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ビジネスパーソンに情報を届ける―ABCフロンティアのサイネージネットワーク[インタビュー]

ABCフロンティアはビジネスホテルの客室内に設置されている大型テレビをネットワーク化した広告媒体「おもチャンネル」を提供している。おもチャンネルでの広告配信はホテルの入室時に照明と一緒にテレビが自動的に立ち上がり、音声付きで配信されるものとなる。2021年のおもチャンネルの取り組みと今後の展望について、同社の梶原浩平氏に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏 海)

33,600室にネットワークを拡大

―「おもチャンネル」とはどのようなサービスなのでしょうか。

おもチャンネルはビジネスホテルの客室テレビを使いCM配信ができるという広告媒体です。現在は約33,600室に導入され、月間約109万人へのリーチが可能となっております。

 

ホテルの客室は入室後にルームキーを挿入すると、自動で客室内のテレビも起動するようになっています。テレビでは起動と同時にホテルのインフォメーション情報が流れるようになっているのですが、その右下をおもチャンネルの広告枠として開放しており、音声付の広告動画が流れる仕組みです。

 

ホテルの客室というプライベートな空間でかつテレビの大画面を使用するため、外部からのノイズも少なく、入室の際には必ず動画が流れるので半強制的に視聴行為を促すことが可能です。

―2021年は緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が続いておりましたが、どのような取り組みをしていましたか。

弊社の施策としては、おもチャンネルを導入いただけるビジネスホテルチェーンを増やしつつ、ホテルの客室テレビの広告価値を上げていこうとしております。アパホテルの客室からおもチャンネルはスタートしましたが、現在は京急EXインにも導入が進みました。

 

広告価値の向上を狙いに、通常の15秒から30秒のCMだけではなく、少し長めの3分のインフォマーシャル枠の拡充も行っています。ホテルのお客様の滞在時間は12時間以上とかなり長いので、そこでしっかりと情報を伝達するために、3分ほどの中尺動画を使ってサービスや商品の情報を伝えられる枠として開発しています。

 

さらに、もう1つの取り組みとして、サンプリングによる商品訴求がございます。シャンプーやボディーソープのような肌回り品をサンプルで貰っても、家では普段のシャンプーを使ってしまいがちですが、ホテルならば「せっかく貰ったので使ってみよう」という気持ちになります。食料品や飲料も家に帰れば冷蔵庫やいつもストックされているものを食べがちですが、ホテルではもらったものを食べやすい環境です。実際、サンプリングの使用率も高いです。

 

サンプリングの使用率の高い場所(ホテルの客室)で、ただ試して「よかった」「美味しかった」で終わらせず、その場にあるテレビを使って、サンプリングされた商品の便益やブランドのメッセージ、世界観をCMで補足し、映像、音楽で表していく。このようにブランド認知まで含めてホテルサンプリング+おもチャンネルでできると考えています。

―おもチャンネルを利用する主な広告主の業種は。

2021年は飲料系よりも肌回り品の会社など、生活消費財メーカーとの取引が多かったです。

 

以前実施した調査では、出張中のビジネスパーソンのうち約68%が清涼飲料水を、約36%がアルコール飲料を購買するという結果が出ています。

 

サンプリングされたものが非常に試されやすい場所であるとともに、コンビニへ送客するクーポンをサンプリングすることで購買に直結させる販促施策もできるなど、色々なバリエーションがあります。飲料メーカーの顧客を増やすことは今後の課題の一つですね。

 

アドフラウド・ブランドセーフティに強い媒体

―今後のサイネージ市場の成長促進要因は、どのようなポイントが考えられますか。

サイネージの魅力は場所とシーンに紐づき、広告訴求を受ける人の属性が絞られることにあると思います。

 

例えば弊社の媒体はビジネスホテルの客室内にあるため、出張中のビジネスパーソンに向けて広告訴求をすることが出来ます。テレビやウェブメディアだけで出張中の人に広告を出す、ということは非常に難しいですが、我々のメディアではピンポイントで出張中の人、ビジネスホテルを利用している人、といった特定の場所やシーンの人に広告を出すことが出来ます。

 

これがサイネージの大きな魅力だと思いますが、現在はサイネージの訴求方法として、静止画ではなく動画化が進んでいるのも成長要因になるでしょう。

 

そのほかには、アドフラウドやブランドセーフティに強いのもサイネージの特徴だと考えています。おもチャンネルの広告出稿基準も弊社だけでなく、ホテル会社も通した基準になっているためさらに一段厳しい基準になっていますので、より不適切なCMが流れにくい仕組みになっています。

 

これらの成長促進要因に基づき、サイネージの面数が今後増えていけば媒体としての存在感も増していきます。広告媒体の予算の投下先としては「テレビ」「ウェブ」「その他」といった括りに現在はなっているかと思いますが、3本柱のひとつがその他ではなく「サイネージ」という認識になるよう営業しています。

 

コンテンツの量・質を高めることに注力

―改めて、今後の事業展望についてはどのように考えていますか。

おもチャンネルは2019年4月にサービスを開始しました。この2年間はコロナの影響も大きく受けましたが、この間に「3分間のインフォマーシャル」や「サンプリングセット」といった稼働率に影響されにくい商品づくりを行ってきました。緊急事態宣言解除以降、稼働率とともに、市況感も着実に戻ってきていますが、これまでとは異なるスケールで売上を立てていこうと巻き返しを計画しています。

 

HPに掲載しておりますが、ブランドリフト調査の結果は視聴環境や属性・シーンといった特長からも非常によい反応が出ております。しかし、売上にどれくらい直結する効果があったのかという「広告効果」についてはデータがとれないという多くの媒体と同様の課題を抱えています。

 

ビジネスホテルが建つと周辺にコンビニが出店すると言われるくらい非常に購買が起こりやすいポイントで広告を配信できるので、高いリーセンシー効果を活かす方法を模索しています。

 

ビジネスホテルはお客様の滞在時間が長いことを踏まえ、ただCMを流すだけでなく、今後は更にコンテンツの質や量も高めつつ、ホテル滞在時間を楽しんでもらうというコンセプトで独自のコンテンツやチャンネル作りも強化していこうと考えています。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。