サツドラが語る、LINEを活用したデータドリブンなマーケティング施策
by ニュース
on 2022年10月17日 inLINE株式会社は8月31日、オンラインイベント「LINE LOCAL DAY2022 店舗とお客様のつながりの深化」と題したイベントを開催し、LINEの最新情報の発表やサービスを活用し顧客との関係構築に成功している店舗の方々を招きLINEの活用方法や実績を紹介した。
「クーポンで11万人が来店!顧客に愛されるサツドラのLINE活用法」のセッションでは、北海道を中心にドラッグストア・調剤薬局を201店舗展開しており、顧客からは長年「サツドラ」の愛称で親しまれている、株式会社サッポロドラッグストアー CDO 兼 営業企画部 マーケティング担当マネジャー 坂本武史氏が登壇。
坂本氏は、LINE公式アカウントの活用方法と効果、またLINEチラシや、今年6月にリリースされたLINE POP Mediaの今後の活用について解説をした。
聞き手は、LINE株式会社 Z販促事業本部 Z販促セールス1部 飯島明子氏が務めた。
サツドラのマーケティング戦略とは?
-マーケティング戦略の方向性を決める上で参考にしているデータや情報などはありますか?
坂本氏:サツドラの売上構成比を日別、年代別で見ると、ポイント5倍デーのゼロのつく日、年金支給日はシニア層が多く来店される傾向が見られます。
また、土日は若年層の方々、普段働いていて、なかなか平日に来られないようなお客様が集中してくるような購買動向です。
シニアの方が多く来るタイミングでは折込チラシを打ち、若年層の方が来る土日はデジタルで訴求をするというところに留意しながらプロモーションを実施しております。
新聞は年齢の高い方に非常に支持されていますが、一方で購読率は減少傾向にあります。
一方、LINEをはじめとしたソーシャルメディア系のサービスやアプリ、デジタルの利用率は幅広い年代で利用されてきており、年々利用率が増加傾向にあると思っています。
折込チラシは今後もシニア層の方々には受容性の高いメディアですので、しっかりと続けていきながら、デジタルとマスとを使い分けて、それぞれの読者層の需要を取り込んでまいりたいと考えております。
また、自社の強みでもある子育て世代にはしっかりと自社アプリやLINEをはじめとしたデジタルをタッチポイントとしたマーケティング活動を強化していきたいと考えております。
―自社アプリとLINE公式アカウントの使い分けに悩まれる企業様も多いですが、サツドラ様ではそれぞれどのような使い方をされているのでしょうか?
坂本氏:サツドラではLINEをオウンドメディアと同じような位置づけで考えています。
LINEの強みは、ほとんどの方のスマートフォンにすでにインストールされているところです。ネイティブアプリのようにあえてインストールしてもらう作業が必要ありません。
サツドラには月1回、来るか来ないかというような層がまだまだたくさんいます。そのような層に対して、自社のネイティブアプリを入れていく作業は難しいのです。
そういうお客様には、LINEでまずは友だち追加をしてもらい、その後自社のアプリにリフトアップしていくというような戦略が立てていくことができればと、考えております。
-サツドラにはLINE公式アカウントだけでなく、新しいものも含め様々なサービスを活用いただいておりますが、具体的にLINEのどのようなサービスを活用いただいていますか?
坂本氏:現在、LINE公式アカウントと、LINEチラシ、LINE POP Mediaを導入しています。
サツドラのLINE公式アカウント活用方法とその効果とは?
-サツドラのLINE公式アカウントの運用状況について、お聞かせください
坂本氏:LINE公式アカウントの運用は2013年ぐらいから始めております。
主にライトな層に広く訴求していくために、LINE公式アカウントからチラシやクーポン情報などを、月に6回から7回配信しています。KPIにはお客様の来店者数を設定しています。
LINEのクーポンの利用率やクーポンを利用したお客様の売上が上がっているのかどうか、ということの検証はすごく難しいところですが、そちらは、ID-POS分析ができるポイントカード「EZOCA」を利用して、お客様がLINEのクーポン使う前後で、月間どのぐらいの売上をサツドラにもたらしてくれたか、というところの差分を見るなどのことをしています。
実際のところLINEのクーポンを使って買い物してくれているお客様は、使ってないお客様に比べて月間の来店頻度が1回以上高いという結果も出ています。こういった数字をもとにKPIを作っていくなどにより、PDCAサイクルを回していく、というような取り組みを行っています。
-LINE公式アカウントの総友だち数は現在59万人とのことですが、友だちを集めるためにどのような工夫をされているのでしょうか?
