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全く新しい広告へのアプローチを必須とするプログラマティック

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(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

ネスレの中華圏でデジタル・マーケティングとソーシャルメディアの責任者を勤めるHannelore Grams氏は、プログラマティック・バイイングの導入を目指すブランドは、広告に対する異なったアプローチの検討、またプラットフォームをサポートするために必要なプロセスについて考え直すべきだと言う。

ネスレは、今年のメディアバイイング戦略でプログラマティックをさらに組み込む方法を模索している。プログラマティックについては業界内でも多くの議論がされてきたが、同氏はほとんどの企業が効果的に展開する方法を知らない、とExchangeWire.comのインタビューで述べた。

プログラマティック・バイイングに関して、マーケッターは様々なコンテンツを必要とする。例えば、より多くの広告フォーマットを準備すること、また概念化への異なるプロセスが要求される。

 

「通常、私たちは多くのバリエーションを持たない1種類のレイヤーやバナーを主に扱っていますが、プログラマティック・バイイングにおいては違います。ですから、もし今、利用可能なインベントリがあれば、(広告がそのインベントリに必要なパラメータに合うよう) 広告をカスタマイズする必要があるのです」

「プログラマティックでは広告に対して完全に別のアプローチを持ち、さらに「もし~なら」といった複数の仮定に対する準備をしておく必要があります。 ロケット工学ではないですが、あなたのコンテンツに関して、完全に別のモデル・概要・エグゼキューションが要求されているのです」。そして代理店が、これを十分にサポートしてくれるかはわかりません」

Grams氏のチームは現在、ネスレの中国での幼児向け栄養食キャンペーンに対するマーケティング効果を最大化するために、プログラマティック・バイイングの方法を調べているが、旅行や保険のような他分野と比べると、この市場における経験が不足していると言う。

実際にチャレンジするかどうかはさておき、ネスレがプログラマティックを真剣に検討すべきであることを確信している。なぜなら業界はその方向へ向かっており、ネスレは消費者が向かう先をフォローする必要があるからだ。

「私は代理店やブランドなどの組織がさらに機敏に動き、意思決定のスピードを加速させる必要があると考えています。今後のあり方として、間違いなく正しい道です」と述べ、ネスレがプログラマティックについてはグローバルで同じ見解を持つことを付け加えた。 実際、ネスレの本社は、他の支社に対してアドバイスを送り、プログラマティックを採用する最適なアプローチや、国際的なビジネス・パートナーを探している。

ネスレ 中国 Hannelore Grams氏

ネスレ 中国
Hannelore Grams氏

代理店の役割について詳しく述べる中で、Grams氏は信用を築き、専門知識を共有する重要性を強調。透明性の欠如は、代理店側の知識の欠如、そして代理店が問題に取り組む能力がないことを示唆する。共に働く代理店に対しては、「誠実さ」を基準に掲げていると言う。

また、専門性を備えた代理店やニッチ産業の代理店にも目を向けている。このような代理店は、ソーシャルメディアなど特定分野で強力なノウハウを持っている可能性があるからである。専門性を備えたローカル・エージェンシーは、そのプラットフォーム周辺のコミュニティや、特定の取り組みを管理する際に役に立つはずだ。

ローカル・エージェンシーのような小規模でニッチなプレーヤーが知識の共有に寄与することも多く、彼らが大きな代理店のスキルセットを強化し続けるインセンティブにもなる。これは、プログラマティックの世界にも適用されるものだ。

代理店に対して求めることとしては、何が実現できるのか、キャンペーンをサポートするための技術要素の特定、またテクノロジー主導のキャンペーンを展開することの複雑さを理解することにより多くの時間をかけることがある。 そうすることで、ブランドが企画立案の段階にかける時間を削減することができるからだ。

 

マーケッターが中国で直面するデータスピードの課題

中国でマーケッターとして直面する課題について尋ねられると、中国の3つの巨大なプレーヤーである百度、阿里巴巴、テンセントが動かす市場について言及しながら、Grams氏はこの3社に遅れをとらずについていくことの難しさを指摘した。

これらの企業は、急速なペースで自社プロダクトのバージョンアップを繰り返し、量産している。そのペースがあまりに早く、その結果、ブランドがついていくことが困難になっている。 消費者は当然ながら興味を抱き、速やかに新しいサービスを試すのだが、マーケッターはプロダクトをテストして、それでもマーケットで1位になることを目指す必要がある。

今日のブランドは、ソーシャルメディアやモバイル、Eコマースのようなデジタル施策なしでは、もはやキャンペーンを展開できない。ことモバイルに関しては、企業が自社のオーディエンスを最適にターゲティングする方法を見つけるという課題が共通して見られるようになってきている。

「様々なプラットフォームを利用するのにはコストがかかります。一方で、経営資源には限りがあるため、あらゆる場所に展開することはできません。 新たなトレンドが登場した段階でそれをいち早く掴めるように、優良なデータと洞察力を持つことが必要です」

 

だが、中国においては、役立つデータの取得が困難であることを指摘。例えば、百度と微信は互いにデータのやりとりをしていない。そのため、両方のプラットフォームでキャンペーンを展開する際は、互いに情報をやりとり出来ないデータを持つことになる。

 

「こうしたデータ連携などをサポートしてくれる企業も存在しますが、依然として、例えばブランドがどうして消費者と接触しコンバージョンさせるのかを推定したり確認したりすることは困難です」

 

ネスレは、デジタル・モニタリング・センターを稼働させて、オンラインの会話や、また中国で公的に入手可能な会話をトラッキングできるようにしている。 この会話には、フォーラム、ブログ、電子小売業者のポータルサイト、Baiduにより運営されるいくつかのコンポーネントが含まれている。

モニタリング・センターはネスレが重要とみなしているキーワードを元に、ブランド、製品のカテゴリー、そして競合企業に関連した内容に注意を払う。 ここで集められたデータの洞察により、ネスレは正しい顧客をターゲットにし、正確な顧客に正確なメッセージを送ることができるのである。

(編集:三橋 ゆか里)

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。