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「ネイティブ広告の重要性、啓蒙したい」 ログリー代表に聞く業界最新動向 [インタビュー]

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ネイティブ広告向けプラットフォームが好調なログリー。同社は今年8月、自社で提供するリコメンドエンジンサービスにおいて、新たにアプリ向けにSDKを開発、開始するなど精力的に新商品開発に乗り出している。

この新しいサービスの概要やリリースの背景、ネイティブ広告の現在の市場環境などについて代表取締役の吉永浩和氏にお話をうかがった。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

― 自己紹介をお願いします。

私はもともとエンジニアをしており、2006年の大学院在学中に起業しました。2009年ぐらいからメディア向けのレコメンドエンジンのサービスを開始し、それが当社の母体となっております。当時はレコメンドエンジンではなく、「関連記事を自動で生成するエンジン」と呼んでいました。

― 貴社の事業概要についてお聞かせください

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起業してから10年、様々なサービスをご提供してきましたが、現在の主力事業は「logly lift」というネイティブ広告のプラットフォームです。他にもブロガー向けの「Zenback」というツールなどはありますが、過去に提供していたサービスは、現在ほぼ「logly lift」に統合しています。「logly lift」の中にサブサービスとして、レコメンドエンジンや分析サービスなどをご用意している形態です。以前は「logly lift」と並行して、「logly DSP」というディスプレイ広告サービスも行っていましたが、現在はほぼ「logly lift」に一本化しています。

当社のネイティブ広告プラットフォームの中には、レコメンドエンジンを中核としたコンテンツディスカバリーの領域と、インフィードの領域、この2つを取り揃えています。更に、誰にご提供するかによってサービス形態が異なり、クライアントや広告代理店様にご提供する「logly lift」と、媒体社様にご提供する「logly lift for Publisher」があります。

最近、当社のような形態のプラットフォーム会社、ネットワーク会社にだけではなく、媒体社様にもネイティブ広告の需要が高まってきています。例えばコンテンツを主体としたタイアップ企画や記事広告などをネイティブ広告の枠から送客して、よりタイアップ誘導の効果を高めていく、といったようなニーズですね。その際に「logly lift for Publisher」をお使いいただくと、レコメンドエンジン+アドネットワークだけでなく、ダイレクトセールスで手に入れた純広告の配信エンジンとしてご活用いただくことができます。昨今はここのニーズが非常に高く、これはひとえに媒体主のネイティブ広告の需要が高まったのが背景にあるかなと思いますね。

― 今回リリースされた「logly lift Mobile SDK」の概要と特徴、またリリースの背景についてお聞かせください。

logly lift Mobile SDK」は、ネイティブアプリ専用のレコメンドエンジンです。組み込む際にSDKを提供し、そのSDKを使ってアプリデベロッパー様に構築いただくと、簡単にレコメンド機能を自社のアプリ内に取り込むことができます。この構想自体はずっと以前から持っていました。以前は、様々な媒体社様がアプリを作っていましたが、ほとんどWebViewを使っていました。SDKを用意するまでもなく、既存のWeb対応のソリューションと同じものをご提供すれば、WebView対応のアプリであれば動作していたのです。

しかしここ1~2年は、ネイティブアプリをリリースされるケースが増えてきました。ただ、ネイティブアプリに組み込むためのレコメンドエンジンを媒体社様自身で作ろうとすると、それなりの期間とコスト、ノウハウが必要です。結果的にネイティブアプリにレコメンドのパーツを設置している企業様は、Webに比べてかなり少なかったのです。そこで、構想としては持っていた「logly lift Mobile SDK」を構築したという状況です。

ビジネスモデルはWeb版である「logly lift」と全く同じで、単純にアプリに置き換えたイメージです。「logly lift for Publisher」の純広告配信機能も使用可能で、アプリの広告枠の中に自社の純広告を配信できたり、それがない時にはネットワーク広告を配信して収益を還元したり、というマネタイズもできます。もしWebも持っていれば、当社のエンジンをご利用いただければ、一つの案件をワンストップでそれぞれのデバイスに配信することもできるのです。アプリのレコメンドエンジンを提供している企業様は、あまりないと認識しています。今後もネイティブアプリは増えていくでしょうから、ますますニーズは高まると考えています。

レコメンドサービス、ネイティブ広告とのセットで伸長

― レコメンドサービスの領域は、少し前から活況を得ていますが、その理由についてメディアのマネタイズ環境の現状と合わせてお聞かせください。

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私が知る限りでも、2009年以降からずっとレコメンドのニーズはありました。ではなぜ最近になって多くの参入事業者が現れたかというと、ネイティブ広告とセットになったからというのが大きいかなと考えています。当時はあまりメディア用のレコメンドエンジンを提供する事業者は少なかったのです。しかも、ライセンスモデルを提供している企業しかありませんでした。企業様としても導入したいけど、そのライセンス料を支払えるほどではない。結果的に、導入していたメディアは資本力のあるところに限られていたのです。

これだと市場も当社の規模も伸びないなと感じたので、無料モデルを出すことにしました。無料の代わりに広告を表示したのです。それが当社のスタートでした。

2012~2013年頃には、同じようなビジネスモデルとして、レコメンドエンジンを無料で提供する代わりにマネタイズとして広告をその枠に出し、メディアとレベニューシェアするというモデルがじわじわと、特に米国で出てきました。そのおかげもあり、メディア様の導入がどんどん増えていったのかなと。少なくとも当社はそうでしたね。

