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モバイルアドフラウドは広告主の予期しないところに存在する

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

プログラマティックやモバイル広告の成長にも関わらず、心配事は尽きることはない。
eMarketerのレポートによると60%のエージェンシー担当者が、インベントリ品質が最大の懸念の一つであると回答している。この回答はある意味正しく、アドフラウドを防止するための多くのソリューションや戦略が存在するにも関わらず、未だに悪意のある行為がはびこっている点についてSizmek社のグローバルプロダクトストラテジストのZach Schapira氏は語ってくれた。

モバイルのような新しいチャネルも例外ではありません。多くのマーケターが、おそらくアプリストアが提供する「セーフティネット」に安心感を覚え、アプリ内のインベントリを高品質でアドフラウドのないものだと考えがちです。しかしながら、リサーチ結果によると、AppleのApp StoreやGoogle Playなどで承認されたアプリであってもアドフラウドは行われているのです。広告主はどんなインベントリを購入する時であっても注意深く戦略を立てる必要があります。

非承認アプリ

スマートフォンが発売開始されて以来、アプリストアで利用可能となるためには厳正な審査プロセスが必要とされてきました。消費者デバイスのほとんどのアプリが承認を得ているものですが、Sizmek社で実施した数億ものアプリ経由のインプレッションを分析した最近の調査結果によると、非承認のアプリからも10%ほどのモバイル広告トラフィックが生成されています。これらは主要な公式アプリストアからダウンロードされておらず、承認プロセスも経ていないものです。これらはモバイル上の消費者体験に影響を与え、広告主に大きな脅威となっています。

半数以上の非承認アプリがアドフラウドと何らかの関連があります。例えばユーザーに見えない形で、広告リクエストを走らせているような場合です。これらのアプリは、大抵の場合トレントというインターネット上でファイルを配布する技術を使って消費者に届けられます。トレントを利用したウェブサイトは大抵品質の低い広告が掲載されており、この方法により届けられたアプリがネガティブなユーザエクスピリエンスを提供しているのは納得がいきます。

広告主は、非承認のアプリに対しての配信を行わないような方法があるのではないかと考えるかもしれません。バイヤーが広告のインベントリを独自の指標によって購入するプログラマティックの出現により、いくつかのバイヤーはユーザー行動や位置情報などを、アプリの承認よりも優先させがちです。しかしながらこれは馬鹿げた戦略です。というのは、ほとんどの非承認のアプリのインベントリは役に立たないインプレッションの獲得につながるからです。非承認のアプリを避けるというのは、すべての広告主にとって優先させなくてはならない項目です。

承認アプリが安全を保障しているわけではない

Zach Shapira氏、Sizmek社 グローバルプロダクトストラテジスト

Zach Shapira氏
Sizmek社 グローバルプロダクトストラテジスト

一方で、多くの企業が承認を受けているアプリに広告を配信することでアドフラウドから逃れられると考えています。しかしながら、Sizmek社は公式ストアからダウンロードされたアプリであっても、ほぼ10のアプリに1つ(8%)がアドフラウドへの関連があることを突き止めています。

これはブラックリストに載っているような開発者が抜け道を見つけた際に起きています。彼らは50種類のアプリを開発し、49はアプリストアより拒否されているかもしれませんが、1つのアプリは承認を経て、アドフラウドにつながります。いくつかのアプリでは、Androidではトラフィックがあるが、iOSではないというようなケースやその逆も見受けられます。これはアプリが一方の承認プロセスでは拒絶されたが、もう一方では承認されたケースと考えられます。

よりクリーンなキャンペーンを実施するためにメタデータを利用する

承認を受けたアプリでさえ、アプリ広告におけるアドフラウドを防止できないのは残念な現状ですが、高品質なインプレッションやエンゲージメントの高い消費者とマッチするために、広告の買い手が出来ることは残っています。多くの消費者はアプリストアからダウンロードした承認アプリのみを利用しています。そのため、広告主はインベントリを購入するアプリを指定することが可能です。

まだあまり探求されていない方法ですが、アプリストアからのメタデータを活用して戦略や安全な購買方法を検討する手段もあります。メディアバイヤーはこのメタデータを利用して、高品質を表す4つ星以上のアプリからのみインベントリを購入するといったことが可能です。同様の方法で、アプリの高い人気や利用を示唆する50万ダウンロード以上や50万以上のレーティングがついているアプリからのみ購入するといった指定も可能です。また、広告主が全ての年齢利用規制のないアプリだけをターゲットにすることも可能で、ブランドにとってリスクの少ないコンテンツ上にメッセージを配信することができます。

用心を怠ることなく完全にアドフラウドの危険性のない広告を買う方法は存在しません。広告主はモバイル広告の購入に際しては注意深く検討する必要があります。アプリがデバイスを利用している消費者にリーチするより安全な方法であることは確かです。広告主はターゲティングとメタデータを活用し、キャンペーンにおいて無駄な投資を避け、アクティブでエンゲージメントの高い消費者にリーチをするためのメディアプランを立てる必要があります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。