Criteoに聞く、データフィード”Criteo Performance Product Feed”への切り替え理由とその本質[インタビュー]
Criteoはこのほど、新プロダクトのリリースやエンジンの機能アップデートなどに備えて、リテールの広告主向けに新しいデータフィードフォーマットである「CriteoPerformanceProduct Feed(CPPF)」をリリースした。その背景や詳細、切り替えのメリットについて、Criteo広告向けのデータフィード提供をする、ビカム株式会社 セールスディビジョン マネージャー 蠣原侑也氏がCRITEO株式会社 セールスマネージャー 中村 祐介氏に話を伺った。
-蠣原氏(ビカム:写真右):Criteoさんの事業概要と中村さんの自己紹介をお願いします。
中村氏(Criteo:写真左):当社は2011年から日本に参入して事業を展開しています。ダイナミックのリターゲティング広告が事業のコアです。
私自身は2014年7月に入社し、一貫して広告代理店さんを担当する部署におります。また今年からは広告代理店さんのフロントとして担当していくチームを発足しています。
データフィードは最適化に必須のインプット
-蠣原氏(ビカム) 現在、Criteoで広告を配信するには、広告主は「データフィード」を用意することが必要です。Criteoエンジンを最適化させるためのデータフィードの役割、重要性についてお聞かせください。
中村氏(Criteo) データフィードはCriteoがパフォーマンスを出すうえでは非常に重要な要素の一つです。タグから得た情報を元に、ユーザーに対して何の商品をバナー上で表示するかを決定するにはデータフィードとのマッチングが必要ですので、Criteoにインプットしていただく情報として大切な要素になります。データフィードの情報が正しくなければ、実際にユーザーさんに情報を届ける時に正しい情報が伝えられず、パフォーマンスに影響を及ぼす可能性があります。
Criteoのエンジンにインプットしていただける情報が正しければ、学習も正しく行われます。しかし、フィードの作り変えの際、フィードの情報が適切でないと、それまでエンジンにインプットされてきた情報が変わりエンジンが乱れる可能性があります。
-蠣原氏(ビカム) CriteoDataFeed切り替えの背景について、エンジンに与える影響が大きいということですが、なぜ2017年のこのタイミングで仕様を変更されることになったのでしょうか。
中村氏(Criteo):グローバルで新しいプロダクトをローンチしたことが大きな理由の一つです。「プレディクティブサーチ」というGoogleショッピング広告をCriteo経由で配信できる新しいプロダクトをアメリカとフランスでリリースしました。Googleショッピング広告に配信するということは、我々がGoogleのデータフィードにマッチさせる必要が生じます。
もうひとつは、いままでのCriteo独自のデータフィードでは、だいたい10個くらいのカラムのデータ情報が最低必要な要素としてありましたが、Googleのデータフィードでは30~40以上とかなり数が多く、これに合わせることでエンジンにインプットしていくデータ量が増えることになり、より最適な配信が行えるようになるということが挙げられます。
-蠣原氏(ビカム):切り替え後に予定している機能説明をお願いします。
中村氏(Criteo):例えば今までのデータフィードは1商品あたり画像が1つしか設定できませんでした。Googleのデータフィードでは、1商品に対して複数の画像が設定できますので、商品が持っているサムネイルを複数バナー上に並べられるような新レイアウトを開発していたりします。
そうすることで、色々な角度から撮影された画像やモデル着用の画像など様々な商品画像を活用できることでユーザーさんから見ると、様々な角度から商品が見られることで、興味を持つ可能性が高まり、CTRが改善されたり、さらに先のパフォーマンス向上にも期待されます。クリエイティブの拡張性が高まります。
もうひとつはエンジンです。エンジンにインプットできるデータ量を今後増やしていけますので、レコメンデーションをもっと精度高く改善できる可能性が高くなるでしょう。
追加項目情報がレコメンデーションを改善
-蠣原氏(ビカム) ここからは新フィードの仕様に関してお聞きします。今後Googleの仕様に合わせて項目が追加されていく中で、主な項目についてお聞かせください。
中村氏(Criteo):主なものとしては「ブランド」の項目が挙げられます。これによりユーザーにレコメンドした時に、「このユーザーはこういうブランドに興味がある」「違うブランドでいうとどれが近しいか」といったレコメンデーションの改善に広がりが出てきます。また、商品画像が複数入れられるようになるので、表現力が上がります。
