進化するデジタル社会におけるブランドセーフティの拡大
2021年の日本におけるデジタル広告費の予測はおよそ170億米ドル(122億ポンド/1兆8200億円)と、デジタル広告は日本でもすでにテレビを抜き最大のメディアとなりました。広告主にとっては、他の多額のビジネス上の投資と同様、メディアへの投資が有益に使われ、自社の広告が質の高い環境で確実に表示されているようにしたいと考えるのは当然です。ブランドの安全性や適合性を担保し、広告費がアドフラウドにかすめ取られないようにしたいと考えることもブランドにとって当然の要求です。
しかし、2020年の世界的パンデミックや世界各国での社会的および政治的な混乱などの様々な破壊的な出来事により、広告主の最終損益や消費者の消費意欲の低下に影響を与えかねないデマやフェイクニュース、ヘイトスピーチ、潜在的に悪意に満ちたコンテンツなどが溢れかえる中、ブランドの安全性へのニーズは確実に高まっています。
DoubleVerifyとHarris Pollの調査によると、消費者の87%は、ブランドは自社の広告が安全な面に配信されるよう責任を負うべきであると考えており、消費者の65%はもしデジタル広告を偽のサイトや炎上コンテンツ上で見た場合、そのブランドやプロダクトを使うことをやめるだろうと考えています。
現在の絶え間ないニュース環境の変化の中、広告主は素早い決断を迫られてきました。そして多くの広告主の初動でのアクションは、全てのニュースコンテンツへの広告掲載のブロックを検討するか、注目の高いネガティブトピックスから身を守るためキーワードブロックリストを幅広く取ることでした。その結果、多くの場合広告活動の規模が大幅に縮小され、また質の高いニュースを配信する正当なニュースパブリッシャーにも思わぬ悪影響が生じました。広告主はこのような状況への取り組みかたについて再検討を始めることになったのです。
広告主はブランドセーフティとスータビリティに対して、よりきめ細やかな取り組みをすることが可能になっています。ブランドセーフティとスータビリティのゴールは、明確なブランド価値に沿った安全対策をとりながら、高いパフォーマンスのコンテンツへのカバレッジを維持することです。混乱の時代において論争を引き起こす話題がニュースで急増する際には、信頼できるニュースサイトをサポートしつつも、強固な保護の基盤を確立し、ブランド価値に適合しないコンテンツからの保護を行う除外・非除外リストや回避カテゴリーなどを細かく制御することによって、きめ細かなブランドセーフティのプロファイルを作成することを推奨しています。
すべてのブランドが同じではない、ということが重要です。ブランドによってさまざまな許容度があります。例えば、最新流行のフィットネスブランドは、子供服のブランドとは全く異なるブランドスータビリティの取り組み方をするでしょう。適切なバランスのカバレッジを実現するために、ブランドは核となるブランド価値と、またどの話題や出来事がそれらの価値に適しているか、明確なガイドラインを確立する必要があります。あるブランドにとっては避けた方が良い社会的または政治的な話題があるかもしれません。
もしかすると、Black Lives Matterなど、ブランドがサポートすることを選択した社会的な話題があるかもしれません。これらの質問に対してはっきりした答えを持っていることは、広告主がメディア戦略の規模を維持しながら不適切なコンテンツを避けるために、ベリフィケーションプロバイダーと効果的に連携して適切なツールを活用していく上で有効です。
とりわけグローバルブランドにおいて他に留意すべき要素は、言語と文化の間にある微妙な点を理解することです。世界のある地域において適切なものが、他の地域では適切ではないかもしれないということです。幸いにも、DoubleVerifyのようなグローバルベリフィケーションプロバイダーでは、より粒度が高く正確な測定とブロックができるよう、APACでもおなじみの言語である英語、日本語、マレー語、タミール語、タイ語、ベトナム語を含む世界100以上の言語を考慮しています。
2020グローバルインサイトレポートで示されているように、アジア太平洋地域では現在ブランドスータビリティの事象が増加していますが、この地域ではとりわけPre-bidやプログラマティック制御に加えて、ブランドセーフティやスータビリティ戦略の採用やさらなる改善が進んでいることから、事象発生の割合は下がっていくと予測しています。さらに、広告主のメディアへの投資に対するトータルな透明性を高めるために、ベリフィケーションプロバイダーとのパートナーシップの重要性に対する理解がますます進んできています。
アドベリフィケーションにはブランドセーフティやスータビリティ以外にも様々な重要な仕事があります。広告のパフォーマンスを高めることが常に広告主にとって最重要課題だと思いますが、まずはクオリティ基盤の確保が必要です。広告がアドフラウドの無い、ブランドにとって適切な環境で配信されていることのみならず、意図した位置情報で完全に見られていることも大切です。
DoubleVerifyでは、クライアントが本当に価値のあるインプレッションを計測するために独自に設計されたAuthentic Ad™というプロダクトを提供しています。これは、広告が意図した位置情報で配信され、実在する人間により、ブランドセーフティとスータビリティが守られている環境で完全に視聴されていることを計測するものです。この業界団体により認定された高い品質基準によるキャンペーンの測定は、広告主のメディア買付に確信を与え、究極的には広告のパフォーマンスとROIを大きく高めることにつながっていきます。
このAuthentic Ad™のプラットフォームをベースに、より高い次元で広告キャンペーンのパフォーマンスを測定するソリューション、DV Authentic Attention™が開発されました。
これは、大手ブランドがキャンペーンの効果をさらに高めるための数多くの有効なインサイトを提供するものです。エクスポージャー(露出)とエンゲージメント(接触)の指標による計測で、広告主はキャンペーンのパフォーマンスに直接影響を与えながらプライバシーにも配慮したデータを活用することができるようになります。これはアドベリフィケーションにとって、単なるメディアクオリティの判定から、広告キャンペーンパフォーマンスに影響を及ぼす重要な知見の提供へという大きなパラダイムシフトであり、多くの広告主にとって画期的な機会となると考えています。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。