「今年はウェブDRの年」-Twitterがサイト訪問数最適化を強化した理由[インタビュー]
拡散力に優れ、アプリインストール広告などに強いイメージのあるTwitterが、ウェブサイト訪問そしてその後のコンバージョン最適化の本格的な強化に乗り出した。現在の取り組みに至るまでの経緯と今後の展望について、同社でパフォーマンス広告関連商品の市場展開に携わる犬飼裕一氏に話を聞いた。(聞き手:ExchangeWire Japan長野雅俊)
ソースコードを全面的に見直し
―自己紹介をお願いします。
Twitter Japan パフォーマンススペシャリストの犬飼裕一と申します。当社では、より効果的なパフォーマンス広告を確立していくための長期戦略の一環として、1月末に3つの新機能「サイト訪問数最適化」「イベントマネージャー」「集約測定」を導入しました。これらの機能は、プライバシー保護を重視するTwitterの原則を保ちつつ、広告主ウェブサイトへのトラフィック誘導を目的とする広告のパフォーマンスを向上させ、また効果測定の準備をよりわかりやすく、そして測定値をより正確にすることを目的としています。
―「より効率的なパフォーマンス広告を確立していくための長期戦略」とはどのようなものなのでしょうか。
当社では、2019年から2020年にかけて広告プロダクトコードの全面的な見直しを行いました。創業から10年以上が経ち、今や数百万行に達した関連ソースコードを再点検し、より保守性と可読性が高いものへと書き換える作業を行ったのです。その結果、新規広告商品の開発スピードを加速することができました。
2021年にはTwitterクリックIDを導入し、ウェブサイトへと誘導した広告のトラッキング精度が格段に高まりました。今までより正確な計測ができるようになったことで、サイト訪問数最適化の精度を引き上げることができたというのが現在地です。
ただし、購買や会員登録などといったオンライン上でのコンバージョン達成をKPIとする広告主様にとっては、ウェブサイト訪問はあくまでも通過点に過ぎません。この最終的なコンバージョンに向けた最適化の精度を更に向上する広告商品についても準備中の段階にあります。
オプトアウトユーザーのコンバージョン数計測を可能に
―コンバージョン最適化機能自体はこれまでも提供していたのではないですか。
もちろん現在でもコンバージョン最適化機能の提供は行っています。ただし、その機能は先に申し上げたソースコードの全面的な見直し作業の実施前に開発したものです。TwitterクリックIDなどを通じた新たなシグナルに基づく高精度の計測環境の整備は2021年より開始しています。新たな環境を最大限に生かした、新しいコンバージョン最適化機能は現在開発段階にあります。
―「新たなシグナル」にはいわゆるプロバブリスティック(推定)データも含まれるのですか。
いいえ、当社ではユーザーのプライバシーを尊重するという観点から、推定データは用いておりません。Apple社が2021年から導入した「アプリのトラッキングの透明性(ATT)」のフレームワークにも賛同し、業界に先駆けて全面的な対応を実施してきたという自負があります。
そのウェブサイト計測における実例が集約測定です。ATTアップデート以降は、iOSデバイスにおけるTwitterアプリ上でトラッキングについてオプトアウトを選択したユーザーは、その後サイト訪問やサイト上のコンバージョンを果たしても計測対象外としていました。これを2022年1月25日にリリースした集約測定の仕組みにより、プライバシー保護を目的にその他のユーザー情報はそぎ落とした上でコンバージョン回数を加算できるようになりました。この集約測定を適用することで、Twitter広告マネージャー上で測定可能なサイト訪問コンバージョン数が平均して31%増加するという報告も受けています。
より精緻な計測環境を実現するため、広告主様のウェブサーバーからTwitterへ直接データ送信することでより正確なコンバージョン計測を可能とする「コンバージョンAPI」の導入についても鋭意検討中です。
―複数あるコンバージョンポイントの中で、サイト訪問にこだわったのはなぜですか。
Twitter広告に貼られたリンクのクリックは、Twitter上で行われることなので当社が100%の正確性で計測することができます。ただし、広告をクリックした人すべてが遷移先のウェブサイトを閲覧するわけではありません。誤クリックや誤タップした人や、ページの読み込みが遅いがために離脱してしまう人も一定数いるでしょうし、さらに最近ではサードパーティCookie制限の影響で本当はウェブサイトを見ているのに計測できていないということが増えてきました。
オンラインマーケティングにおけるコンバージョンの多くはウェブサイト上で発生します。つまりサイト訪問とはオンラインマーケティングの土台であり、その最適化を行うための基盤となるデータにノイズなどが紛れてしまうと、最適化機能がうまく働かず、最終的なコンバージョンも十分に促進されません。
そこでTwitterクリックIDを始めとする、今までより精緻な計測環境を用意した上で、まず今回は、ウェブサイトを訪問する可能性が最も高いオーディエンスに広告配信するために最適化された、新しいウェブサイトトラフィック目的の商品をご用意したかたちです。また、これまでの当社のウェブサイトトラフィック目的の広告商品はすべてCPC課金でしたが、今回のサイト訪問最適化商品は、業界標準であり、また配信の安定性に寄与するCPM課金を採用しました。その結果、より低い単価でより質の高いインプレッションの獲得が可能になりました。ベータテストでは、以前のコンバージョン最適化プロダクトと比較して、サイト訪問当たりの単価が平均で31%削減されました。
ウェブDRへの注力を強化
―ソースコードの全面的な見直しによって、これらの機能改善が行いやすくなったのですね。
その他にも、広告主様がウェブサイトタグやコンバージョンイベントを一元管理する画面の名称を「イベントマネージャー」に改めた上で、利便性を高めました。ほかには、新しい広告フォーマットとして、ひとつのカルーセル広告上に静止画と動画の両方を混在させられる「ミクストメディアカルーセル」という新商品もご用意しています。
―今後の展開についてお聞かせください。
当社のいわゆるパフォーマンス広告領域では、とりわけ日本市場においてはモバイルアプリ広告が売上の多くを占め、またご好評をいただいておりました。もちろんウェブDR領域でも多くの広告主様にご活用いただいておりますが、こちらはまだまだ改善の余地があると考えておりました。
こうした現状を踏まえ、当社では「今年はウェブDRの年」と位置付けた上で、開発体制はもちろん営業やセールスサポート体制の拡充も含めて現在この領域に特に注力しています。ウェブDR領域における機能拡充を引き続き図ることで、私たちTwitterの持ち味を活かしたブランディング用途や会話醸成用途の広告商品とあわせ、フルファネルマーケティングソリューションとしての強みを一層強化してまいります。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。