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クッキーレスに向け、ブランドが取り組むべきこと

CookieとデバイスIDの使用率は2022年半ばまでにGoogle Chromeの代替技術変更からiOS14のリリースなどに乗じて徐々に減少していく。このことはデジタル広告業界に多くの情報錯綜をもたらし、かつてない変化を引き起こしている。

Teadsは今年2月にブランド担当者とエージェンシー関係者を対象に、「クッキーレスワールドBootcamp Webinar for Brands & Agencies」と題したイベントを開催した。このイベントはオンラインで開催され、250人が聴講した。

 

 

クッキーレスによるマーケット環境の変化とは?

冒頭、Teads APAC データアナリストのベンジャミン・リーバーグ氏から、クッキーレス時代に突入したマーケット環境についての解説がなされた。

「これまでウェブやアプリで事業者が個人を識別する方法としてこれまで使われてきたクッキーや、IDFAが今後これまでのように有効に機能しなくなることについて、それぞれの対応が求められている。」と述べるとともに、「デジタル環境下でユーザーのプライバシーを保護する取り組みは、国・政府の規制や大手プラットフォームにより既に進んでいる。2018年に欧州ではGDPRがスタート。米国カリフォルニア州でもCCPAが始まった。GDPRの影響で多くの国や地域が同じ対応を取りつつあり、サービス事業者がユーザーのクッキーを取得する場合には、必ずユーザーからの同意を取ることが求められるようになった。」と、クッキーレスに向かう現在の背景について確認をした。

リーバーグ氏は、「Chromeによるサードパーティクッキーの廃止によるインパクトを強調。2022年にChromeがクッキーの制限を開始すると、2023年には使用できるクッキーの量が現在の10%以下になる。」とその影響力の大きさについて語った。

Teadsの調査によるとDSPのキャンペーン需要は、クッキーが利用できない場合、その入札率は約75%低下するとのこと。またGoogleが発表した調査によると、クッキーが使えなくなると、パブリッシャーの広告収益が52%減少するといわれている。

 

このような中、現在デジタル広告業界では大きく二つの方法が代替案として挙げられている。一つ目は、クッキーレス・オーディエンスターゲティング、そして二つ目はコンテキストターゲティングである。

一つ目のクッキーレス・オーディエンスターゲティングは5つのカテゴリに分けられている。

1.ユニークID

2.パブリッシャー・ファーストパーティデータ

3.予測オーディエンスターゲティング

4.グーグルChromeプライバシーサンドボックス

5.IABによるRearc Project

 

このうち「1.ユニークID」は、「クッキーの代わりにログインIDやEメールアドレスを使う、大変人気のあるソリューションである。」と紹介。だがこのソリューションの課題は、サブスクリプション会員向け記事提供などで、パブリッシャーがユーザーのオプトインを取得する必要があり、大手媒体には適しているが、中小媒体には導入リスクがあるとのことだ。

「2.パブリッシャー・ファーストパーティーデータ」は、サードパーティクッキーが有効的に機能しなくなった後も、自社のインベントリーを通じてユーザーをトラックすることが出来るということである。パブリッシャーは引き続き自社ドメイン上でファーストパーティデータを使うことが出来る。課題となるのはユーザーがオフラインにいるときや、自社外のウェブサイトにいるときの行動をすべて把握できるわけではない。

「3.予測オーディエンスターゲティング」は、インプレッションが発生するまでにリアルタイムで利用可能なデータをユーザーの属性へと変換するアプローチである。様々なクッキーレスシグナルを分析し、これらをオーディエンスデータへと変換する。現在利用できるサードパーティーデータを活用し、属性を正しくグループ化できるように、現在色々な会社が検証している。

「4.グーグルChromeプライバシーサンドボックス」は、ユーザーの認証やトラッキングをブラウザ内で行うというもので。ウェブサイトを訪問したユーザーをグループ化することで個人を特定せずにターゲティングが可能な「FLoC」や、「TURTLE DOVE」という、リターゲティングを目的とした手法の開発が進んでいる。

 

リーバーグ氏は、「プライバシーサンドボックスは、精度とスケールの観点からサードパーティクッキーの代替案として非常に有効であると考えている。」と評価した。

Googleはすでにツールの提供を開始し、現在テストを奨励しており、Teadsでも開発を進めて、今年の後半にはアップデート情報をリリースするとのことだ。

 

そして、「5.IABによるRearc Project」。IABが主導し、750の会社が集まりクッキーの代替を研究しているものの、現時点ではまだ明確な方法が出てきていないという。

またベンジャミン氏は「これらを組み合わせて、クッキーレスに対して有効な対応を取ることが可能になる。」と、これらの有効的な活用方法について語った。

 

