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LINEはSMBといかに向き合っているのか[インタビュー]

LINEがLINE広告、LINE公式アカウント、そしてLINEミニアプリなどを通じてSMBに対する支援への注力を高めている。全国津々浦々にユーザー基盤を持ち、ターゲティング機能を活用すれば少額で効果的なマーケティング施策が実施できる点は確かに魅力的であろう。しかし、経営資源に乏しい中小企業がLINEのようなプラットフォームが有する諸機能を本当に使いこなすことができるのか。そんな疑問にLINEのSMB担当チームが答えてくれた。(聞き手:ExchangeWire JAPAN 長野 雅俊)

 

LINEのSMB支援とは

 

―自己紹介をお願いします。

 

川代氏:LINE株式会社 マーケティングソリューションカンパニーの広告・法人事業本部にて、とりわけSMBの事業推進に注力するマーケットグロース事業部の事業部長を務める川代宣雄と申します。

 

太田氏:同カンパニーのローカル・バーティカル事業企画室ローカル事業推進チームでマネージャーを務める太田裕士と申します。LINE公式アカウントのSMB領域における事業企画担当として事業計画や施策の立案・推進を担当しています。

 

谷口氏:ミニアプリ事業企画室の室長を務める谷口友彦です。主にSMBを対象にサービス企画や導入支援を行っているLINEミニアプリの事業責任者を務めています。

 

―貴社が定義するSMBとはどれくらいの企業規模を指しますか。

 

川代氏:いわゆるナショナルクライアントに位置づけられるような広告出稿額が著しく大きい数百社を除いたすべてのお客様をSMBとして定義しています。一般的には大手企業と呼ばれるお客様も多く含まれており、顧客数は非常に多いです。

 

―貴社はLINE広告、LINE公式アカウント、LINEミニアプリなど多様な広告・マーケティング関連プロダクトを持っています。SMBに対してそれぞれどのような営業活動を展開しているのでしょうか。

 

川代氏:それぞれのプロダクトごとに異なる営業及びサポート体制を整備しており、主な販売チャンネルは代理店経由、オンラインマーケティング、そして当社チームによる直販の3種類に分かれます。

 

とりわけLINE広告はリーチできるユーザー数が多いがゆえに、広告クリエイティブによってユーザーを取捨選択した結果としてターゲティングされるという側面があることから、広告クリエイティブ制作のノウハウを持つ広告代理店の介在価値が大きいと感じています。

 

一方のLINE公式アカウントは当社独自のサービスですので、各企業様に導入を検討いただくに当たっては然るべき説明にかかる準備などが求められます。人的なサポート体制の必要度が非常に高いプロダクトです。

 

2020年にリリースしたLINEミニアプリについては、成功事例が出そろってきました。より多くの企業様にご活用いただくために、今年は営業活動を本格化させたいと考えています。

 

―どのような場合にLINE社からの人的なサポートを受けることができるのでしょうか。

 

川代氏:広告出稿額などに応じて、当社サービスの導入直後やLINE公式アカウントの友だちを急激に増やしている最中の企業様に対しては、当社より担当者を配置するなどしてサービス運用支援などを提供させていただいています。

 

またすべての企業様に対して広くサービス運用支援を提供することを目的として、2月に「LINEキャンパス」という学習プラットフォームをリリースしました。このプラットフォームを通じて、各サービスの運用に関する情報提供を行っています。

 

不安定な市場で安定した事業を営む仕組み

 

―SMBを含む各企業は貴社サービスを十分に使いこなすことができていると思いますか。

 

太田氏:各サービスの管理画面はデジタルリテラシーにそれほど自信がない方でも利用できるように設計しています。ただし、マーケティング施策が高度化すればするほど、様々な課題が発生し得ることも事実です。

 

例えば、LINE公式アカウントは友だちの数が多くなるにつれて、ユーザーのセグメントを細かく設定して配信メッセージの最適化を図る必要性も高くなる傾向にあります。細かなセグメントを設定するために各企業様のデータベースとの連携が望まれる場合もあるでしょう。さらにはLINEに限らず他デジタル広告やマス広告との連動が求められるかもしれません。こうしたシステム連携や他広告との連携といった業務については広告代理店などに委託する企業が多いとは思いますが、SMBの中には広告やマーケティング事業に専念できる担当者を確保できなかったり、広告代理店に委託すると費用対効果が合わなくなるという場合があると理解しています。

