プログラマティック広告領域におけるパブリッシャーのマネタイズ課題と、Cookieレスに備えた新たな広告施策について
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on 2022年5月13日 inパブリッシャーのマネタイズトレンドとプログラマティック広告活用の課題について
昨今、日本のプログラマティック広告領域では、多くの広告主が出稿費用を増加させています。パブリッシャーの広告マネタイズの観点においても、その収益割合が高まることで、重要なセグメントとして認識されています。
2020年からの2年間においては、2020年4月の新型コロナウィルス蔓延に伴う第一回緊急事態宣言発令のタイミングに合わせ、インターネット広告市場全体で広告出稿費が落ち込みました。その後は、巣篭もり需要が追い風となり、ECやオンライン課金サービスなどの広告出稿案件が伸長し、プログラマティック広告の市場規模は引き続き拡大を続けています。
一方、パブリッシャーの観点から見たプログラマティック広告は、新型コロナウィルス蔓延の初動において、PC・スマートフォンの両領域で、 広告単価・収益金額がともに大きく減少しました。
その後の消費回復に合わせて、スマートフォンを中心に約半年で回復傾向が見られましたが、広告単価の観点においては、2019年の広告単価の水準まで戻ってきていないパブリッシャーが多い状況となっています。そのため現在は、市場規模の拡大に対してのプログラマティック広告における収益金額の伸び悩みが課題となっています。
この背景としては、広告市場の市況の他に、
- SafariのITP(Intelligent Tracking Prevention)の段階的なリリースで、2020年にはブラウザの3rd party trackingの設定がデフォルトでオフとなったことが起因しています。それまで継続的に単価水準が向上していたスマートフォン広告の収益(特にiOS環境)において、広告単価の減少が発生しています。
- 昨今、ヘッダービディングソリューションなどパブリッシャーが入札機会を最適化するためのツールベンダーが充実し、導入が進んでいます。その一方、DSPの「パブリッシャー サイト」と「広告枠」を評価するロジックはAIの導入などで一段と高度な配信ロジックが適応されています。これにより単価の高い広告買付の割合が伸びていない事象が発生しています。
上記の2点が背景にあると考えられます。
この課題へのパブリッシャーの対策としては、プログラマティック広告の評価を正しく受けるために必要なサイトスピードの改善や、ユーザービリティを損なわない範囲で、視認性を高める広告枠の再設計を実施することが必要です。
その結果、より高い専門性と、運営維持のための体制強化が求められており、その対応状況による収益差も大きくなっています。
一方、大手パブリッシャーでは純広告など独自広告商品の設計、販売に注力をする企業が増えています。なぜなら、プログラマティック広告は投資効果が見えづらいことに加えて、収益性も純広告に比べると低いことが理由にあります。
一例として専門的な情報コンテンツに強みを持つパブリッシャーでは、純広告売上額が全体の収益割合のなかで大きく成長しました。そのため運用管理工数の観点から、プログラマティック広告ソリューションを最低限の実装対応とするケースや、広告在庫の希少性を維持するためにプログラマティック広告への在庫提供を行う広告枠を廃止した という事例もあります。
Cookieレスに備えるパブリッシャーたち
2023年には、ブラウザトップシェアのGoogle Chromeによる3rd Party Cookieの段階的な利用規制が予定されています。これにより、広告主は広告効果のトラッキングをこれまでと同様の規模で行うことが困難となります。
パブリッシャーにおいては、ターゲティング広告のさらなる単価低下により、マネタイズへの影響が懸念されます。これを補うために、様々なデータ戦略の取り組みが準備されています。
- 来訪者データの蓄積と、拡張による1st Party Dataの拡充
- ログインシステムにより獲得したIDによるデータ連携
- IDソリューション等の各種Cookie代替手法の見極めと実装
①~③はいずれもパブリッシャーにとって、人員確保とツール導入など新たな投資領域となります。そのなかでも 、①と②は特に難しいという声を多く聞きます。
①はCDP(Customer Data Platform)を活用するため、CDPの導入から蓄積するデータの設計を検討する必要があり、投資費用と知識が必要となります。②に関しては、ユーザーログインシステムの構築と、ログイン状態を維持させる施策の検討が必要であるからです。
しかし、今後もプライバシー保護の潮流が止まることはありません。そのため、自社サイトにおけるユーザーメリットの享受としては、他サイトとの差別化を行いながらロイヤルカスタマーと、新規来訪ユーザーを獲得していくことが、一層重要となります。
メディアの1st Party Data活用がもたらす、プログラマティック広告におけるマネタイズの可能性
パブリッシャーの1st Party Dataの拡充は、プログラマティック広告においてもマネタイズの大きな武器となり、広告主にとっては新たな価値提供を行うことができる可能性を秘めています。
パブリッシャーは、Google Analytics4などの各種分析ツールや、CDPを活用し、来訪者のサイト内での行動分析や、1st Party Dataの蓄積を行うことが可能です。
その一例としてメディア来訪者を以下のように分類しています。
- カジュアルユーザー
- ロイヤルユーザー
- メディアファン
各ユーザーの特徴としては、①は記事を読むことを目的としています。主に、コンテンツが接点となり、外部の連携サイトから流入してくるユーザーです。
②は月内にサイトへ複数回来訪しているユーザーです。彼らの多くは、無料会員登録やサイトをブックマークに追加していたりします。
③は①や②に比べて、メディアブランドに対して愛着とロイヤリティが高い傾向があります。毎日サイトへ訪れ、サブスクリプションや課金登録を行っている人が多いようです。
自社(エンハンス)調べによると、②・③のユーザーは、サイトの滞在時間だけでなく、広告の視認率や反応率も数倍の単位で高いことが確認されております。これはメディア規模やコンテンツ特性にもよりますが、②と③の全体割合が40%を超えるメディアも存在しています。そのようなメディアは、1st Party Dataを活用することで、高いアテンションが期待できるユーザーのみをセグメントした、広告のターゲティング配信をすることが可能となります。
さいごに
弊社では、複数のパブリッシャーと協業し、1st Party Dataの各種属性データと訴求内容に適した効果的な広告枠をプランニングしています。広告主に対して、プログラマティック広告における独自のディールパッケージを作成し、販売を行なっています。
PMP取引の割合が少ない日本のマーケットにおいては、まだ課題も多くありますが、データ連携を行わず精度の高いターゲティングが可能となり、Cookieレスにおけるターゲティング広告の有効な代替手段となりえます。
そのためエンハンスでは、CDP領域において、デジタルビジネスの収益化をサポートする統合プラットフォームを持つ、PIANO Japan 株式会社と協業してまいります。また各種SSPプラットフォームとは戦略パートナーシップを進め、広告代理店の販売チームと連携することで、広告主が活用するあらゆるDSPでも効率的、効果的に広告配信を行っていただける環境整備を進めてまいります。
エンハンスのサービス詳細はこちらから御覧いただけます。
ABOUT 立石 誠
2004年株式会社サイバーエージェントに入社し、広告代理事業部門においてメディア局、営業局局長を歴任後、2008年に株式会社マイクロアドへ転籍。アドネットワーク、SSPプラットフォームのメディアサイドパートナーへの導入・拡大に従事する。
2014年12月に株式会社エンハンスを設立し、大手メディア企業を中心としたメディアコンサルティング事業を開始。2022年1月より、広告主向けメディアプランニング事業・メディアソリューション事業を新たに展開する。