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Instagramが創る、新世代Eコマースプラットフォームの今後のあり方[インタビュー]

ビジュアルによるコミュニケーションプラットフォームとして世界中のユーザーが利用するInstagramは、近年Eコマースプラットフォームとしての機能を備え、その経済圏は急速な拡大を続けている。

Eコマース事業者が利用する上でどのような機能を備えており、また今後どのような進化を遂げていこうとしているのか。

Facebook Japan執行役員 営業本部長 鈴木 大海氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

「好きと欲しいをつくる」-EコマースプラットフォームとしてのInstagramの魅力とは?!

―Instagramの直近のユーザートレンドについてお聞かせください

利用者のトレンドは引き続き、特に日本において好調な推移を示しています。昨年からビジネスに向けたInstagramの価値を「好きと欲しいをつくる」プラットフォームと打ち出しています。利用者にとって、趣味に関連することや好きな何かについての情報とつながるための場所であるInstagramだからこそ、商品やサービスを発見した瞬間に“自分ごと化”し、購入や来店などのビジネス結果を達成できるプラットフォームとして重宝いただいています。中でも、日本の利用者数は非常に順調に伸びており、国内の月間アクティブアカウント数は2019年に公表した3300万アカウントから、さらに伸び続けております。全世界では月間10憶アカウントがアクティブであり、多くの方々に使っていただいています。

 

-広告主の利用状況はここ数年で大きく変わってきているのでしょうか。また、広告主の数や層も変わってきているのでしょうか。

広告主も利用社数が増加し続けております。全世界では毎月2億以上のビジネスに、何らかの形でFacebook社が提供するプラットフォームをビジネス目的で使っていただいています。また、1000万以上のビジネスが広告に投資し、広告主数も順調に伸びています。新型コロナウイルス感染症拡大以降、デジタルシフトが加速しているなかで、Instagramをビジネスで使っていただいている事業者が増えており、その裾野が広がっています。

Eコマースにおけるショップ機能が果たす役割とは?

―Eコマース事業者向けのソリューションについてお聞きします。最近ではどのような機能をリリースされましたか?

Facebook社では2020年6月に、ショップ機能という新しい機能を日本でリリースしました。
Instagramでは、新型コロナウイルス感染症拡大前からコマース機能の拡充に注力してまいりました。そしてコロナ禍以降この領域への投資を拡大してサービス開発を加速させています。ショップ機能を提供する前からも、商品タグという機能を使って自社のECサイトで販売する商品情報を投稿にタグ付けすることが可能でしたが、ショップ機能の導入により、個々の商品をまとめてカタログのように紹介したり、Facebookを含む弊社のプラットフォームを横断して一元管理できるようになりました。コロナ禍で経済的なダメージを被った中小ビジネスの方々を支援するという目的においても、機能をより使いやすく改良していくということに、注力してまいりました。

さらに、2020年7月には利用者とビジネスや商品の出会いを促すInstagramショップを導入しました。Instagramショップは、Instagramのアプリを開くと現れる右から二番目のショッピングバックアイコンを押すと表示されるページです。ここにはショップ機能を使っているビジネスの投稿が、利用者の好みに合わせてパーソナライズされて表示されることで、あたかも各利用者ごとのオリジナルセレクトショップが用意されているかのような体験として表示されます。また、ビジネスにとっては、フォロワーやハッシュタグ検索をたどってくる利用者以外の新しい導線として機能しており、新規顧客の獲得が見込めるようになっています。

元々Instagramは利用者を外部サイトに飛ばす導線が少なかったのですが、ECサイトでの購買を促進するために、商品ごとにリンクを設置できるようにしたというのが商品タグやショップ機能です。リンクをクリックすると、一旦Instagram内の商品詳細ページに飛ぶように設定されており、そこから外部のECサイトに利用者を誘導することができます。

さらにここでショーケース化できた商品を利用者の方々に便利に、発見しやすくしていただくという導線を作ったのがこのInstagramショップという位置づけになります。

 

―商品購入における決済機能はInstagramの中と外どちらにあるのでしょうか

チェックアウトという決済機能を現在米国のみで提供しております。米国では商品の詳細ページから購入まですべてがInstagram内で完結しています。日本でも現在このような機能の展開を検討中ですが、時期はまだ未定です。

 

―現在Eコマース事業者である広告主は、Instagram内のユーザー導線のどこを促進する広告を出稿することが多いのでしょうか。また貴社としてはどのような広告をお勧めしていますか

