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マスからデジタルの受け皿へ―フルファネル対応を目指すTwitterの新しい施策 [インタビュー]

Twitterでは「ブランドセーフティ(ブランドの安全性確保)」をTwitterの広告および測定ソリューションの中心的なテーマとして位置付けている。デジタルプラットフォームへの広告投資意欲がグローバルで強まる傾向のなか、Twitterではそれに応えるために様々なプロダクトの開発やメッセージの発信を行っている。

 

Twitter Japan広告事業執行役員の松山歩氏(写真・左)と広告事業部 統括部長の持田忠一郎氏(写真・右)に広告ビジネスのトレンドと新たな広告効果測定への取り組み、およびブランドセーフティの取り組みに対して話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下智之)
(ライター:同 柏海)

 

速報性と多面性が求められる情報収集ニーズは

デジタル広告市場全般における直近のトレンドについて、どのように認識をしていますか。

松山氏:ユーザーの情報収集ニーズは引き続き強く、ソーシャルを中心としたデジタルプラットフォームの利活用が拡大するトレンドが非常に強いです。弊社の第2四半期の広告配信可能なDAU(広告が表示されるDAU)もグローバルで2億600万人となっており、おかげさまで前年同期比10%以上の成長を継続することが出来ました。

 

こういった傾向は生活者のなかで、とにかく早く情報を収集したいという速報性のニーズ、および多面的に1つの事象を分析したいというニーズの2つが表れた結果だと見ています。例えば、新型コロナウイルスのワクチン情報についても、いち早く情報を入手すると共に、政府やマスコミの情報だけでなく実際の使用者の声などを皆さん集めているのではないでしょうか。

 

また、各SNSユーザーの1日あたりの利用者数のトラフィックを見ても、日本ではTwitterが他のソーシャルメディアよりも高く、更にそれが上昇傾向にあります。

そのような状況下で、広告主の皆様にとっても、成長を続けているソーシャルプラットフォームに対する投資意向は非常に強くなってきていますが、更にその中でもTwitterへの期待感は広告主の間でも高まっていると感じます。

 

広告主の業種別広告出稿トレンドについてお聞かせください。

松山氏:消費財系の広告主による広告出稿意欲は回復基調にあります。これはコロナ禍でも少しずつ先の状況が見えるようになってきたことが理由に挙げられますが、それとは別のトレンドとして、マスからデジタルへのシフトがより加速していることも大きな理由であると、分析しております。これは日本に限らず、グローバルにおけるトレンドでもあります。

 

一方で、旅行系や飲食系の広告主などにおいては、コロナ禍の影響が継続しており、引き続き出稿を控えている傾向がみられます。ただ、米国ではワクチンが普及し始めたタイミングで旅行系や飲食系の広告出稿が盛り上がりつつあるので、日本でもワクチンの接種が広まれば回復し始めるのではないかと考えています。

 

顧客のフルファネルソリューションに対応

―Twitter社の広告ビジネスにおいて、足元の課題として感じていることをお聞かせください。

松山氏:1つは「顧客のフルファネルソリューションへのニーズに応えていきたい」ということです。Twitterは従来よりアッパーファネル(認知、興味関心層)に強いプラットフォームではありますが、ミドルファネルやその先のローワーファネルについても、特にモバイルアプリのダウンロードに関しては顧客から定評をいただいていると認識しています。ただ、今後はeコマースなどのダイレクトレスポンスの領域でどれだけTwitterが貢献できているか、それを可視化して見せていく必要があると思います。

 

もう1つは「マスからデジタルにシフトするなかで、Twitterがマスメディアとシナジーを効果的に発揮できることを知ってもらいたい」と考えていることです。コロナ禍で広告予算が大きく動いていますが、顧客の「商品、サービス認知を短期間で獲得したい」や「新CMをより多くの人に見せたい」というニーズに対して、Twitterではその受け皿になるプロダクト自体は一通り揃っています。

 

マーケティングや営業の努力によるところでもありますが、我々のプロダクトの特徴を伝え、ご理解をいただくことにより、Twitterがテレビなどのマス媒体とシナジーを発揮し、組合せの中で効率的なリーチを獲得できることを知ってもらうのは大きな機会となります。

 

デジタルシフトの受け皿となるために、具体的にどのようなプロダクトを提供していますか。

松山氏:プロダクトとしては“動画広告の15秒再生の最適化”という新たな入札形態を用意しました。こちらは動画広告を発信する際に、動画の尺に関わらず、最低15秒は視聴してくれる可能性が高いユーザーに広告を届けるために、配信先の最適化を行うメニューとなります。

このメニューが生まれた背景は、TwitterがテレビCMの補完として使われるために「最低でも15秒は動画をしっかりと見せたい」という顧客の声が強くあったことです。これに対して、我々もマスからデジタルの流れの受け皿となるべく、用意をさせていただきました。

 

ブランドリフト調査で、アカウンタビリティに対応!