坂本氏:レジのカルトン近くやサイドネット(棚の横などにある商品がよくぶら下がっているところ)の上などにPOPを、店舗の入口などにポスターを貼るというのがまずは挙げられます。
その他、サツドラではLINEの友だちには「毎月・何日に・どういうクーポンを配信するか」ということをお約束しているのですが、今は月初に5%オフクーポン、下旬にポイント5倍のクーポンを配信しています。
-店舗でのお声がけも実施されているとのことですが、やはり声掛けをするとお客様の反応は違いますか?
坂本氏:はい、全然違います。去年サツドラの店舗運営を管轄する部門が、LINEの友だち獲得のために店舗でのお客様へのお声掛けを強化してくれた時期がありました。店舗スタッフもとても頑張ったことで、この間は新規の友だち数が従来と比べて約1.9倍から2倍になりました。
配信メッセージは、お客様が来店するきっかけになるコンテンツが必須
-LINE公式アカウントでメッセージを配信する上で気を付けているのはどのようなことでしょうか?
資料提供:LINE株式会社
坂本氏:皆さんやっていらっしゃるのではないかと思いますが、一番気を付けていることは、やはりクーポンやチラシのような「お客様が来店するきっかけになるようなコンテンツ」ということ、そして「最後の3吹き出し目に出す」ということが非常に重要であると思っております。
これをやるかやらないかで、インプレッションなどを見ても3~4倍ぐらい違うので。全然変わってくるので、ここはもう「絶対に守っている」というところになっています。
カードタイプなども実施するのですが、ファーストセカンドはある程度クリックやインプレッションがありますが、それ以降、3・4・5となってくると、やっぱりインプレッションも少なくなってくるので、キーとなるようなコンテンツに関しましては、最初と2番目ぐらいに置いていくような形で、気をつけて配信している、というところになっております。
もう一つ気を付けていることは、訴求したいコンテンツによって配信方法を分けており、LINE公式アカウントの友だち限定クーポンは全員に配信しているということです。
クーポンは全員に配信してあげないと、損をしたと感じてしまうお客様がいらっしゃる可能性があります。ですので、ブロックをされている方を除き全員に配信しています。
また、購買対象が限定される「この人しか買わない」というような商品に関しては、Messaging API(メッセージング エーピーアイ)を使って配信をしています。
-一斉配信だけでなく、配信内容に応じて配信方法を使い分けされているとのことですが、それぞれどのような配信をされているのか、具体的に一つずつ教えていただくことは可能でしょうか?
坂本氏:月のクーポンは前半に5%オフクーポンを、後半はポイント5倍のクーポンを一斉に配信しています。
4月の5%オフクーポンの配信では、約11万人のお客様がクーポンを使いに来店してくださいました。それに伴ってクーポンを使って購入してくれている、というような状況になっております。
-クーポンは一斉配信で実施されているとのことですが、絞り込み配信はどのように活用されているのか詳しくお聞かせください
坂本氏:絞り込み配信は、今年6月からLINE公式アカウントの機能を使い、インプレッションオーディエンスデータを活用した絞り込み配信を始めました。
LINE公式アカウントの管理画面の左下にある「オーディエンス」という機能を利用しています。
今までは一斉配信をしていましたが、インプレッションがちゃんとあった方、つまり開封してくれている方のオーディエンスを作成し、ターゲットを絞ったメッセージを配信するようにしました。
絞り込み配信は、開封率もクリック率も非常に高くなっている傾向があると考えており、また、これにより店舗からのネガティブなフィードバックは一度もなく、引き続きオーディエンスデータを活用した絞り込み配信を使っていきたいと考えております。
LINEのユーザー IDとEZOCA IDとを連携し、効率的なターゲティング配信を実現
-購買履歴を基に、APIを使って配信するターゲティング配信についても詳しくお聞かせください
資料提供:LINE株式会社
坂本氏:サツドラでは自社で保有するEZOCAのIDとLINEのユーザーIDを連携するような仕組み(ID連携)を使っています。
EZOCAのIDから購買データを抽出することが可能で、LINEのユーザーIDとEZOCAのIDを結合しターゲットができる仕組みになっています。
お客様のLINE のユーザーID取得時には、お客様の同意を得た上で「お誕生日クーポン」などをインセンティブとして、お客様からEZOCAのIDも併せて取得し、EZOCA IDとLINEのユーザーIDを連携するという方法をとっています。
-サツドラではID連携を導入いただいていますが、具体的にどのように配信に活用しているか教えていただいてもよろしいですか。
資料提供:LINE株式会社
坂本氏:ID連携済みのベビー用品を購入しているユーザーに対してベビー用オムツのクーポンを配信した事例があります。
LINEのユーザー IDとEZOCA IDとが連携しているお客様で、EZOCA IDでベビー用品を買っているオムツを買う可能性がある方を抽出。EZOCA IDを持っている人のみにLINE公式アカウントからベビー用のクーポンを配信していくっていうような仕組みです。
具体的に数字はお出しできませんが、約5,000人にこのクーポンを配信したところ、利用率は4~5%程度でした。
基本的にアイテム限定したクーポンだと利用率は1%未満とかになることが多いのですが、対象者に絞って配信することでコストも抑えられますし、利用率も上げていけるのかな、と思っています。
APIを使って配信するのも、一斉配信と同様に通数に応じて配信費用がかかります。10万人に配信しても、買ったことのない人に配信してしまうと、クーポンがノイズになってしまいます。
だとすると、やはり可能性がある人だけに絞り5,000人へアプローチできるというのが非常に効果的であると考えていています。10万人へ配信しても、恐らくクーポンの利用数は変わらなかったのではないかと考えております。
新規友だち獲得まで見込める、LINEチラシの効果とは?!
