ヘッダービディングは忘れよう。これからはサーバー間通信(S2S)2.0だ。
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
パブリッシャーは、パブリッシングと広告のエコシステムの確立のために、より多くのヘッダービディング者及びサードパーティのサーバーソリューションを必要としている。Switch Concepts社のCROであるAndy Mitchell氏は、何故パブリッシャーがファーストパーティのサーバー間ソリューションを必要とし、全ての投資がヘッダービディングに向かう中で、なぜそのような動きが必要なのかについて説明してくれた。
ヘッダービディングに関しての議論が、最近、良い方向にも悪い方向にも盛り上がっています。ヘッダービディングは、最近急速に利用が進んでいますが、元々数年にも渡って利用されてきたテクノロジーです。ヘッダービディングによって、バイヤーの間で競争を増加させることで、パブリッシャーの収入増加に寄与する一方、このクライアントサイドのオークションシステムは、ユーザーが求めるものとは大きく異なります。現状、ヘッダービディングにより、広告ブロックの利用の促進につながっていますし、多くの点で、今まで利用されていたウォーターフォール型の価格アプローチを進化させたものにすぎません。
何故でしょうか?ヘッダービディングは、クライアント環境で実行可能な特別なラッパーをウェブブラウザーに仕込みます。ほとんどのウェブ利用のユーザーやサイトが避けたい点は、非常に多くのサードパーティのスクリプトがクライアント・サーバー間でやりとりされることで、レイテンシーの問題が生じ、ページの読み込みスピードに時間がかかりユーザビリティが悪化するからです。広告の読み込みに時間がかかり、ユーザーを逃してしまうのです。
パブリッシャーがリーチしたいオーディエンスに逃げられてしまう点や、ユーザーに広告ブロッカーの導入を促進する結果につながり、広告収入が完全に閉ざされてしまう意外の点でも、ヘッダービディングはオークションにおいて非常に多くの入札を逃してしまっています。何故ならば、ヘッダービディングは限定的なオークションを実施しているとも言え、タイムアウトの発生により参加率は落ち込みます。更にいうと、ヘッダービディングによってバイヤーに提供される情報はかなり乏しく、価格以外の情報は非常に稀です。
それでは、どこからヘッダービディングは来たのでしょうか?ヘッダービディングは、パブリッシャー自身が作り出してしまった問題から派生しています。インベントリーを生成する場合に、その販売計画を外部に実行させる形態にしていたため、どのように決定プロセスが発生するかの透明性に欠けているのです。
つまり、彼らはオークションを経由して得られたもの、実質的に使わざるを得ないのです。そこからのデータのアウトプットは乏しく、全体のプロセスの最適化はなされておらず、信じられないほど非効率です。
サーバー間(S2S)のソリューションが対策として多くの注目を集めています。サーバー間ソリューションは、ユーザーの顧客へのプレッシャーを無くし、レイテンシーを抑え、ヘッダービディングのようなリニアなウォーターフォール形式でなく適切なオークションシステムとして作用します。このソリューションはパブリッシャーの選択としてより優れたものと考えられますが、少しだけ複雑性が増す点や、多くのパブリッシャーがすでにヘッダービディングに多くの投資をしてしまっている点、またヘッダービディングで収益を挙げている点などから、積極的な導入には至っていません。
それでは、実際パブリッシャーは、サーバー間ソリューションに移行することで、より多く得るものがあるのでしょうか?サーバー間ソリューションへの移行によって、パブリッシャーは、最適化の改善により量的な面での増加を見込むことができ、より効率的なシステムを構築できます。しかし多くの事業者にとって、より良いユーザー体験やバイヤーへの有益な環境を作り上げるとはいえ、これだけではヘッダービディングに費やした投資を捨て去るには十分でないでしょう。
パブリッシャーは必要とするのは、言うなれば、サーバー間通信(S2S) 2.0です。単純にサードパーティのサーバー間環境を確立するだけでなく、パブリッシャーのテクノロジースタックの根幹となる要素を統合したファーストパーティによる関係性を確立することです。
ファーストパーティを利用したS2Sソリューションに移行することで、パブリッシャーは、意思決定のプロセスを内製化し、プログラマティック採用のためにアウトソースしていた内容を管理することが出来るため、真に情報に基づいた意思決定を行えます。パブリッシャーは、購買を希望する全てのブランドの全ての価格についての確認が可能で、希望すれば彼らが展開するクリエイティブについても把握できます。価格及びボリュームの両面を同時にトラック可能な統合型のデータセットを生成し、全体での並列的なオークションを実施します。これはヘッダービディングとは異なる世界で、サードパーティのサーバー間通信からのステップアップと言えます。
ウォーターフォール型から並列型のオークションへ
(a) が一連の流れ(ウォーターフォール)であるのに対して、(b) は並列(相対的)である
ヘッダービディングに対してどのような投資をしていたとしても、このような変化を起こすことは価値のある行動です。また、ユーザーに対して優れた体験を提供する効率的なシステムを作り上げることは、パブリッシングと広告のエコシステムの未来を確保することにつながります。
パブリッシャー、広告主、ユーザーへの良いニュースとしては、サーバー間のソリューションがすでにSwitch社より提供されており、優れたデータ及び分析機能を備え、よりパブリッシャーのインベントリーの管理を有意義に実施できる点です。誰が購入するのか、どのように販売されるのか、いつ販売されるのか、どのように価値がつけられるのかと言ったことを正しく把握し、ユーザーからの平均収益の向上につながります。
それでは、どのパブリッシャーが、セールスの内製化に踏み出し、セラーがバイヤーに対して助言を行えるような体制を始めるのでしょうか?
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。