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ウクライナ侵攻が世界の広告業界に及ぼした影響

アドテクソリューションプロバイダーのアドミクサーは、グローバル企業だが、そのルーツはウクライナに根差している。従業員の大半は今もウクライナにとどまり、祖国と民主主義、そしてヨーロッパ大陸の未来のために戦っている。

 

2月24日のロシアのウクライナ侵攻により、アドテクコミュニティやブランド、マーケターらは、自らの役割を再認識させられた。では、ウクライナ戦争はアドテク業界にどのような影響を与え、オンラインプラットフォームはどのように対応したのだろうか?

 

 

WFAによるメディアバイヤー向けガイダンス

WFA(世界広告主連盟)は、メディアのバイヤーおよびセラー向けのガイダンスを発表し、広告資金が誤情報の拡散に利用されることがないよう注意喚起を促した。

 

ロシアが、国内から海外メディアへのアクセスを遮断しつつ、国家プロパガンダとして意図的に偽情報を大量拡散させたことで、多くのプラットフォームが潜在的な戦場へと化した。

 

WFAと、同連盟が主導するGARM(責任あるメディアに向けた世界同盟)は、戦時下におけるデジタルメディアの安全性を確保するために5項目のプランを発表した。そのうち最も重要なアクションとして、エージェンシーには、プログラマティックやオープンマーケットでの購入を精査することを推奨し、広告主には、パブリッシャーやソーシャルネットワークに、キーワードリストや除外リストをどう管理しているかについて確認するよう働きかけている。

 

 

ブランドセーフティをめぐる問題

エージェンシー各社は、広告配信の際に使用するブロックリストを見直しており、一部のエージェンシーは、戦争報道と並ぶ位置にキャンペーンを配信しないようブロックしている。広告主は、不安を煽るようなコンテンツと関連づけられたくないため、誤報やネガティブなニュースに隣接して表示されることを嫌うからだ。しかし、パブリッシャー、とりわけ質の高いジャーナリズムを提供するパブリッシャーにとっては、これは大きな損失につながる。

 

 

ロシアのチャネルに出稿される広告の停止

ロシアのウクライナ侵攻を受け、プラットフォーム各社は、ロシアチャネルへの広告費用流入の批判に応え、既知の偽情報チャネルへのアクセスを制限し始めた。

 

メタは、ロシア政府に関連する2つの著名なサイト、ロシア・トゥデイ(RT)とスプートニクへのアクセスを、EUと英国全域で制限した。さらに、ロシア国営メディア発の情報を載せたコンテンツの評価も下げた。フェイスブックは、ロシアユーザーをターゲットにした広告を一時停止したが、ロシアの広告主は、もはや世界中どこにも広告を出稿できなくなっている。メタはまた、ロシア国営メディア公式チャネルの広告も停止し、アカウントも凍結した。

 

グーグル(親会社アルファベット)は、RTとスプートニクが運営するYouTubeチャンネルを、欧州全域でブロックした。これは、ロシア資本の入ったメディアのマネタイズを、全プラットフォームで無期限停止するという、同社の方針に沿ったものだ。ツイッターも、ウクライナとロシアにおける広告を一時的に停止している。これは、民衆のための重要な安全情報が適切に伝わり、広告がそれを阻害しないようにするためだ。

 

 

企業幹部やエージェンシーなどの反応

世界は、経済のグローバルネットワークとインターネットを通じてつながっている。そのため、ロシアとウクライナの戦争は、世界の人々とあらゆるビジネスに影響を及ぼしている。

 

アドテク企業のエクストリーム・リーチは、RTやRT Americaを含む、ロシアに関連するデジタルメディアとテレビ媒体への広告配信と供給をすべて停止した。同社はまた、赤十字のウクライナ緊急アピールを受けて、同社史上、過去最高額となる寄付を行ったと明らかにした。

 

2014年から楽天が運営しているメッセージングアプリ「Viber(バイバー)」も、ロシアとウクライナの両国で商業活動を停止した。ただしViberは、自由なコミュニケーションの権利を維持するためとして、両国とも無料の国際音声通話を提供し続けている。

