Facebook Audience Network、その仕組みと取り組みを聞く[インタビュー]
Facebook社の広告ビジネスというと、FacebookやInstagramが話題の中心となりがちであるが、同社はFacebook Audience Networkという、グローバルでも最大規模のアプリメディア向け広告ネットワークを構築・運営する事業者としての側面も持つ。とりわけアプリ領域で広告ビジネスを行う世界中の業界関係者から、常にその動向は注目されている。
同社でFacebook Audience Networkの日本事業を統括する只隈茂朗氏に、これまでの日本における取り組みや、現在業界で話題となっている動向への取り組みなどについて、お話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)
-日本市場におけるFacebook Audience Networkのこれまでのビジネス拡大と展開についてお聞かせください。
Facebook Audience Networkは、広告主の価値を高め、質の高いサービスによって利用者のエンゲージメントを確保することで、パブリッシャーや開発者のビジネス拡大をサポートしてきました。Facebook Audience Network をご利用いただくことで、パブリッシャーはアプリ内でFacebookの広告を表示してマネタイズすることが可能となります。広告主は、FacebookやInstagram 以外の数千に及ぶ高いクオリティの外部アプリに広告を配信することが可能となります。
Facebook Audience Networkは2014年からサービスの提供を開始しております。2016年1月にはSupership社とSSPとしての取り組みを開始させていたき、日本のアプリメディアにも幅広くご利用になっていただいております。その後2016年10月に日本語対応が可能なチームを発足し、以降パブリッシャーと直接やりとりをさせていただいております。
Facebook Audience Networkは現在では全世界で約19,000社以上のパブリッシャーにご利用いただいており、2019年にパブリッシャーにお支払いさせていただいた広告収益は数十億ドルを超える規模になっております。我々Facebook Audience Networkのアジアチームはシンガポールを拠点とし、シンガポールから日本のパブリッシャーをサポートさせていただいております。
-2020年4月にウェブ向けサービスを終了したが、その理由や経緯についてお聞かせください。
この決定は、モバイルアプリの他のフォーマットでの需要が高まっているために行われました。一方で現在は、当社のモバイルアプリネットワークをオークション制に移行することに、引き続き注力していいます。
-Facebook Audience Network は、バイサイドに対してBidding Platform を提供しているのでしょうか?
いえ、提供しておりません。しかしパブリッシャーの自社サーバー経由か、当社の規約(code of conduct)に同意いただいたメディエーションパートナー様経由で、Facebook Audience Networkをビディング形式でご利用いただくことが可能です。2020年9月時点で、以下のメディエーションパートナーを経由してご利用いただくことができます。
Google Ad Manager、Google AdMob、MAX by AppLovin、Fyber、ironSource、MoPub、Tapdaq、Chartboost
また自社メディエーションシステムをご利用のパブリッシャー様もFacebook Audience Network をビッダーとしてご利用いただくことが可能です。
-AppleによるiOS 14以降でのIDFA利用制限について、に対して、どのように取り組んでいかれるのでしょうか?
Facebook社では、Appleのポリシーの詳細が確定するのを、同業他社と同様に引き続き待ち受けているところです。現時点では、IDFAの利用に利用者の許可を必要とする機能の実装が延期されたことを踏まえ、Facebook Audience Network をご利用いただいている皆さまの事業への影響を極力抑えるため、iOS 14デバイス用のアプリにおいてもIDFAの収集を継続しています。Appleからのさらなるガイダンスに応じて状況をアップデートさせていただく予定です。
Facebook社では今後も、Facebook Audience Network での広告マネタイズをご利用いただいている数千ものデベロッパーやパブリッシャーの皆さまへのサポートに全力を尽くし、パブリッシャー向けの収益化プロダクトの構築に時間とリソースを投資していきます。
-ブランドセーフティーに対する取り組みについて、お聞かせください。
広告主やパブリッシャーは、人々を惹きつけ、魅了し、喜ばせる体験を構築するために努力されていると思います。そのため、広告配信とマネタイズに関しては、ブランドセーフティをとても重要視しています。
ブランドセーフな広告の収益化は、多くのパブリッシャーにとって重要です。Facebook Audience Network では、様々な広告の品質管理機能と広告レビューを組み合わせることで、Facebook Audience Network を通じた収益化を最大化しながら、パブリッシャーが望む高品質でブランドセーフな体験を得ることができるように支援したいと考えています。
Facebook Audience Network からパブリッシャーのアプリに広告が配信される前に、複数段階のレビュープロセスがあり、広告がFacebook社の広告ポリシーに沿っているかどうか、コミュニティ基準に準拠しているかどうかを確認します。このプロセスでは、機械学習と人間によるレビューを組み合わせて、広告がFacebook社のポリシーとコミュニティ基準に準拠しているかどうかを確認します。
広告が公開されると、人々やパブリッシャーからのシグナルを使い悪い広告を特定します。Facebook社の広告ポリシーに加えて、ブランドの安全性に対するニーズは、業界、地域、その他のビジネスの好みによって、各パブリッシャーに固有のものであると思います。そのため、パブリッシャーがアプリ上での広告配信を独自の基準に合わせてさらにカスタマイズできるように、多くのツールを構築しています。例えば、ブロックリストを使用することで、パブリッシャーは特定のアプリ、ドメイン、カテゴリの広告が自社アプリに表示されないようにブロックすることができます。
-現在拠点をシンガポールに置かれていますが、リモートで日本のパブリッシャーとの関係性をどのようにうまく構築しているのでしょうか?工夫されていることについてお聞かせください。
シンガポールにセントライズすることで多くのメリットがあるのですが、パブリッシャーには、ご不便をおかけする場合があるかもしれません。少しでもご不便を軽減するため、Messengerやメールなどを使って距離を感じさせないサポートを心がけています。
シンガポールにチームをセントライズすることで、中国や韓国などのAPACの別市場からの情報を横断的に集約し、日本のパブリッシャーコミュニティがマネタイズされる際に役立つ情報やベストプラクティスを提供させていただくことが可能になっています。
これらはシンガポールにチームをセントライズすることで可能となる一例にすぎませんが、これからも更なるメリットをパブリッシャーに提供させていただくために努めてまいります。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。