-サツドラ様がLINEチラシの導入を決めた背景を教えていただけますでしょうか?
※LINEチラシ:国内の月間アクティブユーザー9,200万人(2022年6月時点)のLINE内の様々な箇所に導線が設置されており、自動友だち追加、マイエリアの設定による商圏内ユーザーへのリーチ、広告効果の可視化などが特徴のデジタルチラシサービス。チラシの閲覧実績に応じた課金モデル。LINE Beaconの活用で来店計測も可能。
坂本氏:新聞の購読率が年々下がり、折込チラシの効果は以前のような爆発的な効果がなくなりつつあります。スマートフォンを持つ人がすごく増え、デジタルでのタッチポイントは今後も増えていくところが予測されたこともあり、チラシのデジタル化を進めていきました。
LINEチラシは、当社ホームページの店舗情報からも見ることが出来るという導線も設けております。
- LINEチラシの導入効果については、どのように感じていらっしゃいますでしょうか?
坂本氏:まず、他の媒体やデジタルチラシと比較してPV数が圧倒的に高いです。
コスト面でも、トータルコストで比較するとLINEチラシは他媒体の約4分の1程度に抑えられていると認識しております。LINEチラシを始めて2年以上経ちますが、今でもLINEチラシ経由の新規友だち追加が全体の10%程度あり、新規友だち獲得においても効果的です。
-LINE Beaconを活用した来店計測も実施いただいたかと思うのですが、その結果もぜひ共有いただけますでしょうか?
坂本氏:LINEチラシを見たユーザーのうちの約30%が来店(※)し、店舗でビーコンが反応しています。
※2022年7月15~8月2日の実証実験の結果。拡大推計の数値を採用。
※拡大推計とは:LINEチラシ閲覧後に来店したユーザーのうち、Bluetoothをオンにしているユーザーの割合を仮定し、それをもとに推計した来店数
期間中のチラシのPVに対しては、約1%のユーザーがビーコンに反応しています。
折込チラシ なども、来店率が大体1%程度あれば、ある程度効果があると認識しているので、まだ計測サンプル店舗が少ないので確証には更に検証は必要ですが、今回の計測結果に関しては 、LINEチラシは来店に効果があったと評価しています。
新しい売り場づくりの可能性も視野に、サツドラが寄せるLINE POP Mediaへの期待値
-サツドラではLINE POP Mediaを開始いただきましたが、実施いただいた背景をお聞かせください
※LINE POP Media:
店頭POPのLINE版。店内に設置したLINE Beaconを通し来店ユーザーのLINEトークリスト最上部に広告掲載が可能。ユーザーは店内でLINEを開くとお得な情報が受け取れ、メーカーは商品および販促キャンペーンの認知形成やラストワンマイルの購買促進が可能。小売企業は、カテゴリーの売上向上や、オペレーションコスト削減、店頭のメディア化による収益が見込める。
※ 店舗等に設置されたビーコン端末からの信号情報と連動して、「LINE」から通知やメッセージなどを送ることができるサービスです。店舗側での利用にあたっては「LINE Beacon」対応のBeacon端末が必要となります。また、ユーザー側で「LINE Beacon」を受信するには、スマートフォン端末とLINEアプリの両方での設定が必要となり、「LINE Beacon」の利用同意を得ているユーザーが対象となります。(https://guide.line.me/ja/account-and-settings/settings/line-beacon.html)
坂本氏:もともとは非計画購買が多いといわれていた一般消費財について、コロナ禍で計画購買が増加しつつある傾向にあると考えています。
一方でサツドラでは、お客様が決めていたものをただ買うだけではなく、店舗の商品との出会いや「ついで買い」といった、非計画的な購買をしていただくことも大切な部分だと思っています。
売り場や従業員の接客、様々な要素がある中でLINE POP Mediaでは「店舗に行って新たに気づく」という商品提案をビーコンの活用により実施できる可能性があるのではないか、と考えています。
ついで買い率や購買を促し、売上をアップさせるところに繋がる可能性があるのではないかと考えています。
お客様は、紙製品や洗剤は最初から「買いに行こう」となるのですが、他の商品は、店舗に行ってウィンドウを見たり、かごの中の商品を見たりして「これ買ってみよう」という意思決定をします。そういうシーンでビーコンが反応した商品を見て「こんなのあるんだ」「これ買ってみようかな」というような可能性をお伝え出来るのは、店舗とLINE POP Mediaであるからこそ、と考えています。
-メーカーのお客様から「ユーザーはLINEを店頭で開くのか?」「LINE POP Mediaは効果があるのか?」というご質問をよくいただくのですが、サツドラで実証実験を実施いただいた結果を特別に教えていただけますか?
