MOZZ TOKYOが切り開く短尺動画広告の世界 [インタビュー]
サイバーエージェントグループ会社でブランド向け動画クリエイティブ制作会社のMOZZ TOKYOはYouTube向け6秒動画広告Bumper (バンパー)に特化した動画制作パッケージ「6’s(シックス)」の提供を開始した。
サ―ビス提供開始の背景と、サービスの内容、同社のクリエイティブに対する取り組みについて、代表取締役社長の大岩裕和氏にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)
デジタルオリジナルの広告素材が増加
― 貴社では最近はどのようなブランドの案件か多いのでしょうか?
大きく3つあります。
消費財、大手電気機器、化粧品を取り扱うメーカー、クレジットカードなどの金融系のサービス、エンタメ系企業の案件を多く取り扱っています。
― 最近のブランド企業の動画クリエイティブに関する特徴やトレンドをお聞かせ下さい
デジタルオリジナルで素材を作らなければならないという認識が進んできており、出すメディアやターゲット、訴求メッセージなど、変数がいろいろある中で、1本だけではだめで、変数を掛け合わせたパターンを数多く作って、よいものを残していかねばなりません。ダイレクトで行っていた基本的な勝ち方は、ブランディング広告をやる上でも引き継がれているように感じています。
クライアント側でも「デジタルではデジタルの動画をつくる」という認識が出来つつあり、YouTubeならYouTube向けに、FacebookならFacebook向けにクリエイティブを用意することの重要性に対する理解が進み、Facebookならフォーマットも縦型や正方形、カルーセル、YoutubならTrueView、Bumperが代表的ですが、これら広告プロダクト向けの動画クリエイティブの作り分けも行われるようになってきました。
こういった取り組みについて、クライアントも理解してくれてはいても、アウトプットがどういう形になるかが伝わりにくいものです。なので、ケースによっては、先にクリエイティブサンプルをつくり、それを持っていき目指しているアウトプットを具体的にイメージしてもらうこともやっています。
クリエイティブごとのブランド管理に課題
― また、その中でどのようなことが課題とされていますか?
理想はメディアやターゲットごとにクリエイティブを作り、それに合わせて配信することです。クライアントの課題としては、そうやってクリエイティブのパターンが増えてきた時、ブランドの管理が本当に徹底できるのかということです。
クライアントによって、クリエイティブごとに「そういう色使いはNG」「この素材の上にこういう文字情報は載せてはいけない」というのはもちろんありますし、自動車や化粧品などではしっかりとした世界観がありますから、そういうものを担保しながら、決定してから配信までの期間内にこれをやりきれるのかということが問題です。
そのほか、本数をたくさん作りたいけれど、使うことのできる素材数が少ないという課題もあります。
■「6’s(シックス)」クリエイティブ例
【template1_3pictures】
静止画像3枚+文言2つのみで制作可能
【template2_apps】
UI画像4枚+文言3つのみで制作可能
6秒広告に最適なクリエイティブをテンプレで提供
― 今回リリースしたサービスについてお聞かせください
YouTubeが提供を始めたBumper、「6秒動画」の存在が広く知られるようになっており、出稿を実施しているクライアントが増えています。一方で、Bumperに最適な6秒のクリエイティブを持っている企業様は少ないです。
15秒のテレビCMを切ればよいかと言えばそうではなく、著作権などの問題が絡んできますし、伝えたいメッセージや訴求という点でも、6秒には6秒の最適な形があるので、そこで、6秒動画を簡単に作れるようにしたメニューを開発しました。
当社では、クリエイティブをつくるための6秒の構成テンプレートをつくっており、静止画を2枚くらい準備してそこに当てはめれば完成します。これならスピード感を持って、コストを抑えて制作することが出来ます。低コストなのでクリエイティブのパターンも沢山作れます。
また、撮影を行い、Bumper向けのオリジナルクリエイティブを作りたいというニーズに対しても、オプションメニューをご用意して対応をしています。
実績やサンプル数はいま増やしているのが現状ですが、効果の高かったクリエイティブの要素はテンプレートに反映させています。実績と知見を蓄積していって、「このテンプレートでやれば効果は上がるはずだ」と言い切れるようにするのが理想です。
クリエイティブ最適化ノウハウが今後の肝
― 今後企業の動画広告のクリエイティブの使い分け(短尺と長尺)は、どのようになっていくと思われますか?
長尺と短尺については、今後使い分けも組み合わせも両方出てくると思います。いまは15秒というフォーマットがあって、そこから長尺と短尺という振り幅があるのですが、それがどこに向かうかはまだわかりません。ただ、今後それしかやらない、ということはないでしょう。短尺が一般的になったとしても、だからとしても揺り戻しとしての長尺があり、伝えるメッセージや世界観によって使い方は違ってくるはずです。
今後も出先となるメディアが増加する流れに合わせて、尺の長さや形などファーマットが増加することも間違いありません。
その最適化のノウハウは当社のようにクリエイティブを作っている会社や代理店にとって競争力を決めるポイントとなるのではないでしょうか。
ブランドに特化した新しい動画クリエイティブを
― 今後どのようにビジネスを広げていこうと考えていますか?
当社はブランド向けの動画クリエイティブを作る会社として生まれましたが、デジタルの時代において、新しいフォーマットや切り口に強みを持っていきたいです。
既成概念に縛られず、企業のブランディングに特化した新しい動画クリエイティブの世界を切り開いてまいります。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。