サーバー間ヘッダービディングにより、いかにより優れたマーケットプレースが生まれるのか
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
アドフラウドやフェイクニュースが多く出回る昨今において、マーケットプレースにおける信頼や透明性は今まで以上に重要になってきている。AppNexus EMEA 戦略開発部門 VPのNigel Gilbert氏は、ヘッダービディングをサーバーサイドで実行することで、買い手と売り手の間の信頼性を築くことができると考えているようである。
The News Media Association (NMA) は、フェイクニュースの広がりを防ぎ、デジタル広告における「慢性的な透明性の欠如」を妨げるために、具体的なアクションが必要である点についてGoogleに呼びかけました。NMAによるこの動きは、GoogleのDoubleClick for Publishers (DFP)に対抗するための、より優れたマネタイズ方法を模索している独立系のパブリッシャーの懸念を反映しているものと言えます。
これらの動きにより、市場に再び透明性や公平性を確立するための、公平な競争環境が求められるようになりました。サーバーサイドにおけるヘッダービディングの登場によって、今日のデジタルマーケットプレースが直面している問題が解決される可能性があります。
高い信頼性があり、透明性の高いデジタル広告のマーケットプレースに関しては、非常に明確な需要が存在します。第一に、業界は、取引参加者の間での処理プロセスをより簡易にかつスムーズにするために、摩擦を減らす必要があります。例えば買い手にとって、ビューアルブルなインプレッションのみを取引することができることなどが一例として挙げられます。次に、売り手と買い手の間でより意味の深い繋がりを持ち、より公正なオークションのプロセス作りと価格に関する透明性の高いやりとりが求められています。これは、パブリッシャーが収入を最大化できるというだけでなく、広告主に対して、最も費用対効果の高い結果を得ることができるという確信を与えることができます。最後に、業界全体でカスタマーファーストである点を意識し、ユーザエクスピリエンスの改善や遅延の削減などに努める必要があります。これらの結果として、アドブロッカーの利用を減少し、マーケットプレースにおける信頼の確立につながるでしょう。
サーバーサイドでのヘッダービディングは、これら全ての問題を解決しうるソリューションで、より優れた活気のあるマーケットプレースを確立するための可能性を秘めています。このソリューションにより、パブリッシャーがヘッダービディング利用時に、多くのデマンドパートーナーが存在することで起きる遅延の問題をも減少させることができます。ブラウザー側でほとんどの作業を実施する代わりに、AppNexusのようなサーバー側において、パブリッシャーへのオークションや意思決定を担当します。加えて、サーバー間のビディングによって、複数のパートナーとの、偏りのないアクセスを容易に行うことができます。ウォールドガーデンの問題や、単一のアドテクベンダーを選択しなくてはならないといった問題はなく、このテクノロジーによって業界が、DFPに依存しすぎる状況から回避することができるでしょう。
私は、サーバー間のテクノロジーにおいて潜在的な欠陥がないといっている訳ではなく、実際にクッキーによるマッチングや、トラディショナルなヘッダービディングよりもインサイトのレベルが高くないなどの問題が存在します。どのデマンド側のパートナーがどのような理由で選択されたのか、などの透明性に関する問題を抱えています。
これらの問題を乗り越えるためには、「ハイブリッド」モデルについても採用する必要があるでしょう。サーバー間のやりとりを、伝統的なヘッダービディングラッパーと一緒に利用することで、パブリッシャーが設定をカスタマイズすることが可能になります。このモデルにおいては、デマンド側のパートナーはウェブページ(伝統的なプリビッドのアプローチ)でも、サーバー間の通信によって統合された相手でも可能です。このアプローチによって、パブリッシャーはクッキーを最大限に利用し、ヘッダーパートナーとのマッチングを行い、サーバー間通信のパートナーを通じて、入札密度を高める一方で、遅延を管理し、収益を最大化することができます。サーバー間のソリューションによって、パブリッシャーは、自社に最適のバランスで管理とカスタマイズのオプションを活用することができます。
テクノロジーが発展するに従って、マーケットのニーズとともに成長し、コミュニティからの支持を得られるようなソリューションが必要となります。これらのソリューションは、マーケットにおいて、より高度な信頼と透明性を生み出します。また、異なるSSPパートナー間での信頼獲得は、多くのデマンド側のパートナーの参加とともに、サーバー間通信が効果的に作用するために必須となる条件となります。Prebid.jsはこの透明性を確立する上で試金石となるものです。この技術によって、パブリッシャーと広告主はオークションのロジックを知ることができます。サーバー間のやりとりを行うだけでは、十分なオープン性を保つことはできず、パブリッシャーは、パートナーを探す場合に、同様の関心を共有でき、収益において競争環境に陥らない点は非常に重要です。
我々は、サーバー間のテクノロジーがどのように進化し、このソリューションによって、信頼の上に成り立った、全ての人々にとって公平でオープンなマーケットプレースが確立するかどうかを見守っていきたいと考えています。ほとんど全ての主要アドテク企業が、ヘッダービディングソリューション活用のために、相互サポートを検討したとしても決して驚きではありません。このテクノロジーは、デジタル広告市場を正しい方向に進めていくために必要不可欠なステップです。パブリッシャーが自社のコンテンツを正しく管理し、Googleが持つテクノロジー以外のオプションを持つことができるのです。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。