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現在のヘッダービディングにおける選択肢の本質を探る

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

オープンなヘッダービディング対、独自のソリューション。AppNexus社のパブリッシャーテクノロジーグループ、製品管理部門のバイスプレシデントArel Lidow氏が、オープンソリューションの利点について語ってくれた。
 

2年ほど前までは全く聞かれることはなかったが、最近ではヘッダービディングについて至るところで語られるようになり、もはやヘッダービディングがどのように動作するかなどの説明は不必要なほどです。特長は非常に簡単で、ヘッダービディングにより、パブリッシャーは不利益を被るようなオークションを避け、GoogleのDoubleClick for Publisher (DFP)やアドエクスチェンジにおけるコスト増を回避することが出来ます。ヘッダービディングにより、パブリッシャーは自身の持つ在庫の本当の価値を知り、本当のデマンドにアクセスが出来、インプレッション毎の収益増が見込め、正しくインプリされた場合には、レイテンシーの問題を避けることも出来ます。
 

Photo: Arel Lidow氏, AppNexus社しかし、実際のところはより複雑なのが実情です。既に世の中に登場し、混乱を招いている他のテクノロジーと同様に、ヘッダービディングが、独自の市場を切り開きました。ヘッダービッディングのラッピングコードの開発は「大きなビジネス」となり、多くの競合が存在し、それぞれが独自のコードを世に送り出しています。
 

そして、GoogleによるExchange Bidding in Dynamic Allocation (EBDA)のリリースにより、Google自身がヘッダービディングのリングに参入し、パブリッシャーが自身のプラットフォームに留まるように試みようとしています。
 

基本的に、ヘッダービディングのテクノロジーは3つの異なる主張に分かれます。ヘッダービディングテクノロジーはオープンで無料であるべき、と信じる人もいれば、ヘッダービディングは独自のソリューションとして販売されるべきだと考える人もいます。そしてGoogle EBDAもあります。
 

EBDAの価値を測ろうとする場合に、ヘッダービディングが現在解決した問題をEBDAは提供しているのか、という点を問わずにはいられません。EBDAではパブリッシャーが、自身が選択したどのようなデマンドに対しても直接アクセスが可能なのでしょうか?Googleはパブリッシャーの収益を阻害する税金課金を行うのでしょうか? Googleは公式にはどのようにExchange Biddersが自社のアドエクスチェンジと競合するようになるのかについて明らかにしていないため、これらについてはまだ分かりません。これらの不確実性に加えて、もっとも重要な点となるのが、GoogleがEBDAにおけるプライベートマーケットプレース(PMP)の利用を許可しないと報じられている点です。
 

Googleがこれらの疑問点に満足な回答を示さない限り、ヘッダービディングはパブリッシャーが無視できない利点を提供し続けるでしょう。ここでパブリッシャーは、オープンなヘッダービディングか、ベンダー独自のソリューションのどちらを選ぶべきなのか、という選択を迫られます。
 

市場には多くの良質なベンダー独自のソリューションが存在する一方で、パブリッシャーの選択や柔軟性は限定されます。ラッパーコードを管理するプロバイダーにより、ヘッダービディングのデマンド、分析、パブリッシャーが取引を行うサービスパートナーは決定されます。他方で、オープンなヘッダービディングにおいては、パブリッシャーがサービスやサポートを犠牲にすることなく、自身でコンフィグレーションや収益管理を行うことが出来ます。
 

オープンなヘッダービディングにおいては、いくつかの明確な利点があります。
 

1.

ラッパーテクノロジー:これはパブリッシャーが自身のページに必要な、複数の入札パートナーとの関係を管理するためのコードです。ラッパーコードはすぐに商品化され、殆どのラッピングが独自のソリューションとなっています。このことは、ラッパーの提供者が、DPFのセットアップ管理から、ヘッダービディングのデマンドパートナーと統合、レポーティングやその他サービスを手がけることを意味します。一方で、数は少ないながらも実質的に、オープンソースコードを利用して、全てのパブリッシャーが利用可能な「公共物」ともいえるラッパーも存在します(二つ例を挙げるとするとprebid.jsやpubfood.js等です)。

2.

ヘッダー入札者:これらはパブリッシャーのサプライへのアクセスを求める企業のことです(例:Rubicon、Index Exchange、Open X、AppNexusなど)。独自ソリューションの場合、パブリッシャーは、好みのパートナーの有無に関わらず、提携ヘッダー入札者とやりとりを行います。オープンテクノロジーにおいては、どのようなデマンド側のパートナーであっても、オープンソースのラッパーに独自のプラグインを組み込むことでやりとりが可能となるため、パブリッシャーはより多くの選択肢を得る事ができます。実際、prebid.jsを利用して独自コードを書いているヘッダー入札者は他のどのラッパーソリューションよりも多く存在します。

3.

分析:ヘッダービディングは、RTBと全く同じように(サーバーサイドからブラウザーに移行しているものの)リアルタイムオークションの為、パブリッシャーは、ビッドランドスケープやレイテンシーなどのよく似たメトリクスに関するレポートを欲します。オープンテクノロジーによって、多くのヘッダー入札パートナーに様々なオプションが提供されているのと同様に、パブリッシャー側は、Adomik、AppnexusまたはGoogle Analyticsのような、prebid.jsを利用している好みの分析パートナーを選択する事ができます。

4.

サービス:独自のソリューソン提供ベンダーの中にはオープンソースによるラッピングはサービス、メンテナンスが不足している、若しくはそれらが全く提供されない、と言う人々もいます。しかしながら、実際のところオープンなソースコードと最高のサービスは相反するものではありません。例えば多くの技術的に成功しているプラットフォームはオープンソースのLinuxカーネルにより成り立っています。オープンソースによるヘッダービディングによって、パブリッシャーはオープンソースプロバイダー、サードパーティ、インハウスの何であっても、自身が好むサービスプロバイダーの選択が可能になります。

 
オープンテクノロジーによるヘッダービディングの良い点は、パブリッシャーが好きなように変更が可能な点です。時間が経過し、パブリッシャーがよりヘッダービディングによる収益化について知識を深めた際には、より多くのデマンドパートナーや、異なる分析プロバイダー、新たなサービス提供者との取引を行いたいと考えるかもしれません。ベンダー独自のソリューションでは、パブリッシャーがあるヘッダービディングの要素に不満足な場合、最初からやり直しが必要となる場合もあるでしょう。しかしながら、オープンテクノロジーにおいては、パブリッシャーがコードを所有しており、あるコンポーネントに変更を加えようとした場合であっても、それまでの取り組みが無駄になりません。
 

オープンテクノロジーによる、新たなコラボレーション、カスタマイズ、豊富なオプションによって、パブリッシャーは自社管理と収益化の両社を最大化することが出来ます。結局、これがヘッダービディングの全てではないでしょうか。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。