確実に成長し、徐々に従来型テレビへの投資を補完していくとみられます。視聴者層に世代の違いがあるため、どちらのタイプのテレビも市場のなかで独自の地位を保ち、共存するでしょう。
若いオーディエンスの好みや消費習慣の変化とともに、オーディオ、ビジュアルのメディアやプラットフォームの成長はまだまだ続くでしょう。従来型テレビがより幅広い年代・性別のオーディエンスを維持する一方、CTVは正確なターゲティングとパーソナライズされた訴求力をマーケターにもたらし、そこでは視聴履歴のクロスリファレンス、地域ごとのデモグラフィックデータ、言語やデバイス別のデータなど、すべてのデータが利用可能です。そのためブランドは、プランニング機能やレポーティング機能が統合された、膨大なデータを扱えるマーケティング技術を採用することが不可欠です。これによりブランドは、広告にとって何よりも重要な費用対効果(ROAS)を把握することができるのです。
マーケティングサイエンス 英国 マーケティングサービス担当ディレクター、ゼイヴィア・クライン(Xavier Klein)氏
2023年にCTVを無視するのは、2000年代中盤にソーシャルメディアに背を向けるようなものだ
ここ数年、欧州のCTV市場は急速に成長しています。データを見ると、CTVに対する広告支出は2021年に56%増加しており、2023年の終わりまでにさらに36%成長すると予測されています。
2023年には、CTVのリーダーであるNetflixやDisney+が市場を拡大させ、新規参入も続くことから、インベントリと広告スペースのマネタイズはさらに加速するでしょう。これにより、消費者向けの広告として利用される頻度も高くなり、参入障壁が低いにもかかわらず、高いエンゲージメントが得られる、まったく新しい市場が開拓されることになります。若い世代の従来型テレビ離れを考えれば、2023年、CTVはマーケターにとってなくてはならないものになるはずです。いつまでも様子見を続けていては、オーディエンスとつながる機会を逃し、競合他社に後れをとることになるでしょう。
クアントキャスト EMEA営業担当バイスプレジデント、マシュー・ホワイト(Matthew White)氏
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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。
株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。