デジタル広告の健全性と広告測定の重要性- 第2回 安全な広告展開に必要な対策とは-|WireColumn
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on 2020年8月24日 in『デジタル広告の健全性と広告測定の重要性』をテーマにコラムを執筆しているCCIの安藤です。前回は、「デジタル広告の3課題と企業のリスク」について紹介させて頂きましたが、2回目となる今回は、企業のリスクをコントロールするために必要な対策方法についてご紹介させていただきます。
病気になった際にどんな病気でもこれだけ飲めばすぐに直る、という様な万能薬が無いように、ネット広告のリスクもこれさえやっていれば万全という対策は残念ながらまだ存在していません。課題に応じて対処方法も異なるというのが、現状なので、前回触れた3課題に沿って、その対策方法を見ていくことにしましょう。
まず、アドフラウドですが、広告費を搾取する事自体が目的であるアドフラウドの運営者は、あの手この手で巧妙に新たな手口を編み出しているため、これまでにも広告効果計測ツールやアドベリフィケーションの事業者によって、数多くのアドフラウド手法が発見されています。しかし、マーケターにとっては、その手口を詳細に把握することより、自らの広告費を不正な搾取からどうやって守るのか、という対策の方が重要なのではないでしょうか。アドフラウドは、広告の課金形態と深く関係していますので、課金形態別にその種類と対策方法を以下の(表1)にまとめました。
(表1)
出典:サイバー・コミュニケーションズ
このように課金形態の違いによってアドフラウドの手口も異なり、その対策方法も異なる点がお分かりいただけたかと思います。
次にブランドセーフティの対策方法について見てみましょう。
ブランド価値を棄損してしまう様な広告掲出先に広告が表示されてしまうことを防ぐには、自社での対策とアドベリフィケーションを活用した対策があり、それぞれの特徴は以下の(表2)のとおりです。
(表2)
出典:サイバー・コミュニケーションズ
この様にブランドセーフティを実現するのにもいくつもの対策方法があり、その長所短所も異なることがお分かり頂けたかと思います。更に、広告掲出先のどんなコンテンツを安全と見なし、なにを危険と判断するかは、ブランドによってその基準も異なりますので、マーケターは対策の目的(現状把握なのか?リスクの排除なのか?等)や判断基準(ブランドにとって不適合と見なすコンテンツカテゴリとはなんなのか?等)に応じた対策方法を広告会社や専門のパートナーと意識合わせした上で、対策を実施していくことが重要と言えます。
では、最後にビューアビリティの対策について紹介します。
ビューアビリティが低い広告枠への配信を制御したり、高い枠に絞った配信をするには、大きく分けると広告プラットフォームの機能を活用する場合とアドベリフィケーションを活用する場合とがあります。
主要なDSPには、ビューアビリティを向上させる設定や機能が備わっていますので、この機能を活用する事で、ビューアビリティが高い広告枠だけに絞った配信が可能になり、その結果、キャンペーンのビューアビリティを向上させる事が可能になります。ビューアビリティが高い広告枠は、一般的に広告効果の高さが相場に反映されるため単価も高くなる傾向はあります。
アドベリフィケーションを活用してビューアビリティを向上させてゆくには、前述の
(表2)に記載の「モニタリング」と「Pre-Bid」での対策があり、モニタリングの場合は、キャンペーンのビューアビリティを把握する目的の際に利用します。一方、Pre-Bidはアドベリフィケーションベンダーと連携しているDSPを活用する場合に、過去実績から、例えば、ビューアビリティ70%以下の低い枠は買い付けしない、という様な制御が可能になりますので、クリック課金などの成果課金型ではなく、インプレッション課金型での広告展開に関しては、広告費の無駄遣いを抑制する事に繋がります。
以上の様に企業がデジタル広告のリスクにどう対策してゆくべきかについてご紹介してきましたが、これらのアドベリフィケーション等での対策の意義としては、まず、企業リスクを低減できる点が挙げられますが、更にマーケター視点で見てみると、これらは、正確な広告効果測定において不可欠な対策となることにも目を向けるべきでしょう。
仮にデジタル広告の3課題に対して何の計測も対策もしていない場合、マーケターは出稿したメディアや広告プラットフォーム等のデータだけから結果を分析し、その後の打ち手を講じていくことになるのではないでしょうか。しかし、そのデータは、3課題のノイズが多分に含まれている玉石混交の状態のため、広告効果を正確に把握する事は困難です。アドベリフィケーションベンダー最大手のIntegral Ad Science(IAS)社が発表しているメディアクオリティレポート('19下半期)では、日本のデスクトップディスプレイ広告においては、アドフラウド率が2.6%、ブランドリスク(総合リスクレベル)が3.2%、ビューアビリティが58.5%となっています。
この様にアドフラウド率、ブランドリスク率、ノンビューアブル率などのノイズは、決して小さな比率ではないため、これらのノイズ値を取り除いた正確な現状把握をせずに広告効果を分析してしまうと、その後の方針を誤ってしまう可能性もあるのです。逆に、今回ご紹介してきた様なアドベリフィケーションで広告効果を計測してゆく対策を取り入れる事は、正味の広告効果のデータを把握することが可能になるため、その後の改善策を正してゆく打ち手となるのではないでしょうか。
最終回となる次回は、「”正味の広告効果”を把握して改善してゆくことの重要性」をテーマにお話しさせていただく予定です。
ABOUT 安藤 茂宏
株式会社サイバー・コミュニケーションズ
データ・ソリューション・ディビジョン エグゼクティブスタッフ
2002年にCCIに入社後、営業担当、優良媒体限定のアドネットワーク「ADJUST」の商品開発・営業責任者を経て、媒体社のプログラマティック領域での収益化サービス「IPM」を立上げ、その責任者となる。その後、PMP、アドベリフィケーションなどデマンド&サプライ双方のプログラマティック関連部署の責任者となり、2020年より現職。現在は、企業のデジタル広告の安全性を総合的にサポートしていくサービスブランド、『SAFE for Quality Ads』を立上げ、その責任者として活動中。JIAAデジタルプラットフォーム委員会委員。