資料提供:LINE株式会社
※2020年実証実験時におけるスペックとなります。
坂本氏:2020年にLINE POP Mediaの実証実験を実施させていただきました。
「店舗販促を一切しない」「LINE POP Mediaのみ実施」「店舗販促とLINE POP Media両方実施」の3グループに分けて認知訴求効果を検証しました。
LINE POP MediaではLINE Beaconを受信したユーザーのトークリストの上部にバナーが表示されたり、LINE公式アカウントの友だち追加をしていたユーザーには直接メッセージで通知が届く形でキャンペーン告知をして、遷移先としてクーポンページを設置しておりました。(※2020年実証実験時におけるスペック)
結果、「店舗販促を一切しない」店舗と比べて「LINE POP Mediaのみ実施」している店舗グループで前月比140%ほど購買リフトしました。「店舗販促とLINE POP Media両方実施」した店舗では155%くらい購買リフトをした、という数字が出てきております。
実証実験を行い、ある程度課題も見えてきました。告知をしないケースでも購買リフトはしているのですが、買い物中にLINEを見ないユーザーもちろんいます。
買い物に来てLINEを見ないで、買い物が終わってからプッシュ通知を家で見る、という顧客もやはりいて、「LINEを店舗で開くことがお得に繋がるんですよ」ということを店舗でしっかり告知・認知させることがLINE POP Mediaをやるにあたっては、必要なことかなと考えております。
-具体的にLINE POP Mediaの今後の活用はどう検討されていらっしゃいますか。
坂本氏:今後はTalk Head View Customも活用した店舗集客も考えています。あとはLINE POP Mediaやサツドラアプリ、サイネージなど、サツドラが保有するデータやソリューションを活用し、店頭コミュニケーションを図り購入 に繋げていきたいと考えております。
また、サツドラが持っている購買や属性データとLINEで実施した広告のデータを横断・分析してレポーティングを行っていくっていうところも大事かなと思っています。
集客から店頭でのコミュニケーション、(データを)横断した分析を自社で活用するだけではなく、パッケージとしてメーカー様にもこのような取り組みなどを、販売し、お互いがWin-Winな関係を築けたらいいな、と考えております。
デジタルを活用し、リアルな店舗だからこそ提供できるような体験を提供
-サツドラ様の今後のLINE活用展望をお聞かせいただけますか?
坂本氏:LINE POP Mediaを活用して「リアルな店舗だからこそ提供できるような買い物体験」を提供していきたいと考えております。
「LINEチラシの来店計測の可視化」もどんどん行っていき、データの活用や購買データとの連携を行い、どのような効果が出るか、というところをしっかりと分析していきたいです。
デジタルでチラシが送客に繋がっているのか、ということをしっかりと数字的で示せる段階になってきており、絶対に取り組んでいきたいと考えております。
また「LINEミニアプリを使ったLINE上での会員証表示」やID連携といった取り組みをしっかりと実施していきたいと考えております。
ABOUT 加納 奈穂
ExchangeWireJAPAN 編集担当
武蔵野美術大学卒業後、出版社に入社。WEBサイトや広告の運営に従事。その後コスメ情報サイトのコンテンツマネージャーを経て出版社での通販事業において販売促進業務を担当する。通販会社にてSNS運用に携わったのち、2022年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。現職に至る。