テンセント:中国のアドテクはまだまだ伸びる
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
中国のアドテク市場は成長を続けているが、中国の消費者市場を狙っている外国企業にとっては見極めのための時間が必要だ。
世界中のマーケターは、素晴らしいユーザーエクスピリエンスを提供する一方で、消費者に広告を押し付けることのない良策について頭を悩ませている、とテンセントの、アジア及び米国の海外ビジネスを統括するビジネスディベロップメント部門のシニアディレクターであるBenny Ho氏は述べている。彼は消費者の信頼を損ねない形で、微妙なバランスを保った広告戦略について語ってくれた。
ExchangeWireとのインタビューにおいて、中国の消費者にリーチしたい外国企業はまずターゲットを定めることが重要であり、ターゲットは製品の想定ユーザーと必ずしも一緒でないことがある点について共有してくれた。
「私たちは、海外企業にとって、この市場が新しいことを理解しており、そのために多くのABテストを実施しています。それによって、海外企業は当初想定していたターゲットユーザーと実際の違いを実感することができます」
そして、今後海外での支出が見込まれるであろう、これらの中国の消費者に対しての理解を確立しようという企業側のモチベーションは非常に高い。
昨年1億900万人の中国観光客が、2290億ドルもの費用を海外で支出している。2020年の終わりまでに、中国からの外国観光客は2億人まで増えると予想されており、小売やホスピタリティのエリアにおいては非常に大きなチャンスと考えられる。
シンガポール観光協会のデータによると、中国本土からの観光客はシンガポール訪問の最大数を誇り、147万人の人々が2016年前半だけでも訪れている。これは前年同時期と比較しても55.2%の伸びである。
予想されたことだが、多くの企業から、この中国消費者にリーチしたいという強い関心が寄せられており、テンセントはこのニーズに応えるための対応に熱心である、と彼は言及してくれた。このインターネットの巨人は今年国際ビジネスを立ち上げ、中国ユーザーをターゲットとする地域企業に対して「ワンストップサービスの広告ソリューション」と称するプラットフォームサービスを開始した。
このプラットフォームはシンガポール、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、台湾から利用可能である。
中国で90%以上の普及率、8億600万人のWeChat及び8億9900万人のQQの月間アクティブユーザーを誇るテンセントは、このスケール感を活用してブランドのプラットフォーム利用を促進しようと試みている。
Ho氏によると、例えば、中国の旅行客は3.3から3.5日をシンガポールで過ごし、徐々にツアー旅行よりも個人旅行が増えているとのことである。これは、中国消費者が、シンガポールに出発する事前に中国にて、訪問する店舗や購入する製品情報についての下調べをする層が増えていると言って良い。
企業は、中国消費者が旅行に出る前に、彼らの旅行日程について把握する必要があり、テンセントは彼らの多くのコミュニケーションプラットフォームを利用して、マーケターにターゲットへのリーチが行えるソリューションを提供しようとしている。彼らは独自のDMPと広告ソリューションを有し、ターゲティングや最適化、動画広告フォーマットなどを提供している。
しかしながら、アリババ、百度、テンセントなどにDSPとしての役割を期待は出来ず、広告インベントリーは独立して存在することで、より透明性の高いものとなっている。
この点についての見解を尋ねられると、Ho氏は「中国においても様々な発展が見られ、現在は小規模ながらも中国の広告市場も大きく変わっていくでしょう」とコメントしてくれた。
テンセントの国際ビジネスは今年始まったばかりであるものの、様々な市場からテンセントのサービスを利用したいという声があがっており、全体のプロセスについて様々な議論を行っている模様である。
Ho氏はまた、計測方法についての重要性についても指摘してくれ、それによって企業がキャンペーン結果やインパクトについて正しい理解が得られると言及してくれた。「私たちが作業プロセスについてのサポートを行い、顧客の期待する結果を提供できたときに顧客の満足度は高まります」。
また、テンセントは最近AppsFlyerとパートナー提携を行い、国際的な企業はAppsFlyerのツールを利用し、キャンペーン管理が行えるようになっている。
Ho氏は次のように述べてくれた。「企業は中国消費者マーケットの規模感について理解していますが、彼らにリーチする方法を知りません。私たちはそのような企業に対してエンドエンドでキャンペーンを実施できるプラットフォームを提供したいのです」。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。