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セプテーニが語る動画マーケティングの最前線-第二回:「動画広告に欠かせない3つの◯◯力とは?クリエイティブに求められる役割と価値」|WireColumn

インターネット環境におけるデバイスの変化や接触頻度の増加にともない、オンライン動画広告が果たす役割は様々な広がりを見せています。それにあわせて、ダイレクトレスポンスマーケティングのみではなく、潜在層に対するブランド認知・サービス認知を深めるための動画広告を用いたコミュニケーションについて、広告主から相談いただくケースがここ1、2年で急増しています。

そこで、第二回目の今回は「動画広告に欠かせない3つの◯◯力とは?クリエイティブに求められる役割と価値」と題し、オンライン動画広告クリエイティブにおけるコミュニケーションプランニングやPDCAサイクルの回し方、表現の可能性について、主にブランディングの視点からご紹介します。
※今回は便宜上、ブランド認知・サービス認知を目的とした広告をブランディング広告という言葉で表現させていただきます。

広告主の目的達成のために必要な3つの「◯◯力」

昨今、テクノロジーの発展により、スマートフォンが1台あれば欲しい情報を簡単に入手できるようになりましたが、それは言い換えると、一人ひとりが自ら情報を取捨選択することが当たり前になっているということでもあります。これにより、広告主が意図して発信した情報を「ターゲットに見てもらう」というハードルは、年々上がっていると言えるでしょう。

「広告が無視される時代」というフレーズは、もう何年も前から使われていますが、人間関係で置き換えて考えてみると、自分を無視する人(嫌っている人)に対して、自分の魅力を一方的に話しても当然耳を傾けてもらえません。どのようなタイミング・方法でアプローチすれば話をきいてもらえるのか、まずはここを考える必要があります。
広告においても一方通行でスルーされるものではなく、ターゲットがつい見てしまう「真の視聴」を可能にする動画広告を制作することが非常に重要だと考えています。

前回の記事「何気なく動画広告をまわしていませんか?動画広告の本質的な価値を見るために」でも触れているとおり、広告主のオンライン動画広告の実施目的はいくつかに分類されますが、動画を制作する上ではすべての目的に共通する、以下3つの力が重要と言えます。

①ターゲットの心理・行動変容を促すコミュニケーションプランを導くための「仮説力」

②クリエイティブ変数を読み解く「分析力」

③意図した動画表現をかたちにする「実現力」

①仮説力:ブランディングのコミュニケーションプランニング

ブランディングにおけるコミュニケーションプランニングでは、ユーザー・市場分析、競合分析、自社分析などいわゆる「3C」と呼ばれる広告主を取り巻く環境の分析を行い、ターゲット設定、動画広告の訴求方法など多岐にわたる要素を踏まえ戦略を考えます。中でも、ターゲットユーザーに伝えるべき訴求の仮説を立て、媒体の特性に合わせて目的達成確度の高い表現をすることがとても重要です。

目的達成確度を高めるための仮説設定と表現方法

ブランディング目的の動画では、今までリーチできていなかった人(ターゲット)や商品・サービスが訴求対象となります。つまり「ターゲット」「情報」「伝え方」のいずれかの"新たな要素"があるクリエイティブを開発することになるため、ダイレクトレスポンスマーケティング以上にユーザーの共感(自分ごと化」を得るコミュニケーション)が必要です。

共感を生むクリエイティブを制作するためには、代理店が広告主と同じもしくはそれ以上に広告主を取り巻く環境を理解し、状況に適したコミュニケーション戦略を立てることが求められます。

そこでセプテーニでは、リサーチに特化したチームが、広告主を取り巻く環境を様々な視点でリサーチしています。またソーシャルリスニングの専門ツールも導入し、商品・サービスや市場環境を取り巻くユーザーインサイトのデータによる可視化に取り組むなど、商品の訴求ポイントやターゲットインサイトの仮説立てを行っています。

また、主要媒体ごとにリーチ量が多い動画を収集し、そこから媒体の特性上視聴されやすい動画、すなわち認知・広告想起の態度変容を狙いやすい動画のパターンを導き出しています。