先ほどお話した通り、日本のEコマースビジネス向けには現在決済機能を提供していないため、商品詳細ページからさらに購入をする段階になると、Instagram外のECサイトに利用者を誘導するという導線となります。
広告を出稿する場合、色々なパターンがありますが、ショップ機能を使って開設したショップに誘導する広告を出稿いただくと、そこでの滞在時間が伸びて複数の商品を閲覧したり、商品の詳細をInstagram内で検討する利用者がより増えるということが明らかになっています。
各ビジネスのECサイトをランディング先として設定するパターンも引き続き多くありますが、商品についてより理解していただくことができるので、ショップに遷移する広告を活用してもらうのをお勧めしているところです。

 

 

発見型コマースを実現できるInstagramが目指す、機能進化の今後

―動画に関連した事例についてお聞きします。ライブ機能の活用などは進んでいるのでしょうか

例えばLIFE TUNIG DAYSという、ヨガやウェルネスに関するグッズを販売しているビジネスの事例が挙げられます。コロナ禍で実際にヨガ教室に行きづらくなるなかで、同社にはライブ機能、ショップ機能を活用いただいています。
ヨガのやり方を文章や静止画で説明するのは難しく、ライブ機能を活用して告知や販売をしていただいた好例です。

また、動画の事例ではありませんが、商品の魅力を伝える発信方法という意味では、ヘアケア製品のBOTANISTブランドで知られている、I-neが運営しているSALONIAという美容家電機器ブランドが、Instagramのショップ機能およびコレクションを上手に活用されています。中でも商品群をまとめてカタログのように紹介できるコレクションを使用して売り手目線ではなく、顧客目線でヘアスタイル別に、コンテンツをまとめて利用者に見せる工夫をされています。

加えて、最近では短尺動画機能であるリールを活用する利用者が増えています。
モノの購入を検討する際、まずInstagramを見るという利用者も増えているなかで、例えば家電機器など、美容やファッションといった従来の人気カテゴリ以外のカテゴリの商品を、Instagramで販売促進する事例も増えています。

 

―今後についてショップ機能はどのように進化していくのでしょうか。決済機能は米国で先行してリリースされており、今後日本での展開の可能性についても想像がつきますが、他にも何か予定されていますか

ショップ機能を利用者、ビジネスの双方に価値があるものとしてお使いいただきたいと考えています。これまでは、例えばInstagramとFacebookでショップ機能をシームレスに使うことが出来るといった基本的な機能の拡充を行ってきました。今後は商品の販売を促進していただくためのツールも充実化させてまいります。例えば米国では、ライブ配信中のスクリーンに商品が表示され、そのまま購入できるというライブショッピング機能を現在テストしています。

また、クリエイターが消費行動に与える影響にも注目しています。Instagram上では、例えばクリエイターの方がなぜその商品を気に入っているのかというストーリーと共に商品を売ることが出来るため、購入者側もより納得感を持った上で商品を購入していただけると思います。モノを売りたい人、モノを売るお手伝いができる人(クリエイター)、モノを買う人、これらを結びつける橋渡しをしながら、モノを軸としたコミュニティを作るための機能を提供するということは、我々のミッションの一つであると考えています。

Instagramは、利用者が自分の大切な人や好きなことと繋がれるよう、投稿も広告も、その利用者が興味を持ちそうなコンテンツをパーソナライズして表示する仕組みです。だからこそ、パーソナライゼーション、すなわちその消費者が(既に知っている)商品を検索するのではなく、欲しいものとの偶発的な出会いを生み出すことで「商品が顧客を見つける」という新しいコマースの在り方を実現することができます。

現在サード・パーティークッキーやIDの利用環境が変わりつつありますが、我々はパーソナライゼーションとプライバシーの両立はできると思っております。
しっかりと利用者のプライバシーを保護しながらパーソナライゼーションを基にした発見型コマースを提供してまいります。広告に関しては、なぜその広告がその利用者に表示されているのかをしっかりとご説明し、その上で広告ごとにオプトアウトが出来る機能を搭載したりする取り組みは、インターネット広告業界の中でも最も進んでいると自負しています。

Eコマースにおいても、一人一人にとって有用な商品との出会いを提供できるようにコマース機能を拡充し、ライブショッピング、チェックアウトなどの機能も将来的に日本でも提供していきたいと考えております。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。