いまのビューアビリティ基準は効果に値しない:Meetrics社とPlatform161社へのQ&Aセッション
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
8月22日、Meetrics社とPlatform161社の両社が入札前の段階において、ビューアビリティの保証を提供するサービスのために提携するとの発表があった。
Meetrics社の広告ソリューションにPlatform161社のDSPが組み合わされることは、DSP内において初めてビューアビリティが保証される可能性を示唆している。クライアントは50%、75%、90%の3つの表示率、または1秒、3秒、5秒の最低表示時間からターゲットを設定することができる。ExchangeWireはMeetrics社 インターナショナルビジネス ディレクターAnant Joshi氏とPlatform161社 CEO Arno Schäfer氏にインタビューを実施し、今回の発表及び将来のビューアビリティ計測に関しての影響について話を聞いた。
― この提携がキャンペーン時のビューアビリティ計測に与える影響はどのようなものですか?
Anant Joshi氏、Arno Schäfer氏: ビューアビリティの低下は特にプログラマティックにおいて広告主の大きな悩みです。現在の一辺倒のやり方では懸念を払拭することが出来ず、私たちの今回の提携によって、カスタマイズ可能なビューアビリティ計測を提供し、新たな形でプログラマティックによる購入形態をサポートします。入札前の段階において柔軟な設定を可能にすることで、買手はコストの効率化と品質のバランスを確保することができます。
究極的には、ビューアビリティに関してより上質な管理を行うことで、ビューアビリティのレベル向上に繋がっていきます。
― 現在、ビューアビリティを計測するにあたっての業界の問題はどのようなものがありますか?
最初に、ビューアビリティにおける定義が一つしかないことは大きな制限となっています。企業はどのようなビューアビリティ品質の定義が最も良い結果を産むのかを知るすべがありません。現在使われている、広告ピクセルの50%がスクリーン上で1秒以上表示された状態、という基準は十分な効果を産まない原因となっています。次にモバイル計測、とくにアプリ内での標準は、より成熟化する必要があります。
また、市場におけるビューアビリティのソリューションは、現在まで、キャンペーン予算が費やされた後に、ビューアビリティの計測及び最適化を行うことしかできません。結果として、閲覧されていないインプレッションに対して余計な費用を費やす形になっています。
― MRCのガイドラインには、広告ピクセルの50%が、スクリーンに1秒間表示された場合を最低限のターゲットとする、と定義されていますが、業界でこの広告ピクセルの値と時間設定が高すぎるという声があることに対してはどのような考えを持っていますか?
正直にいって、私たちはこの標準が高すぎるという声を聞いたことがありません。MRCの50%と1秒という値は最低限の標準で、何かを始めるには何らかの値が必要です。これらの基準に加えて、何かしらのベンチマークを定義するのが良いのではないかと思います。これはオリンピックのようなもので、大会に出場するためには、最低限の記録が必要ですが、メダルを獲得するためにはより高い記録が必要です。最低限の記録があることは、より良い記録を出す努力をしてはいけないこととは異なります。
最も重要なのは買手が選択肢を持つという点です。私たちは、オーディエンスへのリーチが割に合うものであるならば、数字は高い方が良いと考えています。
― ビューアビリティのターゲットとして割と広い設定が可能ですが、広告主はテストをして自分たちに合致するものを学習することができるのでしょうか?また、そのようなアプローチはビューアビリティの理解において有効でしょうか?
私たちが認識している限りでは、広告主は、素早くどのようなビューアビリティの定義が、自社のキャンペーンにおいて機能するかを学習することができます。また、特にビューアビリティの取り組みが初めての場合は、段階的に改善を施していくことができます。例えば、四半期ごとにコストインパクトやキャンペーン結果を確認しながら、目標値を上げるような対応も可能です。このような戦略は直接的な購入を行う場合により効果をあげますので、プログラマティックにおいても最適です。
― 例えば、10秒のビューアビリティが適しているような広告はどのようなものですか?
ブランディングであれ、パフォーマンス重視のものであれ、どういった広告にも適用できます。私たちが行った調査によると10秒程度ユーザーに閲覧されたディスプレイ広告が、最も効率的な広告効果をあげるといった結果が出ています。表示が5秒以下の場合は、効果は劇的に下がります。広告の閲覧時間が20秒を超える場合もまた、効果は下がります。これは驚きの結果かもしれませんが、ユーザーがスクリーンにそれほど注意を払っていないことに起因するかもしれません。端的にいうと、特にブランディングのキャンペーンにおいては、広告閲覧時間が10秒を超えるのが望ましいでしょう。
― 100%のビューアビリティを保証するものがありませんが、この背景にあるものは何でしょうか?
100%のオプションは近いうちリリースします。実際いくつかの企業に対しては既に100%のビューアビリティを提供しています。しかしながら、私たちの調査結果では時間計測の方が表示率よりも重要なことがわかっています。例えば、仮に大きな広告スペースを購入し、これらが2、3秒表示された場合に、ピクセル数の90%と100 %では大した違いは見られません。
― この提携が業界におけるビューアビリティの標準化の改善に繋がる試金石となると考えていますか?
もちろんです。非常に多くのエージェントや広告主が主要なKPIの一つとしてビューアビリティを捉えるようになっており、これはオンライン広告における品質及びビューアビリティの改善のための正しいステップだと感じています。
私たちがビューアビリティの改善についてリードすることができれば、他社も追随し、全体へ影響が波及してくと感じています。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。