ただ、このサービスを始めた2011年ごろ、当社は広告事業をやっていなかったので、ディスプレイ広告を出していました。しかし、レコメンドはほとんどテキストだったのです。テキストが5段ぐらい並んだその下にバナーがどーんと出たりするので、嫌がるメディア様も多かったです。当社としてもこの市場は拡大していかなければいけなかったので、なんとか媒体社様に嫌がられない形で広告を出す方法はないかと考え始めました。見た目の面でもそうですし、AdSenseを入れていたりすると、契約でこれ以上いれられないとか、枠を増やせないということもありましたし。テキスト広告を出したり、アフィリエイトをしたり、試行錯誤しましたね。ただどうしてもユーザーを釣ってしまっていることが多かったので、なんとかユーザーに理解してもらった上で広告をクリックしてもらうことができないかと考えました。それには他のレコメンドと同じようなコンテンツにしていけばいいのではないかと考え、「logly lift」が生まれました。

最初はクリエイティブや素材がなかったこともありあまり売れませんでしたが、OutbrainさんやTaboolaさんが日本に参入してきたり、世の中がコンテンツマーケティングをやっていきましょう、という風潮になったり、様々なことが同時並行で起こりました。そこから現在の市場ができるのは早かったです。

― 次に、古くから取り組んでおられるネイティブ広告について。現在の日本の市場環境をどのようにみておられますか?

ネイティブ広告の市場ができたのは、当社にとって非常に良かったことです。当社はいち早くネイティブ広告の市場を作っていったという自負もあります。この領域はより伸ばしていきたいです。ネイティブ広告が伸びた背景には、ディスプレイ広告がクリックされなくなった、煙たがられたという点があると思います。ネイティブ広告はそういった、「インターネット広告なんて踏まないよ」と考えているユーザーにも見てもらいたい、そんな役割を担っています。

そのために必要なのがユーザーにメリットのある情報コンテンツですが、現状日本ではそれを用意できているネイティブ広告は決して多くはないです。目的が同じインフィード広告にもディスプレイ広告をそのまま流していくという風潮になっています。そこはコンテンツディスカバリーやレコメンドという役割ではないはずなんです。そういう点が日本ではあまりできていないと感じています。

― ネイティブ広告市場を海外と比べたとき、日本の特徴があればお聞かせください。

まず、日本のLPはまさにLPという形ですが、海外では文章も多くそこまでLP感がないことが多いです。現在日本で起こっているような、ネイティブ広告はコンテンツやブランディングとして使うべきではないか?という議論も、海外では2012~2013年ぐらいに既になされています。かと言って日本が同じプロセスを辿っているかというと、インフィード広告がディスプレイ広告の延長線上のものになってしまっているという独自性が、日本にはありますね。

今後の課題はネイティブ広告枠の魅力の啓蒙

― ネイティブ広告市場が発展する上で、どのような課題を感じられていますか?

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先程も言った、本来の目的でのネイティブ広告を展開するためには、様々な難しさやハードルがあると感じています。一応、見た目だけを合わせてもコンテンツらしく見せることはできますよね。でもそれはコンテンツではないのです。そこが難しいところですね。コンテンツを広告にするのと、広告をコンテンツのように見せるのでは大きく異なります。
そういった意味では、当社のようなプラットフォーム側の啓蒙がまだまだ足りていない証拠かなと感じています。広告主様や代理店様にネイティブ広告枠の魅力を伝えきれてないのです。「コンテンツにしたらこんなにいいメリットがある」ということを伝えきれてないから、コンテンツを作らないのだと思います。

また、ダイレクトレスポンスに特化した運用型広告との違いも広めていかなければと考えています。短期でユーザーのニーズを刈り取る運用型と比べると、コンテンツを使った広告はニーズを刈り取るというよりもニーズを生み出すことに特化しています。「買いたい」という衝動になるためのものが必要なのです。それがコンテンツとなり、未来の顧客を育てます。そういったニーズをまだインターネット広告に求めていないんですよね。マス広告でいいじゃないかと思っている方もいらっしゃるでしょうし。ただその意識は変えたいですし、変わっていくと思います。

― ネイティブ広告市場の今後とその中での貴社の戦略についてお聞かせください

日本のネイティブ広告市場は、コンテンツディスカバリーとダイレクトレスポンス大きく二極化してしまうのではないかと思っています。様々なメディアが現れているので、市場自体は大きくなっていくとは思いますが、このままだとディスプレイ広告の二の舞になるのではないかと懸念しています。なので、当社としては何らかを変えていくつもりです。具体的には先程申し上げた、ニーズを生み出す広告の重要性の啓蒙ですね。

また、メディアの多様化により、ユーザーがそのメディア様のブランドを知らずにコンテンツを読んでいることも非常に多いです。メディア様が求める人たちがやってきていないことがままあるのです。そこで当社は、メディア様が求めるターゲット層がくる仕掛けを提供していきたいと考えております。そのためのソリューションを近々リリース予定です。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。