マーケター向け、モバイルオーディエンスデータ取り扱いの基本
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
マーケターがデータの購入や、オーディエンスセグメントのモデリング、正しいプラットフォームの選択などにおいて考えなくてはいけないことは何だろうか?今回のモバイルオーディエンスについてのコラムでは、AdSquare社CEO Tom Leband氏が、オーディエンスターゲティングの活用に自信を持てないマーケターの方向けに、モバイルキャンペーンを成功させるために必要な基本的なステップについて解説してくれた。
スマートフォンは全てのデバイスの中で最もパーソナルなもので、私たちにとり、常時接続された消費者世界へのアクセスと言えます。スマートフォンで、情報を収集したり、リモコンのように活用したりしますし、スマートフォンはまた、現在では広く買い物にも利用されています。これらの、いわゆる「モバイルモーメント」により、とても多くのデータが生成され、マーケティングで利用されることになり、広告主が適切なコンテキストでメッセージを配信したりするのに利用されます。
これらのデータはリアルタイムでのモバイル広告(モバイルプログラマティック広告)で利用されたり、オーディエンスやコンテキスト(モバイルオーディエンスデータ)に利用されたりします。次の5つのステップはオーディエンスターゲティングによりキャンペーンを企画する際、計画から実行、分析までのプロセスを通じて留意しなくてはいけない点です。
1.ターゲットセグメントを定義づける
明確にターゲットグループを定義することは、全ての広告キャンペーンの成功のための基本となります。さらにモバイルキャンペーンの企画プロセスにおいては、社会学的なパラメーターだけではなく、ターゲットグループの個性を理解することが必要になります。あなたがリーチをしたい人々がどのような毎日を過ごしているか考えてみてください。どんな環境に住んでいて、どんなお店に訪れるのでしょうか?趣味は何で、どういったことにお金を消費するのでしょう?利用するアプリはどういったものでしょうか?あなたはターゲットとする消費者についてしっかりとペルソナが描けているでしょうか?
これらの特徴についてより具体的になると、あなたのターゲットセグメントはより明確になるでしょう。
ペルソナ(ターゲットとする顧客の典型像)が描けると、セグメントを定義する上で、更に精緻化した情報を加えることが出来るでしょう。
2.オーディエンスを形成する
オーディエンスを年齢、性別、世帯収入などのアトリビュートで決定する時代は、もう終わりました。オーディエンスターゲティングの時代においては、より多くのデータポイントを活用して様々なパラメーターを利用することで、より全体的なオーディエンスを定義することが可能です。(例えばビジネストラベラーといった)既に定義されているサプライヤーのセグメントで事足りるのか、自身で新たにモデリングを行うべきなのかを決定する必要があります。モデルリングのプロセスにおいては、異なるデータポイントの組み合わせにより独自のルールを形成することができます。例えば、「公園にいる人」、かつ「日向にいる人」のような組み合わせです。
気をつけなくてはいけないのは、より定義が具体的になると(より「&」を組み合わせたオペレーション)、リーチ数が少なくなる点です。プラットフォームによってはリーチと価格予想を提供してくれるサービスもあり、モデル形成時に正しいバランスを見つけることが出来るでしょう。
3.データプロバイダーを選択する
モバイルプログラマティック広告は、伝統的なオンライン広告よりも大きく進化し、ユーザーをターゲティングするために、アプリ利用からローカルのコンテキスト、購入データから製品趣向など、非常に多くの方法が提供されています。このようなデータを入手するために、様々なデータベンダーにコンタクトをすることです。彼らは扱っているデータポートフォリオだけでなく、提供するデータの質やコストも異なります。この段階で、モデリングプロセスにおいて定義されたデータポイントを活用するための、正しいパートナー探しが重要です。更に、キャンペーンで自社のCRMやサードパーティのオフラインデータを活用する際には、そういった機能が搭載されているか相互接続をサポートしてくれるプラットフォームを選択する必要があります。このプロセスは一部自動化されており、セルフサービス及びプラットフォームサービスの両方にて提供されています。
4.キャンペーンを実行する
ターゲットグループが定義され、データプロバイダーが選択されれば、オーディエンスをDSP側でアクティベートして、キャンペーンを開始することが出来ます。DSPは、通常データ購入ではなく、メディアを念頭に開発されている点に注意してください。またDSPが接続されているデータプロバイダーの数は限られ、必要なモバイル向けアルゴリズムが搭載されておらず、オーディエンスのモデリングに必要な機能が一部しかサポートされていないことがあります。こういった場合の代替として、モバイルデータに特化した中立的なオーディエンスマネージメントプラットフォームの活用することが挙げられます。こういったプラットフォームはターゲットグループのモデリングのために開発されており、あなたの望むDSP上にて、オーディエンスをアクティベートするために、エクスポートしたりデータを統合したりといった機能を備えています。
5.測定し、学習する
DSPもしくはAMP上のRTレポート機能を利用して、キャンペーンのオーディエンスモデルを最適化しましょう。正確性とリーチの間のカリブレーションにおいては、キャンペーン中に補正を実行することは目的達成のために必要になります。
KPIに応じた最適化のために、高いクリック率というのは成功を測る要素の一部分にしか過ぎない点を念頭に置く必要があります。ブランディングに関するキャンペーンでは、認知度、ブランドイメージ、購入意思のようなゴールが必要になり、アプリに関するキャンペーンでは、ダウンロードや、アプリ購入、ライフタイムバリューなどの指標が重要です。キャンペーンにおけるターゲティングだけでなく、測定やアトリビューションにおいてデータの潜在性を見出すことが重要です。一例を挙げるならば、キャンペーンによって、近隣のディーラーへの訪問者数が増えたのか、といったことさえも測定可能です。
モバイルオーディエンスデータによって、例えばキャンパスにいる学生や空港の旅行者、あなたのビジネスの近隣にいる潜在顧客など、正しい「モバイルモーメント」に応じてオーディエンスのターゲット化が行えるようになっています。モバイルオーディエンスに関するデータを十分に活用することが出来れば、オンラインとリアルな世界の顧客行動の間の点をつなげる全体的なアプローチが可能になります。ターゲティングの精度を向上させ、広告主がターゲットオーディエンスにより近づくことが可能になります。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。