そして二つ目のソリューションが、コンテキストターゲティングである。「このソリューションは決して新しいものではないが進化しており、多くの企業が注目している。」とする一方で、「そのターゲティング精度がキーワードに大きく依存して一つのキーワードだけでは記事の内容や意味を判断することが難しく間違いやすい。」ことや、「コンテンツターゲティングの選択肢が多すぎて、特定の行動を明確に区別できない。」ことなどを課題として挙げた。

また、多くのコンテキストターゲティングは、ブログサイトのようなUGCに表示されてしまうことも課題であるとして「(コンテキストは)プロ編集コンテンツに正しく表示させる必要がある。」と述べた。

 

クッキーレスに向け、2021年に取り組むべきこと

続いてTeads Japanセールス・ディレクターの川口瑞浩氏が登壇。

川口氏はまず、Teadsとしてクッキーレスに向けて主に対応をしている取り組みとして、Predictive Audience(予測オーディエンスターゲティング)、Googleのプライバシーサンドボックス、コンテキストターゲティングがあると述べ、「このうちTeadsが独自に取り組んでいるのがPredictive Audience、とコンテキストターゲティングである。」ことを紹介した。

川口氏は、「それ以外のソリューションとも組み合わせることで、より精度が高いサービスを目指していければと考えている。」と述べた。

ここで川口氏の説明は、まず一つ目のPredictive Audienceについて及んだ。

Teadsが持つオーディエンスターゲティングのバリエーションは250種類にも及ぶ。その内訳は、ソーシャルデモグラフィックやライフモーメント(家族構成、世帯年収など)、興味関心、購入意向、購入履歴なども含まれる。この中で、クッキーレスで利用ができるバリエーションを増やしていくために、現在アルゴリズムの改良を行っているという。では、クッキーレスでありながらどうやってユーザーのオンラインアクティビティーをターゲティングに活用しているのか。川口氏は「主に二つのポイントがある。」と述べ、以下について紹介した。

一つ目はTeadsが連携している何十億ものプレミアムパブリッシャーの編集記事コンテンツへのアクセスデータである。収集したデータをTeadsが持つAI技術によりリアルタイムで解析し、関連するオーディエンスカテゴリに分類しているという。

そして、同社が持つデータと、AI技術、その他複数のソリューションを組み合わせることにより、クッキーを上回る精度のターゲティングが可能となるとのことであり、The Trade DeskやLiveRampとの提携のほか、Googleプライバシーサンドボックスへの参画も計画をしており、今年3月からテスト検証を開始している。

Teadsでは現在オーディエンスターゲティング全体の15%においてクッキーを使用せずに配信をしている。またその際広告想起、ブランド認知、購入意向などのリフトアップなど、キャンペーン配信を想定する上で使用される指標をこれまで以上に上回るということを目標として、クッキーレスの環境でもパフォーマンスを維持できる最新のオーディエンスを構築していくと、その方向性を語った。

次に、二つ目のソリューションとしてコンテキストターゲティングを紹介。

Teadsが提供するコンテキストターゲティング右派、プレミアプパブリッシャーが編集した良質な記事上で機能しており、クライアントにとって安全で信頼性の高い環境を提供できることが特徴であるとのことだ。また、独自の技術により、記事内で使われている単語の配置や頻度、単語と単語同士の距離なども、その分析のメトリックスに含めて対応し、様々な分析データを組み合わせ、より記事に関連性のあるカテゴリを抽出して、ターゲティングを行うことが出来るという。

Teadsは現在、500以上のコンテキストセグメントを用意しているが、リーチと精度のバランスを見ながら活用できるように、これを4階層に分かけて広告主に提供しているとのことだ。

川口氏は、「コンテキストターゲティングには、もう一つコンテキストモーメントという考え方がある。」と続けた。

川口氏によると、この機能はコンテキストターゲティングに加えて、環境要因を追加する手法であり、例えば「あるユーザーが特定の記事トピックスを、何時にどこで読んでいるのか」といった環境要因を追加し、ユーザーが広告を最も受け入れやすい適切な時間を見つけるというような考え方であるとのことだ。

また、コンテンツを特定する際にはユーザーの居場所、時間、使用しているデバイスや天気、関心のある場所なども考慮され、ターゲティング配信に加味される。

「これらの手法により、従来のコンテキストターゲティングよりも関連性の高いターゲティングを提供していく。」と、Teadsのコンテキストターゲティングの独自性をアピールした。

最後に同氏は、「2021年はクッキーを使用しないクッキーレスでの広告配信手段をテストする年でもある。」とし、クッキーを使ったキャンペーンと、クッキーレスのキャンペーンとを比較することが出来るこの時期に様々なトライアルをしておくことを推奨した。

また、「クッキーレスに対するソリューションは一つでは難しく、様々なアプローチを試してどの組み合わせが最適化を見つける準備をすることが必要である。」と強調した。

 

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。