お金のかかるゲーム:企業はいかに情報過多の消費者にリーチできるのか
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
2016年、消費者は今までにないくらいあらゆる形態で企業からのメッセージを多く受け取ることになった。電子メールや、テキスト、メッセージングアプリ、ソーシャルメディアや様々な他の方法によって、消費者は多くのメッセージにさらされている。Wiraya社のUKディレクターのSam Madden氏が、ExchangeWireに対して、企業がメッセージを多く送信することによるリスクや苛立った消費者により情報を削除されることの危険性について語ってくれた。
私たちの最新のレポートによると、エネルギー、モバイル、銀行、保険サービスなどを退会したユーザの86%が、もし自分たちの望む形で、かつタイムリー(20%)に企業がコンタクトしていればよりサービスに満足していた、と回答しています。また、1/5近い(17%)顧客が期待した情報が得られなかったと回答しています。これは無視できないデータです。今までのようなコミュニケーション方法は通用せず、消費者がパーソナライズされたメッセージを期待しているのは明確です。
企業側の課題はいかにこれを成し遂げるかです。カスタマイズされた、人間味のあるメッセージを多くの顧客に、費用や時間をかけずに送信する必要があります。エンドユーザ体験もまた非常に重要で、多くの企業が消費者とのコミュニケーションに非人間的でロボットのようなテクノロジーを利用していることを問題視しています。
しかしながら、二者選択の形でなくてはならないということではありません。人間的な視点とAIテクノロジーを組み合わせて、人間的な感覚を失わない形でパーソナライズされたメッセージで、知的で直感的なサービスを作り上げることは可能です。この方法によって、消費者が望む方法とタイミングでコミュニケーションをとることができ、リアルタイムにエンゲージメントの高い顧客コミュニケーションが行い、結果として高い顧客満足を得ることができます。
初期段階からブランドロイヤリティを育成する
最初の100日が消費者との信頼を高め、正しい形で関係を確立し顧客離れを防ぐために非常に重要です。最初の1日目から、顧客はサービス提供者からパーソナルなメッセージを受け取るべきですが、これにはお金がかかり、企業にとって非効率的です。この点においてオートメーションやAIのサポートが機能します。
私たちは通信事業者のTelia社と業務を行い、AIを利用して予め録音された通話やテキストメッセージを使って、新規顧客にそれぞれパーソナライズされたメッセージを送信する業務に携わりました。これらのメッセージはリアルタイムである点に加えて、消費者とカスタマーサポートチームをサービス開始時から繋ぐことが出来た点で有益でした。
プロアクティブな対応を
正しいチャネルを選択するだけでなく、企業は消費者への正しいメッセージにについてよく考える必要があります。それぞれのメッセージの文面を見直し、サービスを重視したアプローチに考えを巡らせることが重要です。顧客に色々なことを聞くのではなく、彼らの生活をより良くするためのサービスに力を入れるべきです。
最初に、あるサービスが顧客に適しているかどうかを考え、適切でない場合は彼らに別の選択肢を用意するべきです。これを競合がアプローチしたり、消費者自身が、サービスを不適当と感じて提供者の変更を考える前に実行すべきです。消費者の重荷となるのではなく、サポートとなることで、消費者のライフサイクルに価値を提供することができます。
プロアクティブに行動を起こすのが重要である一方で、メッセージやアプローチ方法において戦略的であることが重要です。例えば、サービス提供者が顧客にアカウント詳細を変装するようお願いするしたり、支払いを催促するようなレターを送信した場合は簡単に見落とされたり、業務未完了のきっかけとなったりするでしょう。しかしながらデジタルによるメールやテキスト(SMS)のような方法はより望ましい方法として考えられ、必要な情報を提供しやすくなるでしょう。
非常に良い例が、私たちがサポートしたスウェーデンの保険会社の例に見られます。彼らはより多くの顧客に保険を更新してほしいと考えていました。郵送やメールなど多くのコミュニケーションを試みて失敗した後、彼らは自動のAIソリューションを活用しました。SMS、事前録音の通話、郵送などの様々な方法を賢く組み合わせることで、携帯電話を利用して、より容易に契約更新に繋げることが出来、問題を縮小できました。
新規顧客を獲得するのは、既存顧客をつなぎとめるよりも5倍難しいということを覚えておく必要があります。企業は既存顧客を理解することを優先し、真に有益な顧客エクスピリエンスを提供し、顧客のストレスを減らすことで信頼を勝ち取るべきなのです。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。