サプライサイドの課題解決に向けたPubMaticの取り組み [インタビュー]
SSPグローバル大手のPubMatic。同社カントリーマネージャーに2017年10月に就任したニコラス(ニック)・コバック氏に、同社の直近の取り組みや、サプライサイドでマーケットが取り組むべき課題や今後について聞いた。
(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)
ラッパーソリューションの普及を支援
― PubMaticに参画されて約3カ月が過ぎました。これまでを振り返っていかがでしょうか?どのようなことに着手されましたか?
コバック氏 就任直後のATS Tokyoで発表したように、いまグローバルで話題になっているのは、ラッパーソリューションについてです。ラッパーソリューションはPrebid.jsに基づいており、これを使うことによって媒体の透明性を確保し、コントロールをすることが出来ます。
今回の就任にあたり、色々な媒体社を訪問しましたが、その際にもこのことを皆様にお話をさせていただきましたが、皆さまには高い関心を持っていただくことが出来たという感触を得ました。
― 媒体社と話をして、今どのような課題を持っていると感じましたか?
コバック氏 ヘッダービディングが普及していますが、媒体が導入するソリューションの選択肢が非常に増えています。今まではタグのものもありましたが、Prebid.jsに基づいたラッパーソリューションであるPubMaticのOpenWrapをはじめ、GoogleやAmazonのヘッダービディングソリューションなども媒体社の選択肢に入ってきています。媒体はどのソリューションを今後どのように選択するかを検討する必要があります。
従来のタグベースのソリューションは、複数のプレイヤーのタグをどうオペレートしていくかという考え方でした。ヘッダービディングでは、1つのソリューションが媒体社とつながり、そこに複数の業者が入り込むというのが基本です。複数の会社と契約するよりも、1社のテクノロジー、ラッパーを契約して複数のデマンドが入っていくという形になるはずです。ですが、媒体社によっては、例えばデバイス(デスクトップかモバイルか)ごとに、導入するソリューションを使い分けているケースも見られます。
業界の課題とPubMaticの取り組み
― 最近感じているサプライサイドの課題のついてお聞かせください。またその課題解決に当たり、PubMaticはどのような取り組みをされていますか?
PubMaticでは今、「Let’s be clear」というキャンペーンを、日本を含むグローバルで展開しています。日本では今ビューアビリティの課題がちょうど話題になってきています。広告取引の透明性に関する話題はビューアビリティに続き、今まさに話題になり始めたというのが現場の印象です。透明性について気にされているのは、ブランド広告主です。ブランド広告案件を受注するためには透明性やクオリティーを高い水準で維持しなければなりません。ブランドのキャンペーンのためにはこのことが必要です。
しかし、日本のプログラマティック市場はまだリターゲティング広告プレイヤーが中心の市場であり、多くの在庫は透明性が高い水準にあるとは言えません。とは言え方向性としては透明性を高めるほうに進んでいると思います。ブランドのキャンペーンのために重要だからです。
また、もう一つ大きな業界の課題であるアドフラウドに関して。PubMaticはアドフラウドが判明した場合、バイサイドに対して補償、返金をすることにしています。米国ではPubuMaticがこのポリシーを発表して以降、それが業界のトレンドの一つになっています。
2018年の業界とPubMaticの取り組み
― 2018年のアドテク・プログラマティック業界はどのようになっていくでしょうか?
アドフラウドについて「返金する」といことは媒体に対していろいろな影響があります。アドフラウドがよく出ている媒体に関しては取り扱わないなどの決めごとをすることになりますから、これまであったポイントサイトなどのビジネスモデルが、シビアな状況になっており、2018年にはこのビジネスモデルの変化が課題となってくるのではないかと考えます。広告在庫はよりクリーンに、アドフラウドがなく、ビジビリティの高いものになって落ち着いてくると思います。また2018年は、GoogleのExchangeBiddingやAmazonの参入により業界は大きく変わってくるのではないでしょうか。
― 2018年のPubMaticの日本での取り組みについてお聞かせください。
コバック氏 1つ目は、「Let’s be clear 」キャンペーンの元、アドフラウドへの対策をして、よりきれいな広告在庫をどのように作っていくかについて、取り組んでまいります。これを普及させて当社のラッパーソリューションであるOpenWrapを使っていただけるように働きかけをして、透明性の高い管理とコントロールの提供を心がけます。
2つめはパートナーシップです。2018年は、より多くのプレミアム媒体とのリレーションシップを進めてまいります。これまでのお付き合いも大切にしながらバランスを取っていきたいと思っています。
また、動画広告に関しても、今後取り組んでいくテーマです。サーバーエージェントのAbema TVがトレンドになっていますし、2018年12月には4Kのテレビ配信が始まります。オリンピックを控えてテレビの買い替え需要も高まりますし。動画のトレンドも見ていかなければと考えています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。