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Yahoo! JAPAN、Criteoのパートナーシップ、これまでと今後 [インタビュー]

国内最大級のポータルサイトを運営するYahoo! JAPANと広告配信プラットフォームのCriteo社がパートナーシップを提携してから早5年。

業界の注目を集めた本提携は、今後どのように発展していくのか。ヤフーの広告事業部門におけるディスプレイ広告事業本部の井上真吾本部長と、Criteoの天野耕太シニア・ディレクターに話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 長野 雅俊)

Yahoo! JAPANとCriteoとの提携はいかにして生まれたか

― 2012年のYahoo! JAPANとCriteoとの提携は業界でも注目を集めました。この提携はどのような経緯で実現したのですか。

井上氏: ヤフーとしては、2012年に経営陣が交代し、組織体制が大きく変わったことがきっかけとなりました。

それまでヤフーでは、「自前主義」で物事を進めていくことが多かったのですが、「課題解決エンジン」と我々が呼ぶ使命を遂行し、人々や社会、そして企業やマーケターが抱える課題をきちんと解決していくために、様々なパートナーとも協業していく必要があると考えるようになりました。日本屈指のメディア企業であるヤフーとしては、デジタル広告の分野をリードしていきたい。そこで、この領域において強みを持つCriteoとの提携に至りました。

天野氏: フランス企業であるCriteoが日本進出を果たしたのは2011年。この年は東日本大震災が発生した年だったこともあり大きな成長を遂げたのは、2012年にヤフーと提携してからです。それから徐々にCriteoの配信ボリュームが増え、事業も拡大していきました。

日本市場においては、ヤフーのネーム・バリューは絶大です。広告主様がCriteoに出稿する意義をつくっていただいたという意味でも、我々が日本でここまで成長することができたのは、ヤフーとの提携のおかげだと思っています。またCriteoにとっては、日本市場に限った話ではなく、グローバル展開においても大きな意味を持つ提携となりました。会社としてはアジア地域が今後最大のマーケットになると見込んでおり、米国で上場を果たしたのも、アジアでの成長を視野に入れた上での動きでした。日本のマーケットは非常に重要であり、すなわちヤフーとの提携はCriteoにとっては全社的なターニング・ポイントとなったわけです。

井上氏: アドテクノロジー分野のリーディング・カンパニーであるCriteoの技術を使うことによって、よりユーザーに関連性の高い広告を届けることができるようになりました。一方で広告主様に対してはさらに質の高い広告在庫を提供することができ、本提携によって、Yahoo! JAPANのメディア価値全体が向上したと考えています。

天野氏: 2012年時点では、ヤフーが外部企業とパートナーを組むということ自体が業界的に大変なインパクトがありました。また今振り返ると、我々が提携を結んだ時期は、プログラマティック広告の業界全体が動いた変革期であったと実感します。この頃に様々なメディアが広告でのマネタイズの方法を変えたり、アドテク関連のソリューションが次々と増えていきました。その変革を起こすきっかけの一つに我々の提携があったのではないかとも思います。

当時一番の課題はタグマネージメントへの理解促進

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井上氏: 2012年10月に開催された「アドテック東京」においてCriteoと同時にタグマネージメント・サービスを提供するBrightTag社(現Signal社)との提携も発表しました。

当時の我々の広告主様に対してCriteoの配信システムを紹介する際に、「どうすればタグをきちんと埋め込んでもらえるか」というのが大きな課題となっていました。正確なターゲティングをするためには、タグをきちんと埋め込んでいなければならない。しかし、どのタグがどこに入っているか分からなければ機能しないため、「Yahoo!タグマネージャー」というソリューションの提供は広告主様の課題解決の一助となったのではないかと考えています。

天野氏: Yahoo!タグマネージャーと連携したインパクトは大きく、今ではタグマネージャーを使っていないケースの方が少ないぐらいです。そもそもCriteoのサービスは、全ページにタグを貼り、情報を収集し、ターゲティングを始める仕組みとなっており、導入のハードルが低いとは言えません。そういった状況においてYahoo!タグマネージャーによって、我々のシステムを多くの広告主様にご利用いただけるようになったという側面は確実にあると思います。

2017年、両社の注力分野について

― 2017年にはどのような分野に注力していく考えですか。

井上氏: ヤフーは、2012年から「スマホファースト」を掲げてスマートフォンに注力してきました。その結果、Yahoo! JAPANのスマートフォンでの利用と、PCなどスマートフォン以外での利用が逆転し、今ではスマートフォン経由広告の売上が全体の売上の5割を超え、メディアとしての成長に対して広告の成長がついてきたとの感触を得てきました。今、注力しているのがアプリ領域です。

我々は広告企業であると同時にメディア企業でもあるので、ユーザビリティーを損わないように、広告とコンテンツのバランスを取りながらアプリ市場を成長させていかなければなりません。ユーザーにとって最適な情報を届けるためには、ユーザーを知ることが不可欠です。そのために、ユーザーに対して「ログインすることでより便利に快適にYahoo! JAPANを利用いただける」という付加価値を明確にし、ログインを促進しています。

また、2年ほど前に「Yahoo! JAPAN」アプリをタイムライン型のUIに刷新し、タイムライン上に最適なレイアウトで表示されるインフィード広告を提供しています。また、この3月より「Yahoo! JAPAN」アプリトップのタイムラインで動画フォーマットの広告を提供開始しました。まずはコンテンツの動画化を推進し、ユーザーに動画体験を楽しんでもらう環境を整えたうえで、動画広告の導入に至りました。

