動画は単なるビューアビリティではなく、真のカスタマーエンゲージメントだ –ViralGains社Tod Loofbourrow氏–
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
動画広告は、潜在的な顧客をターゲットにプロモーションを行い、エンゲージメントを得るために、より適した媒体となっている。一方で、従来のディスプレイ広告と比較して動画には異なるルールが存在する。ViralGains社CEO Tod Loofbourrow氏は、動画キャンペーンで成功を収めるためには、単なるビューアビリティや計測以外にどういった事柄が必要となるかを語ってくれた。
― 現在、動画を使用している人々は、過去と比較してどのように異なるのでしょうか?
マーケッターは最終的に動画広告がディスプレイ広告とは違う点に気付き始めました。動画広告にディスプレイ広告の基準を当てはることはできず、それはまさにバンドエイドのつけ方を間違えているようなものです。
現在、マーケッターは、単にブランディングと認知向上の目的に留まらず、動画によるストーリーを活用しています。動画を使用して消費者と企業の双方向の会話を開始し、本物のつながりを作り出しています。消費者にどのような製品を求めているのか、企業についてどのように感じているのかを知ることによって、行動や態度に関する数十億のデータポイントを利用して、認知から購買に至るカスタマージャーニーに沿ったメッセージを形成することができます。現在、マーケティング担当者はビューだけに留まらず、消費者とのエンゲージメントのためにお金を支払っています。
― 動画キャンペーンにおいて、ビューアビリティ以外で考慮されるべきデータはどのようなものでしょうか?
消費者が動画広告を見るとき、動画が閲覧されたかどうかだけでなく、関心や購入のレベルを計測する多くのデータがあります。消費者は動画に反応したのか?彼らはコアメッセージをきちんと受け取ったのか?彼らは印象や購入意向に関するアンケートに答えたか?企業はそれ以外にも、誰(オーディエンスセグメント、消費者属性、地理)、何(長さ、コンテンツ、主題、感情的共鳴)、いつ(時刻、曜日、休日、天気、特別イベント)、どこ(ページ、ページの場所、ページの内容)、どのように(デバイス、WiFi /モバイル、ブラウザ)、そして何故(この車に乗っている自分を想像できる。買いたいと思う)、といった情報を把握することができます。
これらの信号とターゲティングパラメータを組み合わせることで、広告主はメッセージを特定オーディエンスに対して配信し、本当の関係性を確立することができます。
― 企業が動画を活用するための最良の方法は何ですか?
企業は、オーディエンスのエンゲージメントを得るための、最良のメッセージを配信するための空白のキャンバスを持っていると考えられます。動画は、購買のあらゆる段階における継続的なメッセージとして準備される必要があり、優れた動画によって意識を高め、購入意思に影響を与え、販売につなげることができます。
初期段階の調査後においても、企業が、様々な反応をテストし、メッセージをリアルタイムで調整して、何がオーディエンスとのエンゲージメントを得られるかを検討することは必須です。例えば、ViralGains社は、医薬品の分野で、魅力、恐怖、ユーモアの3つの異なる動画テーマをテストし、最良の反応を得るために異なるオーディエンスセグメントを理解するようにしています。
企業は、コンテキストに基づいて、ブランドセーフな環境から、メッセージが際立つようなタイミングにおいて、動画を配信しているかどうかを確認する必要があります。様々なタイプのデータを使用して、最適な広告タイミングについて学ぶことができる最適かモデルに応じてプロセス化される必要があります。
― ほとんどの場合オーディエンスレベルから動画にアプローチしますが、貴社の場合は、個々人のレベルから動画にアプローチしています。それは正確に何を意味し、その戦略の結果はどのように異なるのでしょうか?
データターゲティングで特定のオーディエンス層を見つけた後、多くの動画ベンダーは、広告主の50%が画面に少なくとも2秒間表示されるという(音がオフの場合でも)MRCの視認性基準に基づいたクリックやビューなどの無意味とも捉えられる指標で成功を測っています。
この方法が完全に機能するには、ターゲティングに大きな負担をかけることになり、それは視聴者が一人の個人として扱われていない可能性もあります。ViralGains社は消費者が動画を閲覧する際のコントロールと選択肢を提供します。30秒間の動画が完全に閲覧されるまでは料金請求を行っていません。また、消費者に商品への関心や企業についての感想を聞くことで、双方向会話の機会を提供しています。当社は、高い購買意欲を持った高品質の洗剤顧客へのアプローチ機会を提供しています。当社の顧客は、多くの人々に低価値でアプローチを行う場合に比べて3倍以上の関与の質を見ています。
― あなたはAIのバックグラウンドを持っていますが、AIがこの業界の動画産業に与える影響はどのようなものでしょうか?
動画はこれまでに発明された最大のストーリーを伝えることができるメディアです。動画広告の成功測定に利用される指標は、インプレッションやビューではなく、より純粋で意味のあるエンゲージメントです。ヘッダー入札、取引、プライベートマーケットプレイス、動画広告などにおけるより透明性の高い売買の出現により、人工知能(AI)は、エンゲージメントを予測し、推進するための重要なテクノロジーとして考えられます。私たちひとりひとりの個人は、異なった興味、希望、希望、夢を持っています。AIは、個人としての嗜好がどのように企業と製品を決定するかを予測し、カスタマージャーニーからそれぞれの消費者を取り込む方法を学ぶのに有益です。AIは、動画エンゲージメントの新しいテクノロジーの中心にあります。
― 業界では、テレビの考え方を動画(リーチとインプレッション)に適用しています。この考え方は、デジタル動画業界においてどのような影響を及ぼしますか?
グロスレイティングポイント(GRP)指標の目的は、広告キャンペーンのターゲット人数に関連したインプレッションを測定することです。GRP値は、メディアバイヤーがTVメディアの広告効果と比較するために一般的に使用されます。つまり、広告代理店がクライアントのために購入したメディアの量を測定するのに使われており、動画広告の影響を測定するための利用には不向きです。
オンライン動画は既存のメディアとは異なり、消費者と広告主の間の本物のつながりを作り出す絶好の機会を提供します。私たちは、デジタルのパワーを結集して、動画バイイングの有意義なスタンダードを作り上げ、効果的なエンゲージメント計測方法を確定し、TVのGRPに対するデジタルにおける回答を創造する必要があります。50%の広告が2秒間閲覧されたからといって、予算が無駄になったとCMOに伝えることはできません。広告が閲覧されていないとするならば、重要な計測値に影響は与えられないはずです。
新しい基準値は、信頼性の高い視認性確保と企業にとって安全な基準の両面から、注目、行動、そして購入につながるエンゲージメントをKPIのメトリックと組み合わせる必要があります。そのため視認性を測定することが適切な方向への一歩です。しかし、視認性とGRPは、あなたが求めている指標ではないことも理解しておく必要があります。それらはビジネス成果ではなく、広告アウトプットを測定しているのです。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。