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シナラが描く、位置情報のマーケティング活用の現在地と今後のデザイン [インタビュー]

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ソフトバンクグループとともに、日本における位置情報を活用したマーケティングの一翼を担うシナラ。

その最新の事例と、事例に象徴される今後のサービスに関する構想について、日本におけるセールス及びマーケティングを統括する、シナラシステムズジャパン 執行役員 ヴァイスプレジデントの 松塚展国氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

デジタル広告だけではない、進む位置情報のオフラインマーケティング活用

― 貴社のプロダクトの全体像についてお聞かせください

当社のプロダクトの多くは日本からのアイディアを元に開発されています。セールスをしながらいち早く市場のニーズを汲み取りビジネス開発につなげるというような動きをここ2年ほどしてまいりました。

当初は位置情報を使ったDSPと来店計測のみでしたが、その後お客様からのリクエストに応える形で、例えばトラッキングサービスをリリースするというように、プロダクトのラインナップを広げて充実化を図ってまいりました。

広告商品はターゲティングメニューや価格も日本主導で決めて、提供をしてまいりました。

現在は、REAL AUDIENCE MARKETING SUITE?(リアルオーディエンスマーケティングスイート)というブランドの元、その傘下に各種プロダクトを置いています。広告配信、インプレッショントラッキング、Webトラッキング。これらは今年9月には管理画面をお客様に提供して自由にお使いいただけるようにする予定です。

そして今回新たに提供を始めるのが、来客者の可視化やオフラインタッチポイントからの来客を可視化するVENUE VITALICSです。正式なリリースを前に、日産自動車様と一緒に取り組みをさせていただきました。

― 日産との取り組みの概要についてお聞かせください

日産自動車様は、大型商業施設内でブランド体験型のショールームを開設しています。実際に自動車に触れてもらって興味を持っていただき、近くの自動車販売店で自動車を購買してもらうという導線を想定しています。

これまではその効果が分からなかったのですが、位置情報を使い可視化させるというのが今回の取り組みです。

送客元のショールームへの来場者数、そして半径50km以内の販売店への送客数をそれぞれ計測した結果、予想していた以上の効果があることが明らかになりました。

結果をひも解くと、ショールームによる送客効果が大きく及ぶのは、半径20km以内の販売店であることが明らかになりました。

このように、送客数がある程度分かるようになったことで、ショールームへの来場者数から、期待売上が分かることになります。そうするとショールームのROIが見えてきます。もしかするとショールームのほうが、デジタルによるプロモーションよりも効率がいいかもしれません。そうであれば、日本中にショールームを作ればいいということになります。

今回の取り組みから、ショールームの送客可能な半径は約20km圏内であることが見えてきたので、半径20kmをうまくカバーできるようにプロットしていけばいいという戦略が見えてくるのです。

このような取り組みをした背景には、Webにおける施策に対する効果の可視化は出来るけど、ショールームについては出来ていない現状において、日産自動車様よりこれについての可視化に対する強いニーズがあったということが挙げられます。

― 位置情報データの粒度・精度の観点で課題は特になかったのでしょうか?

関係者で事前に細かいすり合わせをして実施をしたこともあり、特に大きな課題はなかったです。

当社側の推計値と、日産自動車様が考える推計値とをすり合わせをして、最終の推計値を出しました。これをデジタルに当てはめると、ショールームの前を通り過ぎるのがインプレッションで、ショールームに入るのがクリック、そして販売店に来店するのがコンバージョンということになります。

これらが計測出来れば、どのパラメーターをいじれば、より効率的に売上が取れるのかが読めるようになるのです。

最近当社ではライフデータコンサルティング事業部を立ち上げました。今回の日産自動車様との取り組みのような、広告ではない領域で位置情報を使った分析サービスを提供することを目的とした事業部です。

例えば、大手チェーン店ビジネスの出店戦略を位置情報を使った分析により支援するということなどを想定しています。複数業態のブランドを持つ大手チェーン店は、毎年大量の新規出店と撤退とを繰り返しています。候補となる空き店舗が見つかった時、この物件を借りるべきかどうか、あるいは借りる場合そこにどの業態の店舗を出すかという意思決定が必要になります。

従来は担当者が現地で人通りを見て、経験をもとにどの業態にするかを判断する、そして静的な統計データをもとにして判断するという方法が一般的です。

私たちは、その店舗周辺のユーザーの行動から、例えばこのエリアではどういう趣向の人が多いエリアなのかなど、絶対数だけではなく、嗜好の傾向をつかむことが出来るのです。

― マネタイズはどのようにされるのでしょうか?

データを利用した分析サービスのフィーと、コンサルティング費用としていただく予定です。出店戦略などのより深い戦略においてもお手伝いをさせて頂くことが可能です。

目指すのはデータフラッパーゲート

― 位置情報系ベンダーは、現在広告配信に向かっているところと、分析や計測に向かっているところとに分かれてきているという流れにあるのでしょうか?

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広告に向かっているところは、あまり聞いたことはないです。むしろ各社計測に向かっているという印象です。当社はまさにその領域に向かっています。

当社ではポジショニングを今後変えていこうと考えています。現状は位置情報を活用したサービスを提供していますが、今後は様々な生活者情報を活用したサービスへと向かっていく予定です。

そこでポイントとなってくるのは、法令順守はもとよりそれよりもセキュアであることです。また、データを高速に処理することも肝になってきます。

当社はそのようなデータを安全に処理する、フラッパーゲートへと向かっていこうと思っています。

― 位置情報に特化するということではなくなっていくということですね?

はい、中期的にはその通りです。データのゲートウェイになり、当社のシステムを通したデータであれば、安心・安全が担保されるというようなソリューションとして提供をしていくというものです。

当社自体はデータを持たず、データを提供するデータプロバイダーと、それを利用する広告主企業のためにデータの器を提供するという形です。その器にデータを入れれば、プライバシーを保護した形で、色々な企業が利活用することが出来るというようなデータプールです。このとき、データ自体はお渡しせず、ユーザーを匿名化した状態で、例えば広告配信などに利活用をしてもらいます。

将来は位置情報にこだわらず様々な企業に様々なデータを入れていただき、安心・安全な環境下で多くの広告主が有効活用することが出来る、そのような新しい構想を日本独自で描いています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。