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デジタル広告とデータ活用-第5回:プレミアムなデータを拡張し、ROIの改善に成功 Forbes JAPANの施策とパートナー選定、そしてその理由 [インタビュー][PR]

パブリッシャーでありながらDSPとタッグを組み、ROIの劇的な改善に成功したのがForbes JAPANを運営するatomixmedia社だ。同社はAdRollを導入し、自社のユーザーデータを元に潜在顧客層を発掘するターゲティング広告「AdRoll Prospecting」を活用して成果を上げている。
atomixmediaのデジタルマーケティング成功の秘訣と、AdRollのサービスの魅力について取締役の角田勇太郎氏(写真右)とマーケティング部 マネージャーの仁保智氏(写真左)にお話をうかがった。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

雑誌・Web・イベントを立体的に展開

角田氏

―現在のビジネスの概要についてお聞かせ下さい。

角田氏:Forbesはグローバルブランドですが、日本では「富裕層」「長者番付」「アメリカの雑誌出版社」と認識されている方が多いと思います。しかし、単なる出版社と異なる点はForbesという強力なブランドを使い、雑誌・Web・イベントを統合することでオーディエンスの最大化を図り、メディアの価値として提供している点です。

引き続き、雑誌の定期購読者数も伸ばしていきますが、Webやイベント、会員化などの立体的な事業展開を見込んでおります。

―貴社のイベントビジネスについて詳しくお聞かせ下さい。

角田氏:大きく2つの方針があります。まずは、自主イベントに協賛を募る形です。例えば本国でもやっている「起業家ランキング」。スタートアップをアワードで表彰するというものなのですが、Forbes JAPAN初の自主イベントとして、昨年に日本でも開催しました。これはもうひとつは、クライアントと一緒にイベントやセミナーを作るというモデルです。

上記とは異なりますが、クライアントのイベントに雑誌とWebを使って送客するビジネスも展開しています。このビジネスにはAdRollのサービスを活用しております。

AdRollは当初からスコープに

―AdRollを知ったきっかけを教えて下さい。

角田氏:様々なDSPを比較していく中で決定しましたが、当初から「AdRollを使おう」というのはある程度見えていました。AdRollは業界の第一人者で、知らない人はいないですから。

―グローバルなビジネス展開において、デジタルマーケティング活動についてもグローバルで情報を共有されているのでしょうか。

角田氏:残念ながら、現時点でそこまではいっておりません。基本は各国のライセンシーで、経営を含めたオペレーションは各国単位で運営されています。ソリューション連携は一部実現していますが、テクノロジーやマーケティング面の連携はこれからというところです。

―従来のマーケティング活動全般及び、Webマーケティング施策についてお聞かせください。またその中でどのような課題を持っていらっしゃいましたか。

角田氏:AdRollを使う前は、Yahoo!やGoogle、Facebookなどそれぞれのプラットフォームで広告を運用していました。定期購読者獲得と、クライアント案件のセミナー参加者獲得という2つの目的がありましたが、運用効率の観点で課題を感じていました。個別のプラットフォームの管理画面を開いて動かす手間がかかりますし、CPIもなかなか下がりません。それでDSPの検討を始めたのです。

―各プラットフォームは自社で運用されていたのですか。

角田氏:はい。代理店さんにもお願いしていた時もありますが、大きな改善は見られませんでした。社内にノウハウを蓄積するためにも、いずれは自社運用をと考えておりましたので、切り替えのタイミングでAdRollに全てを集約することにしました。

―AdRollを活用したキャンペーンについて、詳しくお聞かせください。

角田氏:主に定期購読者の獲得やイベント集客に活用しています。当初、特定の記事やForbes接触者にリターゲティングするのが中心でしたが、創刊時は100万PV程でサイトパワーが限られており、ターゲットを広げるのに苦戦していました。歩留まりがすぐきてしまう、という課題があったのです。

そこで、類似の属性にも広告を配信し、潜在顧客を獲得するためにProspectingを活用することにしました。特にクライアント主催のセミナー集客では、効果を感じています。

今年5月からは、Webメディアの会員化を予定しておりまして、会員獲得にもAdRollを活用していくことを考えています。

プレミアムデータの拡張に顕著な成果

―貴社のクライアントのセミナーで集客をする際、AdRollのソリューションが効果的だったとうかがいました。この活用方法はForbes JAPANさんからリクエストされたことで実現したと聞きましたが、なぜそのような発想に至ったのでしょうか。データ活用に関する、貴社のカルチャーについても併せてお聞かせ下さい。

仁保氏

仁保氏:そもそも会社の目標として「ユーザーデータを積極的に活用していこう」という姿勢があります。セミナーの集客などにデータを活用する訳ですが、それまでは例えばクライアントのセミナーに100人の集客を依頼されても、ファーストパーティーデータのみでは母数が少ないため、断るしかありませんでした。しかし「どうしてもForbes JAPANと取り組みたい」とおっしゃって下さるクライアントが多かったため、このような活用方法を着想しました。

AdRollさんとも何度も相談して、「Prospecting」を拡大することでForbes JAPANと近しいユーザーに訴求する方法を採用しました。これはデータがなければ、不可能な施策だと思います。

―パブリッシャーが保持するデータの価値は、今と昔でかなり変化してきていると思います。いつ頃からデータの活用を考えていらっしゃったのですか。

角田氏:Forbes JAPAN再創刊の当初からです。セミナー集客で、我々がクライアントから求められるのは「金融資産2億以上の人を10人集めるプレミアムなイベントやりたい」などというレベルのものです。その際には、ファーストパーティーデータの精度を上げていき、その後拡張する方法をとります。レバレッジを効かせるのは向いていると思います。マスに近いメディアだと、こうはいかないでしょう。我々は、非常に特殊な読者、ユーザーを囲っているからこそ可能なのです。今後はこの層をいかに広げていくかがビジネスの中核となります。DMP含めて顧客管理には重点を置いていますが、今はまだWebと定期購読者とセミナー参加者のデータベースは別々です。これらを統合して、リアルとWebが連携したビジネスを展開していきたいと考えております。

