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APACのパブリッシャーがSSPコードを利用することによる問題点

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

APACのパブリッシャーは、さまざまなSSPから複数のコードを引き続きサイトに利用しており、ページの読み込みや広告の待ち時間でのレイテンシー(遅延)を招いている。彼らはこの状態から離れ、ヘッダー入札を利用し始める必要があると、C1Xのアジア太平洋及び中東アフリカのマネージングディレクターで上級副社長Rammohan Sundaram氏は語っている。同氏は、この地域におけるヘッダー入札の意識はまだ初期段階ではあるが、SSPとの接続時の標準的なプラットフォームになり成長をしていくだろうと考えている。

ExhangeWireによるインタビューで、Sundaram氏はこの地域のパブリッシャーが広告主のビューアビリティ、ブランドセーフティやアドフラウドなどの主要な問題に対応するためになりをすべきかについて語ってくれた。

― APACのパブリッシャーが現在直面している問題はどのようなものですか?

この地域は、各国におけるデジタル環境の成熟度が異なる多様な市場です。規模の面では、香港、オーストラリア、日本を含む中国などが成熟した市場にあたり、インドネシア、マレーシア、ベトナム、タイ、フィリピン、シンガポールなどの新興市場は、他の主要市場と比べてそれぞれ異なる課題を抱えています。これは主に、特に人口及びモバイルの成長によるもので、顕著な例としてはインドネシアです。デスクトップで失われた広告在庫に対しての価値は、モバイルで補完されることはありません。これは新興国では多くのサプライがあるため、eCPMがモバイルに比べて低い点に理由があります。

したがって、パブリッシャーにとって最大の課題は、より良いeCPMを継続的に探し出すことです。テクノロジー企業は広告ミックスを検討し、強力かつ全てのインプレッションにおいて価値をもたらすような様々なソリューションを提供します。こういった状況下において、使い勝手が良く、広告主が探しているものを提供できる、複数のツールを提供できる点が不可欠となります。

― ヘッダー入札はどのような役割を果たしますか?そして、APACのパブリッシャーはどのようにヘッダー入札を利用し始めているのでしょうか?

一部のパブリッシャー、特にアジアで最も人気のあるパブリッシャーは、まだSSPからの複数のコードを自社のページに含んでいます。これによりページが遅くなるため、ウォーターフォールアプローチにおいてはヘッダー入札と同様の結果を得ることができません。ヘッダー入札コンテナがSSPとの接続におけるスタンダードな接続方法になるにつれて、この傾向は変化を見せています。この傾向は、パブリッシャーの理解が深まり、広告費用がオンラインへの投資が増えるに従い、改善されています。

ヘッダー入札機能は、ページ上のタグ数を最適化し、ウォーターフォールモデルと比較して、全てがラッパーの一部であるため、広告の待ち時間と読み込み時間を短縮します。ページサイズは最適化され、消費者の体験は円滑になります。

Photo

Rammohan Sundaram氏
C1X社 APMEA MD & SVP

全てのデマンドが同じページに存在し、同時に入札されるため、パブリッシャーのeCPMは大きく改善します。平均して、ウォーターフォールに比べてヘッダー入札のイールドが20%〜50%上昇します。

アジアにおけるヘッダー入札の意識は、現在のところ非常に初期の段階にあります。状況は徐々に改善しており、パブリッシャーは多くの市場でPrebid.jsのようなヘッダー入札ラッパーをテストしています。 C1Xのケースでは、ヘッダーの入札機能の利点をAPAC市場のパブリッシャーに教育を行い、パブリッシャーがより優れたイールドを獲得し、遅延のない状況でデマンド入札のソースを用意するように変化しています。一方で、APACの小規模なパブリッシャーは、いくつかの課題に直面しています。例えば、ページにヘッダー入札タグをテストして実装するためのテクノロジーに関する専門知識はありません。

アジアで運用されているグローバルパブリッシャーは、この地域の在庫を管理する本格的なプログラマティックに関するチームを有し、他のパブリッシャーにとっての見本となっています。

― APACのパブリッシャーとの取引において、プログラマティックはどのような利益を提供し、どのような問題が存在するのでしょうか?

ヘッダー入札を採用した大手のパブリッシャーにおいて、収益が若干増加している一方で、状況はインベントリへの入札を行うデマンド側事業者が多い米国や英国などの状況とは異なります。

多くのパブリッシャーにおいて、プログラマティックは未だにレムナントを中心とした廉価なインベントリとして認知され、実際にeCPMが非常に低く抑えられています。この点は、多くのパブリッシャーがヘッダー入札アダプタを採用し、プログラマティックで直接的に在庫のやりとりを行い、プログラマティック取引による収益化が行われるようになることで変わっていくでしょう。

― APACでは、いくつかのモバイルファーストな市場が存在しますが、パブリッシャーはどのように消費セグメントに進出してくるのでしょうか?そして彼らは更にイノベーションや改善が必要なこの環境でどのようなことを行なっているのでしょうか?

パブリッシャーはウェブサイトをアップグレードして、適応性に秀でたページ作りとレスポンシブサイトに対応した広告サポート開始しています。彼らはまた、モバイルにおけるプレゼンスを高めるためアプリの展開を行なっています。このようなアプリの使い方は、パブリッシャーが扱うジャンルの種類によって異なります。スポーツ、金融、ニュースなどは、他のスポーツに比べて採用率が高いようです。

― アジアの広告主が現在最も心配している点はどのようなことで、パブリッシャーはこの問題の解決のために何をしているのでしょうか?

