プライバシー制限の帰結とは?-ironSourceがポストIDFA動向を解説
アプリ向けビジネスプラットフォーム大手であるironSourceが、7月8日(木)、「LevelUp 2021」と題したモバイルゲーム開発者向けウェビナーを開催した。
(Sponsored by ironSource)
Androidがシェアを急拡大
ironSourceで日本市場のジェネラルマネージャーを務める峯秀一郎氏は、モバイルゲームにおける直近のグローバル市場動向を紹介。コロナ禍で平日の利用時間が増加した結果、週日にも週末と同程度の広告収益が上げられるようになったと述べた。
また外出自粛期間中にいわゆるゲーマーではない一般消費者がゲームアプリの利用者になった可能性があると推測。加えて非ゲーム系アプリがゲーム系アプリに対して平均収益が割高なユーザーを供給しているとの実態を伝えた。
さらに広告収益全体の中でAndroidアプリが占める割合が急上昇中。これまでiOSが優勢であった米国市場でも既に均衡し、同社が計測を開始して以降では初めてAndroidのeCPMがiOSを上回った。Androidでキャンペーンを実施するタイトルが増えたことに伴い、Androidでの広告出稿単価も上がっているという。
峯氏は、Androidのシェア急拡大の背景として、iOS上でのトラッキング制限の影響について言及。同社によると、iOSユーザーの4割は追跡型広告の制限(LAT)機能をオンにしており、この設定は以降のアップデートでも自動的に引き継がれるため、従来の方式を通じたトラッキングができないユーザーが多くいるとの現状を述べた。
またLAT機能をオンにしたユーザーのアトリビューション分析を可能とするApple社独自のSKAdNetworkは既に本格的に作動。一方で従来からターゲティングやアトリビューション分析に利用されてきたApple社の端末IDとなるIDFAの取得に応じたユーザーは全体の2割に留まるという。
次は「ソーシャルクリエイティビティ」が生まれる
続いて登壇したゲームエンジン大手UnityのCMOを務めるClive Downie氏は、ゲーム業界が直面する課題や今後の発展のあり方についての持論を披露した。一例として、ゲームのサブスクリプション化に向けた動きが見られるものの、価格モデルの変更のみに留まっている点を問題視。高額になりがちなクラウド上でのデータ処理方法から脱却することでゲームの利用時間ごとに課金するなどより安価で利用実態に即したビジネスモデルを構築し得るとの構想を語った。
またゲームのグラフィックや様々なデータを改造するプログラムを意味するMODがモバイルゲームアプリにおいても本格化すれば、ソーシャルゲームの流行が「ソーシャルクリエイティビティ」へと発展する可能性があると論じた。
プライバシー閾値の課題と解決方法
ironSourceのチーフデザインオフィサーを務めるDan Greenberg氏は「ポストIDFA時代におけるクリエイティブ戦略」を解説した。iOS14以降で設定された「プライバシー閾値」により、一つのチャネルで実施できるキャンペーン数が100本までに制限。広告クリエイティブの最適化に支障が出ているとの現状を伝えた。
そこでGreenberg氏は、まずはAndroidでテストを実施し、iOSに反映していく手法を推奨。また複数の異なる要素を詰め込むことで、一つの広告クリエイティブを通じて多様なユーザーに訴えかける事例を紹介した。
プライバシー制限の帰結
モバイル・マーケティングに関する論考を多数発表しているEric Seufert氏は、アトリビューション分析を担うモバイル計測パートナー(MMP)がフィンガープリント計測を継続していることを問題視。正確性に欠けると同時に、Apple社がフィンガープリント計測を今後禁止していく可能性を真剣に考慮すべきだと訴えた。
またironSource社のグロースVP を務めるYevgeny Peres氏は、Google社も2021年末に同社の端末IDとなるGAIDにトラッキング制限をかけるオプトアウトの選択肢を導入予定と発表したものの、同社のシステムでは流入ユーザーを決定論的に計測できるリファラーが残されている点に着目。ATT(Apple Tracking Transparency)と総称されるApple社によるトラッキング制限よりも影響は少ないだろうとの見込みを伝えた。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。