リサーチから導き出した商品の訴求ポイントやターゲットインサイトと、媒体特性から導き出した表現方法の仮説を掛け合わせて、広告主独自の新しいクリエイティブを生み出す。この発想を仕組み化することによって、目的達成確度の高い表現方法を追求しています。

(図1)

図1

一方で、ユーザーになりきって考える感覚的アプローチも重要視しており、「本当にこの仮説で態度変容が起こせるか」を自問自答し続けることで机上の空論に終わらないコミュニケーションプランを常に意識しています。

②分析力:仮説と結果の相関性

オンライン動画広告を運用するにあたり、広告効果を分析し、次のクリエイティブ、ないしは次のプロモーションで活かせる要素を見つけ出すことは、PDCAサイクルを回す上でとても重要です。

オンライン動画のPDCAサイクルの回し方

動画広告は多数の要素を含んでおり、静止画広告と比較してPDCAサイクルを回すことが難しいと思われがちですが、セプテーニではすべての動画クリエイティブの構成要素を「言語化して分類」することで、目的達成に対して何が有効で、何が課題なのかを分析しやすくしています。

(図2)

図2

仮説に基づいて作成したクリエイティブの中で、これらのどの要素が目的達成に相関しているかを、配信結果と照らし合わせて分析することで、それを元にPDCAサイクルを回すことが可能となります。こうした考え方には、成果とクリエイティブを常に紐づけて考えるダイレクトレスポンス領域で培われたノウハウが活かされています。

ブランディング目的の動画広告配信では、TVCMとオンライン動画を同時期に配信するケースがありますが、この場合も同様にクリエイティブの構成要素を言語化・分類し、分析します。そして、オンラインとTVCMの双方で認知・想起がおこなえるコミュニケーションプランニングを設計していきます。

最近では、ユーザーの初回接触メディアが必ずしもTVであるとは限りません。オンラインの接触率が多いユーザーからすれば、オンラインで動画広告を見た後にTVを見て、「YouTubeで見たあの商品だ」となるケースも往々にしてあると考えられます。

そのため、どちらが初回接触になってもいいように、オンライン動画クリエイティブの構成要素の一部をTVCMとあわせる形に変更し、パターン違いで検証したり、TVCM動画をオンラインメディアで見られやすい形にカスタマイズしたりします。
このように、時にはオンラインでの広告配信結果を元に総合代理店と共同でTVCM制作を行うなどして、効果の高い動画クリエイティブを追求していきます。

③実現力:意図した動画表現を以て、真の動画視聴を実現

ブランディング目的の動画クリエイティブにおいては、「思わずユーザーが見たくなる=真の視聴を実現できる動画」を制作することが重要です。

WEB上で見られやすい演出やシナリオを基軸にしたコンテンツ制作

「思わずユーザーが見たくなるような動画」を制作するにあたり、セプテーニでは下記のポイントを重視しています。

1.初めて見るような新しい表現、演出、シナリオ
2.時代を捉えたテーマ(トレンドも可)

動画のプロットやシナリオを具体的にする前に、この1・2を念頭におき、テーマや登場人物を設定することがとても重要です。

例えば、ある1人の女の子が苦難を乗り越え、好きな男の子に告白するという物語のプロットを先に書きあげたとします。少々インパクトに欠けるため、後から「主人公を異色肌ギャル(※)でAIの設定にしよう」と付け加えるよりも、異色肌ギャルでAIの子が人間に恋をしてしまい、人間とロボットの壁を越えて恋に落ちる物語、という前提でプロットを組み上げていくほうが、細部に演出が行き届いた、面白い映像を考えることができます。
上記事例の中では、1=異色肌ギャルの設定 2=AI という構成になっております。
もちろん、シナリオや登場人物をある程度固めた後に、1や2を踏襲することも可能ですが、世界観や登場人物の細かい設定に矛盾が起こりやすくなります。設定に矛盾があると、視聴ユーザーに違和感(=情報伝達に必要のないノイズ)を与える映像になってしまいます。そうならないためにも、1・2を先に決めることで、プロット作成をスムーズに行うことができます。