-蠣原氏(ビカム) 新しい主な項目として「ブランド」が挙がりましたが、Criteo社が提供する新フィードの項目一覧の中に、推奨項目としてサイズ、ジェンダーなども含まれています。これら推奨項目を含めることで、Criteoの配信エンジンに与える影響はありますか?また、新フィードへの切り替えのメリットがあれば教えてください。
中村氏(Criteo) ユーザーのキーワードに紐付いてリコメンドしていくと、カラーやサイズは検索される可能性があると思います。そのユーザーが探しているサイズの在庫があるかないかを考慮した上でのレコメンド等、効率改善に繋がる可能性があります。
-蠣原氏(ビカム) カラーやジェンダーの情報などで、Criteoの内部の分析の情報の一つとして使われることもありますか。
中村氏(Criteo) ブランドやジェンダーなどは将来的には組み込まれていく可能性はあるのではないかなと思います。ユーザーさんがどのカラーが好きかというのは、意外とレコメンドする時に重要だと思います。また、メンズの商品を探している人に、レディースの商品を出すとミスマッチが起こりますので、ジェンダーを加味していくことで、ミスマッチを限りなく減らしていくことも期待できます。
商品IDの設定は転用時に要注意
-蠣原氏(ビカム):今回、Criteo Performance Product Feedの切り替えに関して基本的にはGoogleのフィードを転用して使うクライアントが多いと思うのですが、転用する際の注意点は何がありますか?
中村氏(Criteo):一番大きなポイントは商品IDについてです。我々の場合は商品単位ですが、Googleの場合はいわゆるSKU単位という形で商品×サイズ×カラーとか、商品ごとにIDが細かくなっており、IDの定義が違います。商品単位のまとまりをエンジンに認識させるため、item_group_idというカラムがあります。item_group_idを使うことで親IDと子IDをグルーピングすることが可能です。
もう一つは、価格の情報です。これまでの我々の仕様では、priceというカラム名で指定していた情報は売値の情報だったのですが、Googleの場合は定価の情報です。同じ名称なのですが、定義が違うので、非常に間違いやすいです。また、新しいフィードのsale_priceはCriteoでは販売価格として必須項目になっておりますが、Googleでは推奨項目になっており、CriteoとGoogleで仕様が若干異なっている点も注意が必要です。
-蠣原氏(ビカム) Googleの場合は google_product_categoryというGoogleが指定するカテゴリがあり、Criteoの新フィードでも google_product_categoryを含めた仕様になると思うのですが、運用上のCPC Biddingの部分でいうと、基本的には google_product_categoryを使うような形になりますか?
中村氏(Criteo):基本的にGoogleの場合はカテゴリの情報をGoogleが指定するカテゴリに紐付けるようになっていますが、実は別のカラムで任意のカテゴリを設定できるものがあります。ただ、やはりgoogle_product_categoryをきちんとデータフィードに入れていただくことで、レコメンデーションの学習にも活かされていきます。もしCriteoでこれまでの入札カテゴリを保持したい場合には、任意項目のproduct_typeを設定して頂くことで切替前のカテゴリ情報を残すことも可能です。
切り替えの本質はパフォーマンス改善
-蠣原氏(ビカム) 今後、ECクライアントさんの切り替えが先行して進んでいくと思いますが、切り替えのタイミング、クライアントさんに対応してほしい時期は決まっていますか?具体的な切り替えフローや期間はについてお聞かせ下さい。
中村氏(Criteo):新フィードへの切り替えに関しましては、いち早く進めていければいいなと思っています。今年の後半から徐々にGoogleのデータフィードで我々が持っていなかった情報をエンジンなどに組み込んでいくようになっていく予定ですので、特にGoogleショッピング広告を実施されていて、既にGoogleのデータフィードをお持ちのリテールのお客様にはどんどん切り替えを進めていただきたいです。そうすることで、今後エンジンアップデートがあった際にいち早くパフォーマンス向上を享受していただけると思います。
-蠣原氏(ビカム) 現状新フィードへの切り替え進捗状況はどのような具合ですか?