ビューアビリティ、ブランドセーフティ、アドフラウドに関して最も懸念を抱いています。より多くの広告主がキャンペーンのビューアビリティの観点から、最低限の基準値を定めていますが、パブリッシャーはこれを市場の標準として採用することになります。

パブリッシャーは、多くのDSPがサポートしているRTBキャンペーンにおける第三者検証の結果を公開する必要があります。また、ビューアビリティやブランドの安全対策、不正防止ツールを備えたプレミアムバイイングをサポートする必要があります。一部のプレミアムパブリッシャーは、視認可能なインプレッションのみをカウントすることによってビューアビリティの問題に対処しています。業界としてはまだスタンダートを設定するには、まだまだ多くの問題点を解決する必要があります。

モバイルファーストの市場においても、広告ブロックの問題に直面しています。ユーザのデータ利用方法が変化をし、広告に関して配信されているものと実際に閲覧されているものの間においては大きな相違があります。

デマンド側に関しては、MRUC(Media Research Users Council)やIAB(Interactive Advertising Bureau)などの組織は、ビューアビリティのために必要な指標を特定する点に関して、大きな役割を果たしてきました。これらは動画だけでなく、バナー広告においても対応しています。また、アドフラウドに取り組むことを目的に、MoatやIAS(インテグラル・アド・サイエンス)などの代理店と広告技術ベンダーの間で、さまざまなパートナーシップが存在します。また、パブリッシャーは、これらのポリシーを遵守する必要性について様々な機会で教育されており、これらがeCPMを向上させるための企業にとって安全な環境を整えています。

― この地域においては、ほとんどの広告主が主に低コストのインプレッションとクリックベースの指標に重点を置いていると考えられていますが、この意見に同意しますか?そうだとすると、そういった考え方が最も広く広まっているのはなぜでしょうか?

クリックベースの測定基準は広く普及していますが、広告主と代理店の両方への教育が必要です。成長途上であるインド、インドネシア、ベトナムなどの市場では、顧客はCTRが成功の尺度と考えられ集中しています。しかし、オンラインユーザーが市場で成熟すれば、クリック率は低下します。今日、ベトナムはインドネシアやインドよりCTRが良いかもしれませんが、同様のキャンペーンのクリック率が低いシンガポールと比較して、その市場においてキャンペーンが成功しているわけではありません。

シンガポールや英国のような成熟した市場では、通常、クリック率が大幅に低下します。マーケティング担当者は、これらのキャンペーンが生み出す声(SOV)とブランドリコール、及びこれらがどのようにビジネスに影響を与えているかを評価する必要があります。このような指標はテレビやプリント広告では利用されません。マーケティング担当者は、GRP(グロス・レーティング・ポイント)、読者層や視聴層、これらの媒体の広告が売上にどのように影響しているかを調査します。広告主は、キャンペーンの効果を確認するために、どのセグメントにおいて目的を果たしたいのか、キャンペーンのインパクトによってどのように消費者の反応を得たいのかを考えることが重要です。

インプレッションの価値が低い点については、現在広告主がプログラマティックベースの広告を活用し、透明性を確保し、消費者への広告配信のために必要な仲介人を必要としない状況となっています。

そのため、広告主は、彼らが支出している1ドルごとの費用対効果が60セントであると理解した場合、残りの40%を求めることでしょう。これにより自動的に価格が下がります。時間が経つにつれて、クリックボットやその他の詐欺のメカニズムが浮上し、問題を巻き起こしています。初期段階における短期的な利益の獲得によりデジタル予算の拡大につながる一方で、デマンド側事業者は、この問題を十分に認識し、予算を確保するためのさまざまな対策を講じてきました。そのため、今日、透明性を主張するDSPや、これらの脅威に対処するためにテクノロジーに大きく投資する大規模な広告会社が存在します。

以前述べた通り、プログラマティック広告は、仲介業者またはアービトラージ業者を排除することで、パブリッシャーや広告主が期待するサプライを適切な価格で実現しています。長期的には、あらゆる広告とマーケティングのプラットフォームにおいて適切な価格が実現されるようになるでしょう。

― この変化はパブリッシャーが在庫を管理する方法にどのような影響を及ぼしましたか?またこれを変化させるためには何が必要なのでしょうか?

パブリッシャーはプログラマティック・ダイレクトを含むプログラマティック広告の力を理解することが不可欠です。彼らは在庫を直接販売したいと思うかもしれませんが、これはビジネスにおける高コストで低収益のシナリオです。自動化はコストを削減するだけでなく、規模の効率化をもたらし、まさしくプログラムによる広告がデジタルエコシステムに貢献するものです。

アジアの多くのパブリッシャーにおいて、ファーストパーティのデータはなく、LotameやBluekaiなどのサードパーティ事業者と提携もほとんどありません。より多くのパブリッシャーがこのようなモデルをサポートするようになれば、プレミアム購入でさえもターゲットとなり、正しいユーザをターゲットとすることができ、結果的により多くのeCPMSの獲得へと繋がるでしょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。