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なぜデジタルマーケターはデータ誤差を修正しているのか

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

ビックデータによって、オーディエンスを正しく理解しターゲティングするための、非常に多くの有効かつ潜在性の高いソリューションが提供されるようになった。しかしながら、実際にそれらは果たして正しく機能しているのであろうか?ExchangeWireはHouse of Kaizen社のCEOであるDavid Shiell氏にビジネスインテリジェンスの活用によって、ビッグデータの管理にどのような変化がもたらさせるのか、という点に関してインタビューした。

数年前に、マッキンゼーのグローバル機関が、小売店は近い将来ビッグデータを効率的に活用するようになり、オペレーションマージンを60%以上も向上させることが可能になる、という非常にわくわくさせるような予想を発表しました。そして最近になり、マッキンゼーは主要企業の分析部門のリーダーに対して、データの最適化によってどの程度の収益及びコスト改善につながったかを調査しました。結果ですか?1%でした。

ビジネスにおいて、データを、効果的に取り込み、設計し、有益に活用していく段階には、まだまだ至っていないのが実際のところです。多くの人々にとってビッグデータは、より大きな悩みの種をもたらしているのです。しかしながら、デジタルマーケティング企業は、ようやく、長く求められていた形での進歩をみせ、データを最適化し、収益化をスタートさせようとしています。

2nd Watch社の調査によると、86%のマーケターが自社のデジタルマーケティング戦略のために、ビッグデータを実際に利用しているか、使う予定があると回答しています。加えて、デジタルマーケティングにビッグデータを活用している3/4もの人が、彼らの取り組みは「かなり」もしくは「非常に」効果的と回答し、83%がマーケティングキャンペーンにおけるビッグデータの利用を今後増やしていきたいと答えています。データを今までよりも賢い方法で活用していこうという意志を持つ人々が増えています。

エージェンシーにとって、強力なデータインフラに投資を行い、自社及びクライアントのビジネスの管理を行っていくことは不可欠です。デジタルマーケティング企業は、より効率的なデータ管理を実行していく必要があります。しかしながら、数百のデータソースを組み合わせ、再設計し、データを作り変え、細かな分析が行える様な形でデータを集めて抽出させることは、企業側が持つリソースを考えると(財政的にも人材的にも)非常に困難です。そのため、内的なサポートを得るために、いくつかの基本的な計算によって、この様な投資の有効性を明らかにできます。

2014年に、「Cortex」というビジネスインテリジェンス(BI)の開発に先立ち、House of Kaizen社では、過去12ヶ月に渡って作業工数のシートを分析し、メディア部門が、手作業でサードパーティデータの数字乖離を修正する時間についての分析を実行しました。結果はショッキングなものでした。

・ 平均的な1週あたりのエラー: 10
・ 平均的なエラー修正時間: 3時間
・ 平均的な1年間の労働時間: 1560時間
・ 年間平均コスト: £156,000

この日常的でありながら必ず必要な作業対応で、企業は年間15万ポンド以上の出費を強いられていたのです。この結果には、残業やストレスによる感情面の影響が加味される必要があります。

上記の計算結果と、他の内部KPIはCortexのようなBIシステムを設計する上で、非常に重要な要素となりました。これは、私たちがクライアントに、ソリューションの利点を伝える前のことです。私が強調したいのは、Cortexの主要な機能は、エージェンシーを主眼において作られている点です。クライアントは、もちろん影響を与える存在ではありますが、最重要視はしていません。私たちのシステムのプライオリティを決めることでフォーカスをする点が固まります。

簡単にいうと、BIシステムはクライアント及びメディアプランナーの両方に対してレポート及びプランニング機能を提供し、単一及び複数チャネルにおける原因と効果の理解を促進します。このことは、「何が起こるのだろうか」という疑問に対して、予言的な分析が実行できる程度の基礎的な能力が必要とされる点を示唆しています。

その他、より進んだ利用によって、ユーザー獲得、アクティベーション、顧客維持などを実行するための、動的なクリエイティブの最適化やコンテンツのパーソナリゼーションなどが可能になります。

基礎的な機能として、BIは次の4つをサポートしている必要があります。

正しいデータ及びソリューションの統合管理が行えること

予想分析のためにディープデータを高速処理できること

予知機能を備えたインテリジェンス機能を通じたオーディエンス及びメディアパフォーマンスの最適化

データのより優れた収益化

 

もしあなたがこれらを達成できれば、単純なデータやインサイトを利用可能なビジネスインテリジェンスに変えることができるだけでなく、リソースの効率化などの重要な管理関連の問題解決や、コストセンターからプロフィットセンターへの転換、更に重要なことには、スタッフをより幸せに、インサイトを伴った生産性の高い人材に変えていくことができるでしょう。

しかしながら、私たちの業界におけるほとんどの事象と同様、正しいツールを持つことだけでは十分ではありません。データ効率性を突き詰めるためには、エージェンシーは分析を行う文化を自社に築く必要があります。誰かがこの問題をリードする必要があります。デジタルマーケターはデータを賢く利用することが、ブランド、消費者、自社のビジネスにとってどれほど重要なのかを理解する必要があります。

クライアントもまた、先端のデータ管理やレポーティングシステムが、どのように変化を与えるかを理解する必要があります。時間や努力を要し、費用も必要ですが、長期的な目的を果たすためには必要な作業です。

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David Shiell氏、
House of Kaizen社 CEO

House of Kaizen社では、このプロセスの初期にあります。既存の顧客や新たな顧客にBIシステムを活用してもらい、自社を再発見するための旅を始め、このような技術的な進歩によって、どういったことが実現できるのかを検討するためのサポートを行っています。

私たちの顧客の一社は現在月に9つの異なるレポートを(時間のかかるマニュアルのやり方で)生成しています。これらのデータを照合して、重複やデータの齟齬などを除く作業は、顧客及び彼らのエージェンシーにとって非常に多くの時間を要します。この実例における私たちのゴールは、彼ら及びサプライヤに大きな効率化の機会を提供する一方で、顧客にデータを統合するだけでなく、インサイトを抽出するためのより良い方法があることを理解してもらう点です。

デジタルマーケティングにおける効果的なデータの利用方法に関して、次に起こるのはどのようなことでしょうか?

コンテンツのパーソナリゼーションを促進し、ウェブサイトが個々のユーザーニーズを満たす異なる会話を実現できるためには、どのようにデータが活用されるべきか、その他の実例を注意深く見守っていく必要があります。

エージェンシーは、より高いレベルでの予想、実質的には、規範的分析に移行していくでしょう。これが私たちのCortexが目指しているところでもあります。私たちのミッションは規範的分析におけるパイオニアとなり、様々なデータの間に存在する関係を紐解き、これらが私たちのKPIに活用される方法を模索していく点にあります(例えば、「どの引き金をいつ引くか」のような点の模索)。

データ管理システムは、リアルタイムのインサイトやプログラマティックのアルゴリズムに基づいた入札などによりプログラマティック広告を促進し、全てのデバイスにおいて、正しい時に正しいメッセージを消費者にリーチさせるための効率性の自動化という面において、より卓越したものとなっていくでしょう。

急速なツールの進化及び組織の適応により、スプレッドシートやピボットテーブルからやっと離れられる様になるでしょうか?時間が経てばわかることですが、House of Kaizen社は「する」ことを減らして、「考える」ことに集中できるような変化が起こると楽観的に考えています。それを実現するために、BIは非常に適したソリューションです。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。