今後さらにデバイスの種類が増えていくことが容易に予想されます。そのような状況においても、我々は、日本のユーザーのことを最もよく理解し、ユーザーやマーケターの課題を解決できるよう、時代や環境の変化に合わせてしなやかに対応していきたいと思います。

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天野氏: Criteoはかなり早くからスマートフォン対応を進めてきました。実はスマートフォン・ビジネスに関しては日本を起点として全世界へと拡大したという経緯があり、売上比率においても日本ではスマートフォンが占める割合がかなり大きいです。

またユーザーがPC/スマートフォンまたはウェブ/アプリのいずれから情報を閲覧しているのかということが分からなければ我々のソリューションは不完全となってしまうので、アプリにも早くから取り組んで参りました。

実際に我々は「クロスデバイス・コマースレポート(旧:モバイル・コマース・レポート)」などの形で各デバイスに特化したコンバージョン状況についてのレポートを出していますが、日本では他の機器に比べてスマートフォンでのコンバージョンが多いのです。だからこそ弊社では、スマートフォンウェブだけでなくアプリを持つ企業に対して、SDKを埋め込み、アプリの中でどんなユーザーがどの商品を見たのかという情報をウェブと同様に収集して広告配信に活かすソリューションをご用意しています。

もう一つは、我々はリターゲティング企業ですので、特定のコンテンツを一度閲覧したユーザーに対して広告を通じて訴求するための「再会の場」は、PC/スマートフォンまたはウェブ/アプリのどこなのか、という課題があります。現状では、ユーザーも、メディア企業も、関心がアプリへと推移し始めており、各メディア企業がどういったUIまたはUXでアプリをつくっていくかを意識する必要があります。PCのようにたくさんバナー枠をつくれないというのであれば、このまま何もしなければ我々にとってもう一度ユーザーと出会う場所がなくなってしまいます。

そこで重要視しているのが、いわゆるネイティブ・フォーマットへの対応。この領域においても日本は世界の中で非常に進んでいて、これまでヤフーとの協業があってこそ市場インパクトを作れたと感じています。

また、Criteoとしては、このユーザーはこのデバイスではこのユーザーで、アプリではこのユーザー、そして両者は同じユーザーであるということで一致させることを「ユニバーサル・マッチ」と呼び、重要な点として位置付けています。これが実現できなければ、マーケティング施策としてはPCはPC、スマートフォンはスマートフォンという形で常に別々にユーザーと向き合わなければなりません。ただCriteoはSDKやタグから情報を集めているだけなので、Criteoの保有データからはユーザーを一致させることができません。広告主様から情報を提供いただくことで初めてユーザーを一致させることが可能になるのです。

ちなみにユーザー情報に関して言えば、日本では改正個人情報保護法の施行が控えています。我々は外資企業ですが当然のことながら、これまでも今後も日本の法律に則る形で、適切に運用を行っていく方針です。我々もヤフーと同様に日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の委員会などに参加させていただいており、こういった分野でも両社が市場の中で貢献していけることはあると思います。

今後両社がお互いに求めるものとは

― 提携を結んでから5年が経過し、両社の状況や市場の様子も大きく変化してきたと思います。今後両社のパートナーシップはどのように変化していくと思いますか。

井上氏: 過去5年間にわたるCriteoとのパートナーシップも寄与した結果、ヤフーとしてはディスプレイ広告を順調に伸張させることができました。Criteoには、世界における新しいマーケットのニーズというのをきっちりと捉えて、それをプロダクトに反映してくれているという部分に大きく期待しています。

天野氏: Criteo視点でも繰り返しになりますが、ここまでを振り返ると日本においてヤフーとの提携が大きかったと感じています。先日、電通から発表された「2016年日本の広告費」では、インターネット広告の中の運用型の広告費が18%の成長率と記されていましたが、Criteoの去年の成長率はそれを大きく上回ることができました。我々の主戦場としている運用型広告市場は2017年、2018年もまだまだ伸びていくと思うので、それを上回る成長を続けるためには、現在の取り組みに加えて何ができるか、ということを考えていかなればなりません。

ヤフーとは従来通り提携を続けさせていただき、この先も様々な課題解決のために、普段からお互いに色々な議論をして、どの部分で連携ができるのかを常に模索しています。広告分野に限らず幅広い事業を手掛けているヤフーに対して、サービスを特化している我々がどのようにお応えできるかを具体化させることが今年の鍵になると思います。

井上氏: ヤフーとしては、引き続きCriteoに配信面の提供を継続しながら共に頑張っていきたいと思います。また、グローバルに展開しているCriteoから見えるマーケターもしくは広告主様の課題にも着目しています。我々はメディア運営を通じてユーザーを知ることで、ユーザーが抱える課題を見出していきます。そこで、我々とCriteoがお互いのアセットやノウハウを活用し、ユーザーやマーケターの課題解決により高度に取り組んでいくことができるのが理想です。

天野氏: あとはCriteo単独の件に関して言えば、日本特有の事情として、クリエイティブやエンジンの進化に加えて、代理店様とのパートナーシップをいかに築くかというのが日本進出時から非常に重要なテーマとなっています。この面でもヤフーから強力なサポートをいただいたこともあり、日本法人としてもそれなりの体制が整ってきました。我々としては、この営業体制の強化も今年の注力ポイントです。日本の広告主様そしてその広告主様とパートナーシップを結んでいる代理店様へのサポートにもっと力を入れていこうと思います。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。