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電子メールは2016年の広告主の万能薬となり得るのか?

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

電子メールはデジタル広告の問題を全て解決することができるのだろうか?ESBConnect社のリターゲティング部門を統括するStuart Austin氏は、ExchangeWireに対して電子メールの現状と利点について説明してくれた。電子メール活用への低い評価によって、デジタルマーケティングにおける真の価値が見損なわれていると述べている。

2016年のオンライン広告に関する様々な記事、ポスト、ブログを読んでいると、広告主及びエージェンシーに影響を与える様々な問題があることがわかります。そのうちの多くは、広告主が視点を変えることで、電子メールが解決できるかもしれません。

透明性とエンゲージメント

非常に多くの買い手が、広告の配信先や配信対象について不明瞭で、購買したページで、広告がきちんと閲覧できる状態になっているかも把握していません。買い手が希望するサイトリストについての透明性は欠如しており、ユーザーが対象先で広告が閲覧できる状態になっているのかすらわかりません。

電子メールはメールの開封率について完全な透明性を保証しており、メールを開封したユーザーは意思をもってアクションを行ったため、エンゲージメント性のあるユーザーと位置付けることができます。(広告の半分が0.5秒の間に50%の人々に表示されるような)スクリーン上での広告の表示有無とは異なります。

詐欺(フラウド)

広告主とエージェンシーは、潜在的な詐欺やボットトラフィックに対して非常に警戒しています。大凡70億ドル、または全世界の広告投資の25%が広告詐欺に消えており、広告主にとって大きな問題であることは明らかです。

Group Mは、この8月にJohn Montgomery氏をGroup Mのブランドセーフティのエグゼクティブバイスプレシデントとして、任命しました。雑誌のインタビューにおいて「私たちには守るべき大切なブランドがあり、私たちのポートフォリオにおいて長期的な、価値のあるブランドを重視していきます。デジタルメディアへ移り変わるにつれて、企業はブランドの安全性についてより危惧するようになっています」とMontgomery氏は説明しています。Group Mの顧客はこういった対応に高い評価を下しているとのことです。

ユーザーとのアドレス、電子メールなどによる直接的な関係性の確保においては、詐欺的なトラフィックの問題はありません。電子メールを利用する企業はスパムの問題を解決する必要がありますが、これは広告主よりも電子メールマーケティング企業の問題です。電子メールをキャンペーンに利用する際には、広告詐欺の問題は存在せず、企業は投資した費用が正しく使われることが保証されます。

行動を元にしたターゲティング

ユーザーに関してのより多くのデータが利用可能になり、広告主が彼らのオンラインにおける行動履歴に応じて問題に取り組むことは自然な流れとなっています。このサポートを行うことは、パブリッシャーには対応するのに費用がかかり、キャンパーの拡張性に問題を与えています。私たちの蓄積したデータベース上の電子メールアドレスを活用することで、ユーザーのリアクションから行動情報を理解でき、データを開封率の向上に活用することができます。この機能を送信時のDMPターゲティングと組み合わせることで、電子メールは非常に正確な行動ターゲティングとして利用され、開封率は35%程度まで高まります。このレベルのターゲティングとエンゲージメントは他の広告媒体で実現するのは難解です。

パフォーマンス

標準的なディスプレイ広告パフォーマンスは10年もの間。数値が変わることなく、業界標準のCTRは0.07%というのは、業界の誰もが認知している数値となっています。この数値は業界としては、問題のない数値でしょう。実際、広告支出は引き続き増加していますが、どういった標準と比較しても低い数値なのは確かです。もしより高いエンゲージメントやユーザーからの反応が望めるのであれば、全ての人が検討をしたいと考えるのではないでしょうか?標準的なクリックスルー率が(現状のディスプレイ広告の10倍である)0.7%で、非常に上手くいった場合には20%ほどの数値が望める電子メールキャンペーンは、ディスプレイキャンペーンとは比較にならないのではないでしょうか?電子メールでのクリックは決して偶発的ではなく、開封された電子メール上でしか起こらない点について再度強調させてください。電子メールはターゲットからのエンゲージメントやクリックを稼ぐための最良の方法なのです。

クロスチャネル

モバイル利用の増加はパブリッシャー、広告主の両者にとって大きな挑戦となっていました。モバイル上のユーザーから、デスクトップユーザーと同様のエンゲージメントを獲得するのは難解なことです。クリックスルー率は高いものの、それは大抵誤った操作によるものでした。ユーザーはモバイルデバイスの利用について異なった所感を有しており、他のスクリーンと比べてもパーソナルなものとして考えています。

パブリッシャーは大きな数のユーザーがモバイルに移行しているのを把握しており、CPMにおいて、多くのユーザーを取り逃がしている点も、コンバージョンを思うように獲得できない現状も理解しています。これはサインインされたデータなしには解決の難しい問題です。

70%の電子メールがモバイルデバイスで開封されているという事実により、電子メールのサービス事業者のデータは、よりリッチかつ多面的なものになっています。私たちは、ユーザーがどのデバイスで電子メールを開封しているか、それぞれの電子メールアドレスにおけるクロスデバイス利用の詳細についてなどを把握できます。私たちの広告のトラック機能により、より優れたコンバージョンや広告主に対しての透明性の高いフィードバックが可能になります。モバイルで電子メールを開封するユーザーは、彼らの個人スペースが侵害されたというような悪い感情は有しません。

アドブロック

電子メール広告は、ディスプレイ広告と同じようなアドブロックの対象にはなりません。ユーザーが広告ブロッカーを搭載している場合であっても、ディスプレイ広告にてスクリーン上で起こるような、クリエイティブの表示がされない様な問題は電子メールではありません。電子メールで類似したものとしてスパムフィルターがありますが、これについての対応は当社で現在行っているところです。当社では、もしスパムと識別された場合には、有効な配信と認識しない形で対応しています。

自動化

電子メールは、広告プロセスにおける自動化の犠牲となってきました。電子メールにおいてRTBは存在しないため、広告主はマーケティング費用をディスプレイ広告に費やし、キャンペーンにおけるパフォーマンス改善に努めてきました。ESB ConnectはDSP経由で利用可能なマーケットプレースを立ち上げ、現在はEmail Switchboardサイトにて利用可能です。

以上のように、もしあなたが、シンプルで、詐欺の恐れがなく、透明性の高い、自動化をサポートとした、クロスデバイスの、高エンゲージメントかつパフォーマンスを生み出すキャンペーンを求めているのであれば、電子メールはそのソリューションとなりえます。私が考える限り、電子メールは広告におけるかなりの万能薬となり得るでしょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。