 

―そのような課題に対して、SMBはどのような対策がとり得るのでしょうか。

 

太田氏:そもそもどんな機能やサービスを取り揃えれば自社のマーケティング目的を達成できるのか見当もつかないという企業様もいらっしゃいます。

 

当社ではパートナープログラム「LINE Biz Partner Program」においてSMB領域に高い専門性や実績を持つ会社をLocal Sales Partnerとして認定し、企業様をサポートできる体制を構築しております。

 

また「LINEマーケットプレイス」というプラットフォームを通じてSMBにおけるデジタル化のサービスを提供しています。LINE公式アカウントにおいては開発を必要とせずにテイクアウト、モバイルオーダー、ECサイト構築といった機能拡張が安価でワンタッチで利用することが可能です。

 

その手前でLINE公式アカウントの開設直後では管理画面の操作方法や機能が分からないといった企業様も多くいらっしゃいます。現在トライアル期間として提供先限定でサポート用のLINE公式アカウントを通じて随時問い合わせに対応し、企業様の運用の自走をお手伝いする取り組みも行っています。

 

このように企業様の規模やフェーズに合わせて選択を行っていただけるよう様々な体制やサービスを用意することがSMBでは重要と考えています。

 

―LINEミニアプリはSMB向けのサービスとして提供していますね。

 

谷口氏:大企業・SMB問わずLINEミニアプリの活用は増えていますが、飲食店などを訪れたユーザーが、LINE上で会員証・順番待ち受付・店内注文などの機能をすぐに利用することができるサービスとしてご提供しています。サービス数は4,000(2022年3月時点)を超えていますので、導入企業様のニーズやご予算に合わせたミニアプリが既に揃っています。

 

例えば店内注文機能一つとっても、導入企業様に対してネットワーク環境構築から店員の研修までを含めた手厚いサポートを打ち出すものから、動画マニュアルだけを用意して安価で端的な機能を提供するものまで様々です。

 

尚、店内注文機能については日本全国で5~10万店舗の利用層を想定しています。他社のオンライン予約システムを導入している店舗様と相性が良い機能だと考えています。

 

―SMBは担当者が退職した途端にサービスの利用を停止したり、場合によっては倒産してしまうなどの事態が起きやすい領域ですね。

 

川代氏:そこで当社のセールスチームでは売上だけでなく、アクティブアカウント数をKPIとして設定しています。不安定な市場においても、安定した事業を運営していくための工夫の一つです。

 

尚、LINE公式アカウントやLINEミニアプリはほぼSaaS事業のような形態で運営していることもあり、一度ご利用を開始いただけたら解約に至る割合は少ない傾向にあります。またLINE広告、LINE公式アカウント、LINEミニアプリと事業ポートフォリオが多様であることも当社の収益の安定化に貢献しています。

 

自動化できることとできないこと

 

―一部の大手広告プラットフォームはLINE広告の配信設定や広告クリエイティブ制作に関わる自動最適化機能の強化に乗り出しています。完全自動化が実現すれば、経営資源に乏しいSMBの助けになりますね。

 

川代氏:完全自動化が目指すべき方向性の一つではあります。とりわけSMBではクリエイティブ生成にかかる作業負担が大きいです。クリエイティブ生成作業の自動化には強いニーズがあると思います。

 

太田氏:例えばLINE公式アカウントとLINEミニアプリを連動させるとお店の空席が目立つ時間帯に先月唐揚げを注文したユーザーに対して唐揚げの割引クーポンを自動でメッセージ送信するといった施策を打てるようになります。このようにユーザーの行動データと店舗の状況データを掛け合わせるといったデータを組み合わせた自動化機能は強化されていくと思います。

 

取得できるデータの質と量が増えていくに従い、「このような問い合わせが来たらこのような回答を返す」「このようなユーザーにはこのようなメッセージを配信する」といった設定はきめ細かくできるようになると思います。ただし「どのようなユーザーに対してどのようなメッセージを配信すべきか」を決めるのはあくまでも人間です。とりわけLINE公式アカウントはユーザーのトークリスト上に友だちや家族のものと並んで表示されます。自動化による効率化はもちろん大事ですが、それ以上にユーザーの気持ちに寄り添ったメッセージを発信する重要性が今後より一層高まっていくはずです。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。