 

楽天グループ自体も、ウクライナ政府を支援している。三木谷浩史会長兼社長が10億円の個人寄付を行ったほか、「楽天クラッチ募金:ウクライナ人道危機 緊急支援募金」も立ち上げている。また、楽天アドバタイジングも、欧州各国政府と連携する全てのグローバルエージェンシーと業務提携し、プロジェクトを始動させている。そのプロジェクトでは、ウクライナから避難する人々に、避難先の国々に関するさまざまな情報を提供することで、彼らを支援しようとしている。

 

マーテクプラットフォームのモバイルモンキーを創業したラリー・キム氏は、広告主やクライアントに、ロシア製品とサービスをボイコットするよう嘆願した。当然ながら、モバイルモンキーはロシアに拠点を置くクライアントとの取引をすべて停止する意向だ。

 

米国広告協議会は、非営利団体グローバルギビングを通じて、ウクライナ危機救済基金活動促進キャンペーンのPR素材をリリースし、一般の人々に向けて、災害・危機救済のための寄付を行うように呼びかけた。このPRメッセージは、専用サイト「SupportCrisisRelief.org」にユーザーを誘導する。また、広告協議会のコンテンツ制作部門は、避難民救済のための寄付を呼びかけるバナークリエイティブも作成した。

 

 

アドミクサーの提携先とアドテク企業

大手プラットフォーマーと同様、アドミクサーのアドテクパートナー各社もウクライナ支援を掲げている。例えば、ビッドスウィッチは世界規模のアドブロッカーを設置し、すべてのロシア保有メディアと、誤情報を広めていることが確認されたサイトをブロックしている。そして3月14日以降、ロシア国内メディアのマネタイズもすべて停止している。

 

アドミクサーの創業者兼CEOのアレックス・ボルティベッツ氏がプレジデントを務めるIABウクライナは、欧州各国のパートナーから多くの支持を集めている。IABヨーロッパは、ロシアおよびベラルーシのIABライセンスを停止した。IABのCEO、デビッド・コーエン氏は、「ウクライナにおける暴力を終わらせるために、私たちは力の及ぶ限り何でも行う必要がある。会員企業各社にも同様の行動をとるよう奨励するつもりだ」と述べている。

 

IABポーランドも、ウクライナとの連帯を表明し、すべての企業のデジタル部門に、ロシアとの協力関係を停止するよう呼びかけた。一方、IABスロバキアは、求人ポータルサイト「Pretlak」と共働し、ウクライナからの避難民がクリエイティブ業界で働くことを支援するウェブサイトを開設した。

 

英国に本拠を置くアイピーオンウェブのCEO、ボリス・ムジカンツキー氏は、その公開書簡の中で、ウクライナを心から支援すると表明し、ロシアにおける同社事業を閉鎖することを決断したと明らかにした。

 

メディアバイイングプラットフォームのザ・トレード・デスクは、民主主義の存続を担う信頼できるジャーナリズムを支援することや、誤情報の拡散を抑止することに、これまで以上に注力すると明記している。

 

オムニコム電通ハバスピュブリシスWPPIPGといった世界有数のエージェンシーや持株会社も、ウクライナ侵攻を受けて、ロシアにおける事業を閉鎖すると発表した。オムニコムは、地元のパートナーと協力して、同国内の投資ポジションを「処分」する。電通は、ウクライナ赤十字社へ約3800万円の緊急支援を行い、さらにウクライナへの追加義援金として1億円を寄付する予定だ。ピュブリシスグループは、ロシアでの事業および投資を直ちに停止し、同国の営業権を現地の経営者に譲渡すると発表した。同グループのCEO兼会長であるアーサー・サドウン氏は、「私たちは、ロシアのウクライナ侵攻開始以来すっと、ロシアによる一方的な侵略を強く非難し、同国からの事業撤退に取り組んできた」と語った。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS

2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。