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楽天が提供する次世代マーケティング

紺野氏の写真

 

ECサイトとして誰もが知る楽天の広告ビジネスの全容は、デジタル広告業界においてもこれまで広く知られることはなかった。

 

 

 

本稿では、楽天の広告ビジネスの現状とその可能性について語られた、同社 執行役員 グローバルアドディビジョン アドプランニング統括部 ディレクターの紺野 俊介氏によるイベント講演内容をお届けする。

 

出典:Rakuten Marketing Platform navi

 

楽天だからできる広告事業 購買データ起点のマーケティング

楽天に転職する前は、広告代理店で運用型広告に携わっていましたが、当時は楽天がそもそも広告をやっていることをあまり理解していませんでした。実際のところ、楽天は「楽天市場」を中心とし、楽天のユーザーと楽天エコシステムにいるビジネスのお客様を繋ぐという、狭義の意味での広告を非常に大きな規模でやってきた会社です。今日私がお話しする件と楽天の中で既に生まれている広告を合わせると、1000億円近いマーケットになるのですが、これを2021年までに2000億円にするという目標を掲げています。その中で、メディアと広告をつかさどる立場から、実際どんな動きをしているかお話しさせていただきます。

図:フルファネルの広告プロダクト

出典:Rakuten Marketing Platform navi

広告の方ですが「Rakuten Marketing Platform(=RMP)」、楽天が提供する購買データを基軸にしたフルファネルのマーケティング ソリューションというコンセプトで、今後みなさまとマーケットを作っていきたいと考えています。今までの楽天はあまりプログラマティックではありませんでしたが、これからどんどんプログラマティックに、みなさまと共にマーケットに寄与していきます。このプログラマティックなソリューションはCPC起点ではなく購買データ起点であるというのが、楽天の一つの特徴だといえます。

また、楽天にはオンラインを中心に膨大なデータがありますが、オンラインだけでなく、楽天の中のオフラインデータやパートナー様のオフラインデータ、さまざまなデータを集めて活用し始めているところです。「楽天市場」という一億以上のIDを抱える、膨大な購買データのある事業が中心にありますので、ここでもいろいろな商品を開発しています。

自社でビッグデータを蓄積・分析・開発

ビックデータ、DMPなどデジタルマーケティングにも流行がありますが、実際DMPを作った時点で、自分たちのデータだけで何かできる会社はなかなかありません。またデータは集めたものの、AIやマーケティングオートメーションなどを使って施策の実行まで持って行ける企業も少ないと思います。その中で楽天は、さまざまな事業にデータ分析チームと開発チームがいて、楽天が持つFact(事実)に基づく消費行動ビッグデータの蓄積・分析も行っています。これを自分たちの事業でずっと続けてきており、この規模は国内でも最大級だと自負しております。

ビッグデータの蓄積・分析に関しては、サービス化も始めています。楽天のデータ、リサーチのデータ、クライアント様のデータをお預かりして、当社のもつ「Rakuten AIris(楽天アイリス)」という分析の仕組みによって、ターゲットの拡張を行うことができます。他社も似たようなソリューションを持っていますが、IDベースかつ購買データで、この規模感のプロダクトは他にないと認識しています。

図:RMP - Customer Expansion

出典:Rakuten Marketing Platform navi

このサービスの大きなポイントは、楽天が国内で1億、グローバルで12億を超える膨大かつさまざまなIDベースで、さまざまな活動データを、さまざまな配信方法で提供できるということです。ディスプレイ広告、メール広告、場合によってはリアルのDMなども行うことができます。今までは、本当の意味でIDや購買データを活用したマーケティング手段はなかった。しかし楽天ではその展開を始めており、それがRMPという広告ビジネスである、とご理解いただければと思います。

位置データによる新たなマーケティング

とはいえ、持っていないデータもありますので、現在いろいろなデータを集めているところです。その手法のひとつが「Super Point Screen」というサービスです。

図:Rakuten Super Point Screen

出典:Rakuten Marketing Platform navi

アプリをダウンロードすると、ロック画面に広告が表示され、広告を見るなどユーザーがアクションを起こすと楽天スーパーポイントを付与するしくみです。その代わりにユーザー許諾を得た上で、ブランド広告との接触ポイントを提供したり、これもユーザー許諾の上で位置情報を取得して、ジオベースと呼ばれている何メートルおきという単位での広告接触も提供しています。

図:位置情報で可能になるマーケティング

出典:Rakuten Marketing Platform navi

これらを購買データにも、クライアント側のデータにもつなげると、さまざまなマーケティング活動を行うことが可能になります。みなさまのお持ちのデータに、我々のデータを組み合わせる。そうすることで、今までにない非常に高い価値を生み出せるのです。

オンラインとオフラインの融合

リアル店舗がEC化する波が続く中、コンビニ、スーパー、ドラッグストア、小売店舗など、オフラインを中心にビジネスをされている方々もまだ多くいらっしゃいます。楽天はオンラインの購買データを国内で最大級に抱えている企業のひとつですが、オフラインデータにおいても、さまざまなパートナー様と購買データをつなぐという展開を始めています。

図:オムニコマースに対応した楽天の動き

出典:Rakuten Marketing Platform navi

図:オムニコマースの活用イメージ

出典:Rakuten Marketing Platform navi

これは実店舗での活用例です。クレジットカード決済の情報は直接には取得できないので、例えばIDを付与する形でクライアント様のPOSデータと連携させます。このような新たな形で、自社で保有しているユーザーのプロファイルデータだけではカバーできなかった領域を、楽天IDと組み合わせることによって活用することが可能になります。

とはいえ、企業にとってデータを外に出すというのは非常に難しいことでもあります。そこで、「楽天市場」の中に「RMP - Brand Gateway」という商品を作らせていただきました。「楽天市場」に各ブランド様のページをお持ちいただき、そこで楽天のデータと深くつなぐというビジネスで、既に複数の企業様に導入いただいています。

図:RMP - Brand Gateway

出典:Rakuten Marketing Platform navi

新たな商品開発により、かつてはハードルが高かった、外部のみなさまのデータとの連携も可能になりました。現時点では「楽天市場」での展開がメインですが、楽天には「楽天トラベル」など多くのビジネス、「Infoseek」「楽天レシピ」などのメディア事業もあります。「楽天市場」以外でも、みなさまのお持ちのデータとこちらのIDをベースとしたデータを繋ぎ合わせ、より多くのコンタクトを可能にし、その最適化を進めていけるのではないかと考えます。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。