中村氏(Criteo):切り替えに向けて、広告代理店さん、クライアントさんと切り替えの前段階のチェックをしているアカウントが多いという状況です。ビカムさんのようなフィードの管理を担当していただいているベンダーさんがいてくださるのは、非常にありがたく感じています。このような仕様変更はクライアント様側でも工数をお掛かけする部分も出てきてしまうかと思いますが、対応いただくことで未対応の競合他社などに比べてパフォーマンス向上や新プロダクトの導入が見込めます。当社でも最大限のサポートをさせていただきますが、自社で対応が難しい場合は、広告代理店さんやビカムさんのようなデータフィードベンダーのサポートを得てご対応されることをオススメいたします。
-蠣原氏(ビカム):最新のアルゴリズムに組み込まれていく時期は未定ということですか。
中村氏(Criteo):やはりカラム数が圧倒的に多くなるので、全部を一度にではなく、徐々に組み込んでいきます。早ければ来期くらいから新しいカラム情報を加味した最適化ができるようになる予定です。
-蠣原氏(ビカム) もし切り替えができなかった場合はどうなりますか?
中村氏(Criteo):新しいデータフィードでは圧倒的にデータ量が違ってきますので、たとえば同業種であったとしても、パフォーマンスの差が出てしまう可能性があると思います。
我々の最適化ロジックですと、CTRやCVRの予測が高いほうが実際に高く入札してくれるようになりますので、入札でも負けてしまうような状況が出てきて、配信量、獲得効率などにも差が出てきてしまう可能性が高くなると思います。
切り替えはEC以外にも幅広い業種に展開を予定
-蠣原氏(ビカム):データフィードベンダーの立場からすると、EC以外にも不動産ですとか人材、旅行系のお客さんが多いです。今回はECが対象、PLAが配信対象ということですが、今後は別業種にも適用する予定はありますか?あるいは日本以外ではすでに進んでいるのでしょうか?
中村氏(Criteo):まだ検討段階です。特に日本市場ではリテールのお客様も多いのですが、不動産、旅行、あとは金融や単品のECのお客様も非常に多いので、日本市場は業種のバラエティが広いです。そのため、新しいレイアウトを開発する際に、単品商材向けのレイアウトも開発したりしています。日本市場でお客様がいてニーズがあるのでプロダクトを作る必要があるからです。
Criteoのグローバル全体でも、日本は大きな売上を持っている国の一つなので、我々がニーズをくみ取って、市場価値があるということであれば、EC以外の業種でも最適化できるデータフィードを作ったほうがいいという提案ができていくと思います。
-蠣原氏(ビカム):最後にCriteo社にて今後追加していく新機能や展望があればお聞かせください。
中村氏(Criteo):今回のデータフィードの話から逸れますが、今年我々が重要視しているプロダクトは、2年前くらいから展開しているユニバーサルマッチという商品です。これはクロスデバイスで配信や最適かが行っていける仕組みで、現在我々のコアテクノロジーの1つになっています。
我々の場合は、タグからハッシュ化したEメールの情報をいただくことで、デバイス間やブラウザ間で異なるCookieを紐付けて、クロスデバイスでユーザーをマッチングして配信・最適化していくものになっています。今年はより注力して導入を進めていきたいと考えています。なぜなら、ユーザーさんが複数のデバイスでインターネットを使っていると、Cookieによって情報が分断してしまい、レコメンデーションや配信の最適化もCookie単位になってしまうからです。また、今後リリース予定の新プロダクトでもユニバーサルマッチの導入が前提となっていきます。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。