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パーソナルフィード体験がオープンウェブの世界へ:Taboola社 CEO Adam Singolda氏

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

広告閲覧にはすっきりしない経験が伴うことがある。パブリッシャーは、あらゆるスペースを販売して収入を伸ばそうとする一方で、企業は広告のための最も安全で最適な環境を探し求めることから、正しいメッセージが伝わらなかったり、コストが増えたりといった事象につながっている。Taboola社の創設者兼CEO Adam Singolda氏は、ソーシャルフィード構造を利用することで、パブリッシャーと広告主の両者において、これらの問題を解決できる点について説明してくれた。

― Taboola社が提供するフィード機能がどのようなもので、マーケットにとり魅力的な理由をお聞かせください

現在のオープンなWeb体験には問題があります。特にモバイルは、夜間にはタイムズスクエアの看板と同じような混沌とした状態になっていることがあります。

Web上にはあまりに多くのウィジェットと広告で溢れています。様々なページ部分からポップアップやオーバーレイが表示され、パブリッシャーは余裕のあるスペースがほとんど残っておらず、企業はどのようなユーザ体験を提供しようかを考える余地がありません。現在ユーザは、1つまたはおそらく少数の記事を読んで、ソーシャルフィードに戻るような利用方法を行っています。多くのユーザがなるべく早くサイトからエスケープしたいと考えたとしても現状無理はありません。

また、このような状況は、インターネットが4.5インチ程度のモバイルスクリーンに急速に移行しているため、今後継続することは難しいでしょう。

私は、パブリッシャーが収入を2倍、3倍に増やす機会がもたらされ、企業が継続的に投資し、成長するための拡張性と安全性を兼ねた環境を提供できると考えています。
このビジョンを達成するために、私たちは自分自身に尋ねました。今日誰がモバイルを活用して素晴らしい仕事をしているだろうと自問した時に、答えは明らかでした 。UXの観点からは、ソーシャルサービスは非常に優れたサービスを提供しています。Facebook、Twitter、Instagramは「カード」によるフィード体験を提供しており、New York Timesによると、Facebookのユーザは、毎日1時間近くコンテンツをスクロールして閲覧しているとのことでした。

私たちは同様のユーザビリティをオープンウェブの世界でも提供したいと考えたのです。

― それはパブリッシャーにとってはどのような意味をもつのでしょうか?

現在のウィジェット業界では、パブリッシャーは自分自身を不動産会社と考える必要があり、最も収益を得るために、画像サイズを最適化しています。

代わりに、パブリッシャーは新しい「合理化された経済」をスタートさせるために、スクロール可能でパーソナライズされた品質の高い情報を提供し、ユーザが興味を引くようなカードや情報を提供するのです。これは、パブリッシャーがユーザの注目を集め、エンゲージメントを高め、パブリッシャーのコンテンツをより長い間読んだり、動画を見たり、パブリッシャー編集したストーリー仕立てのコンテンツを収益化するのに有益です。成長は時間軸に応じて起こるだけでなく、収益化とエンゲージメントという意味で革命的な変化となります。

New York Daily Newsはモバイルページとデスクトップページの両方でTaboola Feedのベータテストを行い、26%の収入の向上とモバイルにおける40%のエンゲージメント上昇という結果が得られました。

New York Daily NewsのDigital上級副社長、Grant Whitmore氏は、「デジタル環境の進展に伴い、ユーザの行動は進化しており、読者はソーシャルメディアのプラットフォームによる継続的なスクロール体験に親しみを覚えています。Taboola Feed は、その経験を反映し、以前はソーシャルメディアでしか利用できなかったユーザ体験を、各記事ページにもたらしてくれました」とコメントしています。

― これは企業やマーケターにとってどのような意味を持つのでしょうか?