集客3倍、定期購読のCPAは半分以下に

―キャンペーンの成果についてお聞かせ下さい。

仁保氏:セミナー集客は、自分達で運用していた頃に比べて3倍近く集まるようになりました。また、定期購読のCPAも半分以下になりました。ただまだメディアのPV数が今よりも少ない時期でしたので、歩留まりを起こしてしまったところがあります。現在はキャンペーンを一旦停止していますが、メディア規模が当時より10倍程度の1000万PV

に拡大したので、また5月頃から再開してみたいと考えています。複数媒体でのキャンペーンを手作業で行っていた時より確実にCPAが下がっています。

―短期間でトラフィックをどのように10倍に増やされたのでしょうか。

角田氏:地道に増やしました。弊社はライセンシーという点で普通のメディアと異なります。本国サイトでは1日500本程の記事が上がり、我々はその中から日本にマッチするものをキュレ―ションして配信しています。一般のメディアが毎日10~20本を配信するのは大変ですが、我々はグローバルなネットワークにより、膨大なコンテンツの資産を活かすことができます。当初は1日2~3本でしたが、現在は毎日10本程度配信しています。

―コンテンツの展開にはソーシャルメディアも活用されているのですか。

仁保氏:はい、ソーシャルメディアも活用しています。我々は後発メディアですので、編集のみではなく、編成担当もいるのが特徴です。一本のコンテンツをプロダクトと考え、ソーシャルでどう拡散されているかを追っていきます。そして例えば、PVの初速が良くなければタイトルを変えて再度ツイッターに投稿してみるなど、1本1本の反応をチェックします。記事配信に関しては、KPIも非常に細かく設定しています。

―AdRollのサービスの導入はスムーズにできましたか。Prospectingの活用に至るまでの、課題はなかったのでしょうか。

角田氏:導入自体はとても速かったです。タグの設置だけで終わりました。

仁保氏:AoRollは業界的にもかなり運用負荷が少ないと思います。例えばこれが違うリタゲのDSPさんだと、困ったことがあってもそのまま悩むしかない、ということもありました。しかしAdRollさんは電話ですぐ聞いてすぐ対応、というサポートをしてくれます。「明日までにお願いします」といった無理なお願いをすることもありましたが、どうしたらうまくいくか、ロジカルに説明していただけたので非常に助かりました。

今後の課題としては、DMPとの連携が早く実現するよう希望しています。できれば年内くらいに。そうすれば我々もまた新しい取り組みにチャレンジできます。

角田氏

―パブリッシャーの観点で、今後データを活用したデジタルマーケティングがどのようになっていくと思いますか。

角田氏:データを活用しきれているパブリッシャーは少ないと思います。特異なユーザーをいかに獲得し、そこを拡張して活用できるかが重要です。その意味で、ファーストパーティーデータ自体がメディアの価値になるようなものだと認識しています。従来の紙のような「だいたいこういう人がざっくりこれぐらい読んでいる」というビジネスは今後難しくなると思います。

プレミアムデータが可能にする「パブリッシャーなのにDSP」

―貴社の新しさは、パブリッシャーでありながら、データをDSPに絡めて活用されている点だと思います。パブリッシャーもDSPを積極的に活用するという動きは今後他のパブリッシャーにも広がるのでしょうか。

角田氏:ビジネスモデル次第だと思います。1トラフィックあたりの価値をどこまで高められるかです。Forbes JAPANであれば「金融資産2億円のユーザーが10人集まる」というイメージが大切です。レバレッジを効かせられるので相性は良いと思いますが、現在の日本の多くのパブリッシャーが同じことをするというのは、難しいかもしれませんね。

セミナーなどの広告案件ベースの話だと、まずはブースト機能としてリターゲティングを活用したらよいのではないかと思います。潜在層へのリーチのベースとして。

―Prospectingを真っ先に活用されましたが、媒体のもつブランドを強く意識されている貴社のブランディングへの貢献についてはいかがでしょうか。

角田氏:やはりフルファネルを対象としているというところは効果が見られます。CPAやリード獲得のみならず、ユーザー接点から作り出せるのはProspectingならではの効果です。

仁保氏

仁保氏:私も同じく、フルファネルを対象としていることのメリットを実感しています。定期購読に関していえば、バナークリエイティブをForbes JAPANに接触したことがない人に出していくのは非常に重要です。Forbes JAPANは再創刊してから1年10ヵ月、まだまだ認知を広げていく段階にあります。

定期購読獲得のCPAのほかに、「認知を広げる」という極めて重要な指標においても、AdRollはそこに大いに貢献してくれています。

広告ビジネスの側面でも、Prospectingの効果は期待できます。Forbes JAPANには、BrandVoiceというブランド向けの広告商品があります。これは、ブランドコンテンツをForbesサイト内に組み込む(=サイト内にオウンドメディアを持つ)というもので、米国の Forbesが先駆的に販売したものです。これを日本でも展開し、例えば大手自動車メーカーさんがForbes JAPAN内にオウンドメディアをお持ちになり、そこへのユーザー流入をAdRollで拡張していく、というような施策も考えられます。今後は、こうした新たな取り組みにおいても、AdRollを積極的に活用していきたいと思っております。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。