※肌をピンクやみどりなどの鮮やかな色にメイクする女の子のこと。

ユーザー視点を重視したコンテンツ構築

次に起承転結の構築、つまり制作チーム内でプロットのすり合わせを行います。動画広告にはある程度、視聴されやすい尺(長さ)の傾向がありますが、本当に見られるコンテンツであれば、尺はあまり関係ないと思っています。

そのため、コンテンツを決める前に制約を設けすぎず、まずはプロットをしてみて、いるもの・いらないものを決め、その後に実際のシナリオをおこしていきます。
ここで非常に重要なのは"ユーザー視点"を常に考えることです。

「①仮説力:ブランディングのコミュニケーションプランニング」で述べたように、ブランディングを目的とする場合、そのブランドやサービス・商品を知らない(興味がない)ユーザーへのアプローチとなるため、ユーザーに伝わりやすい形に魅力を変換し、共感を生むクリエイティブを作ることが求められます。
そのために、まずはブランドやサービスに対して好意的になってもらうために、ユーザーが見たくなる"フック"を作り、それを軸にストーリーを肉付けしていきます。

同時に、いらないものもしっかりと判断していきます。制作者としては、撮影した全カットを入れたくなりますが、それでは要素が多すぎる映像になってしまいます。広告はアートやインディペンデント映画ではないので、自らのエゴを消し、ユーザーファーストで考えなければなりません。

良い動画を作るための制作フローの構築

動画制作では、非常に多くの人が関わり、分業して一つのモノを作り上げていきます。
時間とコストをかけるほど、関わる人の数や議論の時間、制作期間が増え、高品質な動画を作ることができるかもしれません。
しかし、限られた条件の中でも、ユーザーが興味をもちやすい演出、本質を見極めたプロット、そこへの肉付けの工夫をすることで、ユーザーの見たくなる動画を作ることは可能です。

こうした動画制作を実現するために最も重要なことは、広告主と代理店が一緒に考え、議論していくことです。意見を出し合うことで、双方が心から納得できる動画が制作できると思います。

セプテーニでは、数年前から広告主とディスカッションし、決定した内容を実現するフローづくりに取り組んできました。細かな調整にも柔軟に立ち回れるよう、内部に撮影から編集まで実行可能な組織を設けるとともに、信頼できる複数の外部パートナー企業と連携し、より多くの表現の実現に向けて取り組んでいます。

今後もデバイスの変化や市場の拡大に伴い、動画広告クリエイティブにおいても様々なアウトプット方法が生まれると思います。セプテーニでは、これからも「仮説力」「分析力」「実現力」を磨き、広告主と協力しながら、ユーザーにしっかりと届く「真の動画視聴」を実現していきたいと考えています。

ABOUT 神蔵 麻鈴(かみくら まりん)、 大久保 洸平(おおくぼ こうへい)

神蔵 麻鈴(かみくら まりん)、 大久保 洸平(おおくぼ こうへい)

神蔵 麻鈴(かみくら まりん):写真左
Septeni Japan 株式会社
ブランド広告本部 コミュニケーション戦略部 クリエイティブディレクター

2013年セプテーニ入社。入社して以来、デザイン・イラスト、ディレクション、アートディレクション、プロデュースとあらゆる立場でクリエイティブ業務に従事。業種を問わず、幅広い広告主のダイレクトマーケティングプロモーション課題解決や、クリエイティブチーム全体のクオリティコントロール、新広告媒体の拡販浸透プロジェクトなどを担当。現在は主にブランディングを目的としたプロモーションのプランニング・制作に携わっている。

大久保 洸平(おおくぼ こうへい):写真右
Septeni Ad Creative 株式会社
動画撮影開発室  プロデューサー/ディレクター

2012年セプテーニ入社。2年間クリエイターとして経験を積んだ後、動画広告のクリエイティブ組織の立ち上げに従事。ダイレクトレスポンス市場におけるスピーディーな動画広告提供を目指し社内組織、ワークフローの構築に携わる。その後、クリエイティブ制作に特化した子会社Septeni Ad Creative株式会社の動画撮影・制作部門の立ち上げに参画。現在は、東京と札幌を拠点にディレクターとして動画制作に携わっている。