Now & Next: プライベートマーケットプレース
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
Now & Nextは、ExchangeWire Research の新しいシリーズである。このシリーズでは、最新のリサーチを評価し、公平な洞察及び現在のトレンド分析、並びに、今後の広告及びマーケティング技術の予測を提供する。今回はプライベートマーケットプレースについて取り上げたい。
プライベートマーケットプレース:プレミアムインベントリの未来
eMarketerによると、世界中のデジタル広告市場は、2014年の5454億ドルが2018年には21.5%増加し6627.3億ドルに達すると予想されている。2014年には英国の広告インベントリの45%がプログラマティックで取引されるようになり(IAB)、広告取引をより効率的なものにした。OpenXのリサーチによると、35%のパブリッシャーがプレミアムインベントリをプログラマティックにより配信している。
ほぼ半分(45%)もの広告インベントリがプログラマティックで取引されているにも関わらず、プレミアムインベントリの多く(65%)はパブリッシャーにより直接販売されている。(OpenX)
これは直接取引によってパブリッシャーがより価格やインベントリ購入者に関して、オープンなオークションを実施するよりもコントロールを効かせることができるからである。
プライベートマーケットプレースでは、プログラマティックのすべての利点に加えてインベントリの購入者のコントロールを行う事が可能である。
プライベートマーケットプレースの成長
プレイベートマーケットプレースの利用は年間112%の成長を遂げており、SpotXchangeの総取引の40%を占めるまでに至っている。
IABによると、プレイベートマーケットプレースでのCPMはオープンオークションよりも242%も高額である。
米国ではプレイベートマーケットプレースでの広告支出は年間30.9%成長しており、2016年には30億ドルに達する見込みであり、RTBデジタル広告支出の28%をも占める数値である。(eMarketer)
プレイベートマーケットプレースはパブリッシャーのオープンRTBにおける取引での懸念を打開するために作られた。
2015年のQ3には全世界の支出のうち、12%がプレイベートマーケットプレースを通じた取引となり、Q2の11%から増加している。(Index Exhange)
全世界のPMPインプレッションはQ2からQ3にかけて17%増加しており、特に英国では230%増となった。(Index Exhange)
MoPubのデータによると、2015年Q2時点ではブランド企業による支出がプレイベートマーケットプレースの87%を占めている。
オープンエクスチェンジでは、インプレッションが好ましいドメインによって購入されるようにマーケターが慎重に作成したホワイトリストが利用される。しかしながら、オープンエクスチェンジにおいて取引されるインベントリの量が非常に多いため、購入されたインベントリがターゲットドメインによるものであったかの保証はない。プライベートマーケットプレースでは、選ばれたドメイン上のみでインベントリの購入、表示がなされる。
プレイベートマーケットプレースの内側
PMPにおいてはブランドとパブリッシャーが、PMPでの固定価格のビッドに同意する為にお互いに話をする必要がある。価格決定後、パブリッシャーはDeal IDというディールに紐付いたユニークなシステムが発行するIDを生成する必要がある。このIDはバイヤーとパブリッシャーの間の取引を確認するのに利用される。
Deal IDの利用によって、パブリッシャーは個々のバイヤーに対して底値を操作することができ、良いバイヤーに対しては更に低い価格を設定するなどの行為も可能になる。Deal IDが生成された後、バイヤーはDSPに行ってDeal IDを取得し、SSP側に対してIDを配置しなくてはならない。
PMPのルールはパブリッシャーごとに異なるが、PMP内では決められたヒエラルキーが存在する。購買力の大きなエージェンシーがPMP上では優先的なステータスを与えられ、一定の期間インプレッション単位で単一のビッド価格での同意を得ることが出来る。優先バイヤーがインプレッションにビッドした場合には、インプレッションがオープンオークションにおいてより高値をつける可能性があったとしても、同意した価格での購入が可能になる。
優先バイヤーがインプレッションにビッドしない場合には、パブリッシャーとの「初期交渉権」に同意をしているバイヤーに権利が移る。このパブリッシャーと初期交渉に同意したバイヤーも、インプレッションにビッドする際に支払う価格について同意を済ませている。
優先バイヤーや初期交渉を行うバイヤーがインプレッション購入を見送った場合には、インプレッションはPMP内のプレイベートオークションの場へと移され、高価な価格をつけたビッダーが競り落とすこととなる。PMP内で誰にも競り落とされることがない場合には、PMPはオープンオークションにリリースされる。
プレイベートマーケットプレースの利点
売り手と買い手の両者にとってプレイベートマーケットプレースは多くの利点を提供する。まず、バイヤーはオープンエクスチェンジでは購入ができないようなプレミアムインベントリを手にすることが出来る。プライベートマーケットプレースではパブリッシャーは、自身の領域におけるファーストパーティデータを利用できる為、よりデータのコントロールを行うことが出来る。このデータの活用によってパブリッシャーはより高価価格をつけることができ、IndexExchangeによりExchangeWireにもたらされたデータによると、通常のマーケットプレースよりも平均して85%もの高値で取引をされている。
プレイベートマーケットプレースではバイヤーがパブリッシャーと関係を構築し、ビューアブルインプレッションの定義や正しい広告配置の決定、支払いが発生するインプレッションの定義付け等について規定を行う事が出来る。
2015年のQ1からQ2にかけて、プライベートマーケットプレースを利用するパブリッシャーは、オープンエクスチェンジを活用するプレイヤーよりも93%もの収益の増大が見られた。(MoPub)
このことはPMPのプログラマティックのフレームワークを利用することで、如何に個人的な関係が高められるかを示している。
オープンエクスチェンジにおいては、パブリッシャーは広告の質やコンシューマーエクスペリエンスへの影響などを無視して、最も高額なビッダーに対して販売を行わなくてはならない。プライベートマーケットプレースではパブリッシャーは選ばれた広告主だけをオークションに招待し、好まざるビッドへのインベントリの流出を防ぐことが出来る。プライベートマーケットプレースによってパブリッシャーはインベントリの価格に対してよりコントロールを効かせることも可能になる。
プライベートマーケットプレースの未来
プライベートマーケットプレースは、オープン RTBの制約もあり、2015年には実質的な成長を見せた。2015年にPMPはQ2からQ3に3桁(230%)もの成長を果たし、Q3からQ4においても2桁の成長が予想されている。(Index Exchange)
プライベートマーケットプレースは2016年においても、パブリッシャーがインプレッションごとの最良価格を得られるという利点を生かして、2016年も更なる成長が見込まれる。
プライベートマーケットプレースは、パブリッシャーとエージェンシーの両者にとって利点のあるサービスである。パブリッシャーは価格をより適正に管理出来るようになり、エージェンシーはインベントリの質を確保することが出来る。現在、PMPはパブリッシャーごとに大きく異なるが、今後より多くのパブリッシャーがPMPを通じてプレミアムインベントリを提供していくにつれて、プロセスの統一化が進んでいくと考えられる。
2015年、PMPを通じて割り当てられた広告支出は米国では12%に達するのに対して、英国では1%にしか満たなかった (Index Exchange)英国でも四半期毎にPMPへの支出は高い成長を見せており、この傾向は2016年も続くと予想される。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長
慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。