企業はオープンWeb上で、カルーセル、動画、アプリのダウンロード、投票などの消費者が好むフォーマットの利用を加速する一方で、企業にとって安全でプレミアム性の高いエディトリアルコンテンツを活用することが必要です。企業にとって、消費者が動画を継続的に閲覧する仕掛けを作ることは極めて重要になっています。記事を読み終えた後、ユーザが5〜10の動画を閲覧することが理想的です。

― フィードカードはどのように生成されるのでしょうか?これにより、パブリッシャーは、より多くパブリッシャー主導のコンテンツを提供し、広告主にプログラマティックにより広告を配信する機会を提供できるのでしょうか?

記事の終わりに自然な形で、読者はカードまたは情報に目を留めます。これらのいくつかは私たちが生成したものもあれば、パブリッシャー、企業、サードパーティが提供するものもあります。天気、ニュースレター、コメント、インタラクティブな投票など様々なフィードがあります。

フィードのオペレーティングシステムとして考えるとわかりやすいと思います。パブリッシャーが自分のフィードに必要なユーザ体験やカード内容、表示カード数、プロモーションするカード数、Taboola Cardストアから得られるサードパーティカード表示などの管理を行うことができます。

The Trade Desk社、AppNexus社、Criteo社など業界をリードするプログラマティックパートナーは、検索やソーシャルを超えた強力なネイティブによる広告オプションを広告主に提供します。これらのパートナーシップにより、プログラマティックによるメディア購入プラットフォームにプレミアムパブリッシャーからの配信サービスを実現することができます。

― このフォードがどのようにして、広告主により安全なコンテンツ環境をもたらすのでしょうか?

最近のフェイクニュースによって、広告主とエージェンシーはパートナー選びにより慎重に取り組むようになりました。「あなたは私たちの安全のために何をしてくれますか?」という質問を無視することはできません。

私たちのソリューションは、NBCNews、AOL、Bloomberg、USA Today、Independent、Ströer、Yahoo Japanなどの、世界で最も革新的で有意義なジャーナリズムを有するウェブサイト内で利用されています。

Photo

Adam Singolda氏、Taboola社 Founder & CEO

もし広告主がエディトリアルコンテンツに伴う形でコンテンツ、動画、製品、サービスを配信したい場合に、ネイティブや動画、ソーシャルや検索に強いフォーマットを用いることは、安全でもあり、ブランドにとっても有益で、ジャーナリズムの面からも賢明でしょう。

企業がコンテンツの配信に関して、よりコントロールを得るためには多くのツールが存在しています。

完全な透明性:企業は、広告が表示される以前に配信先について理解している必要があります。

TAG:Trustworthy Accountability Group(TAG)は、不正なトラフィックを排除し、不正なソフトウェアを撲滅し、インターネット著作権侵害と戦い、企業のブランドを守り、より透明性を高めて企業の安全性を促進するための重要なリソースです。

強力なパブリッシャーパートナーシップ:トップパブリッシャーとの直接の関係は、企業にとって一貫した安全な環境を保護するために重要です。これによって、The Trade Desk社やCriteo社のような一流のプログラマティック企業との関係を確保することができます。これらの企業のクライアントは、安全なプレミアムパブリッシャーのサイトに広告を配信することに加えて、プログラマティックバイイングにおける効率化を求めています。

直接的なキャンペーンの配信制御:企業が広告を掲載したくない特定の出版物、カテゴリ、トピックがある場合、企業はホワイトリストとブラックリストのオプションを使用できます。あるキーワードに沿って広告を一定のサイトに配信し、指定したトピックと絡めて掲載するといったことも可能です。

ネガティブキーワードのターゲティング:これは前述のオプションとは逆で、企業が関わりを持ちたくない特定のトピックを含むページにキャンペーンが表示されるのを防ぐことができます。

― 今後のパブリッシャー向けの展開について教えてもらえますか?

私たちのサービスは、世界中のパブリッシャーから大きな関心を集めており、APAC、EMEA、そしてもちろん北米に向けて展開を進めています。新たなパブリッシャー対応の発表についても間もなく行う予定です。私たちはより大規模なパブリッシャーのパートナーとの協業を進めており、すべてのパートナーシップにおいてTaboola社のフィード機能を採用してもらうことを目標としています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。