―Twitter社では新しい広告効果測定とブランドセーフティにおける取組に関するメッセージを発表されました。新しい効果測定に取り組み始めた背景からお聞かせください。

松山氏:先ほど「マスからデジタルへ」という傾向のお話をしましたが、その過程におけるアッパーファネル、特にブランドリフトに関しては、アカウンタビリティ(説明責任)へのニーズが高まっています。

そのニーズの高まりに応じて、Twitter社では2019年末にファーストパーティ測定ソリューション「Twitter Brand Survey」の提供を開始しました。こちらはファーストパーティによる調査なので、ユーザーは他のサイトに移行することなく回答可能で、サンプル回収率も非常に高くなっております。

 

また、Twitter Brand Surveyを利用している広告主は、広告想起では平均でプラス21ポイント、メッセージ連想で平均プラス7ポイント、検討以降・購入意向段階でプラス6ポイントの増加を確認しています。

 

安全なTwitterはより良いTwitterである

ブランドセーフティに向けたお取り組みの背景をお聞かせください。

持田氏:我々は一般ユーザーから広告主、代理店パートナーも含め、Twitterを安全・安心なプラットフォームであると認識し使ってもらうために、様々な取り組みを行っています。

ただ、ソーシャルメディア自体は既存のデジタル媒体と異なり、様々な声が集まる集合知が特長の新しいメディアです。日本でのサービス開始は2011年で歴史も浅いですが、Twitter上の 厳しい声に対して、どのように応えていけば良いかをずっと悩み続けています。

 

特に2019年以降はTwitterの媒体規模が非常に大きくなってきたため、ブランドセーフティに対してよりアクティブに取り組んでおります。また、2020年に起きた「ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命をないがしろにするな、とする運動)」では、ソーシャルメディアで始まった運動がソーシャル内に留まらず、ソーシャル以外の広告主ビジネスや一般ユーザーの行動に波及したりなど、非常に大きなインパクトがありました。

現在、Twitterでは「Safer Twitter is better Twitter(安全なTwitterはより良いTwitterである)」というメッセージのもと、様々なブランドセーフティおよびヒューマンセーフティの活動に取り組んでいます。

 

具体的にはどのような活動をしているのでしょうか。

持田氏:テクノロジーの会社として、プロダクト開発を進めることが一つの大きな証明になると考えています。

直近では、広告向けのツイートに会話をより細かくコントロールできる「広告向け会話参加設定機能」を設けました。今までは自由にリプライやコメントが出来ていた広告について、今後は会話のコントロールも必要に応じて広告主に行っていただき、ブランドセーフティの一環として使っていただければと思います。

また、DoubleVerifyやIntegral Ad Scienceとのパートナーシップを通じて、第三者によるブランドセーフティ測定ソリューションを強化しておりますが、今後のプロダクト開発として、広告主が出稿した広告の隣接コンテンツについてレポーティングできる機能の開発も進めていく予定です。

 

今後はどのような取り組みを進めていく予定でしょうか。

持田氏:一つは外部の団体から更なる認証を受けることを考えています。

あなたのプラットフォームは安全ですよ、と第三者に証明していただくのは広告を出稿いただくクライアントだけでなく、普段利用されるユーザーから見ても安心いただけるポイントだと考えており、Twitterでは、海外のTAG(Trustworthy Accountability Group)という団体から、Brand Safety Certified Seal(ブランドセーフティ認証マーク)を取得しております。これからは他の認証も取得したいと考えており、それらの情報も積極的に発信していきたいですね。

またブランドセーフティの啓蒙活動も重視し、社内や社外、海外や日本など、様々な角度で我々のブランドセーフティへの取り組みやその重要性について伝えていきたいと思います。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当

日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。