×

注目はミレニアル世代-Criteo、「The Asian Digital Traveler Report」をリリース-

CriteoはEuromonitor社と共同で調査した「The Asian Digital Traveler Report」を発表した。このレポートからは、デジタルに精通した新世代のデジタルトラベラーを対象に、旅行業者は予約獲得の促進をどのように考えるべきかを読み取ることが出来る。

CRITEO株式会社シニアセールス 河野 正寛氏にその内容を解説いただいた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

モバイルオンライン旅行市場は成長局面に

2016年、日本人は2,330万人が海外旅行を、2億9,920万人が国内旅行を楽しみました。しかし、2011~16年の平均上昇率は海外旅行が0.5%、国内旅行が0.8%とほぼ横ばいです。

日本でのオンラインでの旅行商品の売り上げは、2011年がおよそ2兆9,700億円で2016年が5兆3,500億円でした。平均売上成長率は12.5%と、全体の売り上げにくらべてオンラインでの売上は伸びています。また、モバイルに限れば、2011年に4,700億円が2016年には1兆6,900億円と、29%の平均売上成長率でした。このように、旅行商品におけるオンライン予約の売上は伸び続けており、ことモバイルに関しては著しい成長が見られます。

図1:モバイルによる旅行売上は急増

日本では2020年までにスマホ普及率は8割になる見通しで、モバイルからの売上平均成長率は2017~2020年は12.3%となる見込みです。また、2020年までにオンライン旅行予約におけるモバイル比率は、4割になるだろうと予想されます。

図2:日本では2020年までに、オンライン旅行予約10件に占めるモバイルでの予約は、4件にまで達することが予測される

APAC諸国でのオンライン経由での旅行売上に占めるモバイルの割合は、2011年が8%、2016年が45%で、2020年には58%になると予想されています。中国では2011年に63%、2016年には74%。今や4人に3人という割合です。

図3:モバイルによる旅行売上

ミレニアル世代に着目

写真1

モバイル経由での売上増が予想されるなかで、重要なマーケティングのポイントは、課題を理解してクリアするために旅行者をセグメント別に考えるところにあります。

今注目されているのがミレニアル世代です。1980年代、90年代生まれで、デジタルの進化により、絶えず進化し続けている世代だといえます。この世代は、ポケベル、ガラケー、スマホと進化していくのを思春期に体験しているのです。

PC、モバイルの売り上げが伸びているところに焦点を当ててみると、ミレニアル世代がデジタルトラベラーとしてPCやモバイルで予約をすることが顕著だとわかりました。彼らがこれからのスマホでの予約市場を牽引にしていくと考え、注目しています。

ミレニアル世代の44%は旅行商品の検索をスマホで行っています。しかし。そのうちの6割はアプリではなくブラウザを使っているのが特徴です。

ミレニアル世代の旅行には「夢見る(どこへ行きたいか空想)「検索」「訪れてシェアする」というステップがあります。

「夢見る」とはつまりどこへ行きたいかを考えることです。

図4:アジアの多くの国における旅行需要は、国内旅行が大部分を占める

海外旅行を検討する割合は日本では8%にとどまりますが、他のアジア各国では多くを占めます。

図5:大半のアジア諸国では、アジア圏内が主な旅行先

海外となったときに、実際にどこへ行くのかという点については、日本の1位はアメリカですが、ほとんどの国でアジア圏内への旅行が上位を占めます。

旅行先決定は家族や友人知人、旅行商品の購入はコスパが大きく関与

図6:旅行に関する意思決定に、最も大きな影響を与えるのは家族と友人知人

旅行先の意思決定は36%が家族や友人の口コミの影響を受けると回答しています。なお、日本人が旅行商品を購入する際に大きな要因になるものは、価格と予算の比較です。これをコスパとして考え、それに影響するのは何かを考えました。

旅行先に関する情報を検索するタイミングについては、アジア太平洋地域の9つの国では「旅行先でホテルを検索する」人が43%、「旅行先で予約する」人が34%いました。旅行先での検索、予約が多いのがインドでした。インドはモバイルファーストの国なので、その結果だと考えられます。

スマホ検索はアプリか?ブラウザか?

スマホ検索の際にブラウザとアプリを使うかという点に関しては、アプリを使う割合が最も少ないオーストラリアが19%、最多の中国が81%となっています。日本はブラウザが57%と、まだブラウザのほうが多いようです。

また、旅行先でのアクティビティを検索する際にどのデバイスが多いかについてですが、スマホはまだ少ないです。旅行のオプションを検索する際に10人に7人は、PCやタブレットを使用しています。スマホのアプリを使っているのは、全体の13%に過ぎません。

旅行者の20%が、リターゲティング広告の影響を受けている?!

図7:旅行者のほぼ5人に1人が、デジタル広告に興味を持ち、影響を受けている

なお、リターゲティング広告を見ているユーザーは88%となっています。その中で、1回以上クリックしたことがある人が64%いて、影響を受けた人は20%いました。広告を見せることが旅行商品の購買につながっているといえるでしょう。

検索はスマホから、予約はPCからが一般的

図8:検索時に最もよく利用するのはスマホだが、予約はデスクトップから行うのが最も一般的

予約に関して、検索はスマホから行って、予約はPCから行うのが一般的なようです。これは顕著に表れています。スマホでの予約が好まれない理由として、半数の方が「大きな画面のほうが操作しやすい」と回答しています。

価格で比較すると、日本人の旅行者は6万3,999円以下であればスマホで予約決済します。比較的少額の決済であればスマホで行っているとわかります。

旅行先においてスマホでどのようなアクションをとるかを調べると、外食に関する検索は69%と非常に高い割合で行っています。

現在、旅行から帰ってきたらSNSで体験をシェアするのが一般的ですが、日本人旅行者は、まだEメールが多ようです。ですから、戦略的には、両方を考えておいたほうがよいでしょう。

2020年に向け、Criteoがお手伝いできること

図9:APAC地域における2020年のオンライン旅行市場の規模

APACの2020年の市場規模は4,460億米ドルに上ると予想されています。2016年からは72%の成長で、そのうち76%がモバイル経由の売り上げになると考えられます。

日本の旅行市場は微増ではありますが、デバイス、プラットフォーム、年齢にまたがってユーザー体験を提供することで、さらに多くの予約獲得ができるようになるでしょう。

写真2

具体的には「ワンストップ型旅行アプリ」の提供「旅行先での体験を考慮に入れたロイヤリティプログラム」をコストに敏感なユーザーにダイレクトに訴求していくことが重要になっていくと思われます。

2020年に向け、Criteoはすべてのインプレッションに対してパーソナライゼーションを行います。そのユーザーが自宅のPCで見ていても、会社のPCで見ていてもスマホやタブレットで見ていてひとりのユーザーとして理解し、パーソナライゼーションを行っていきます。

さらに、パーソナライゼーションをしながら、入札予測をします。検索をスマホでしていても、予約はPCでするかもしれないと予測をして、実際に入札をしていきます。
こうしたインプレッションをすべてのユーザーに対して行います。そうすることで、実際にタッチポイントを増やしていくことが可能です。

「カスタマー・ジャーニー」という言葉があるように、ある一人のユーザーがどの段階にいて、どのようなデバイスを使って旅行商品を見て予約しているのかを、弊社はこれからもすべてのOS、デバイス、プラットフォームをまたいで分析し、適切な情報を提供し続けていきます。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。