NEWS: AOL、動画アドネットワークのAdap.tvを買収へ ―動画広告需要のさらなる拡大の兆しとなるか―
by ニュース
on 2013年8月15日 in米国の大手インターネットサービス会社AOLは8月7日、動画広告のプラットフォームを展開するAdap.tvを4億500万ドルで買収すると発表した。
AOLの有価証券報告書によると保有する約4.7億ドルのキャッシュのうち、3.2億ドルのキャッシュを今回の買収へつぎ込んだという。AOL社にとって、今回の買収はそれだけ社の命運をかけた取り組みであると同時に、Adap.tvとAOLの協業事業の将来性を期待しての買収だと言える。
AOLは、Adap.tvの買収がもたらすものとして次のように挙げている。
・広告主と配信先との双方にメリットとなるプログラマティックな動画広告の配信をあらゆる配信面において実現するために不可欠な技術。
・「広告の配信」「測定」「ターゲティング」「プランニング」を行うために、広告主とパブリッシャーのための統一された管理プラットフォーム。
・過去3年、グローバルで100%の増収を実現し続けているインターネット上で最も急速に成長しているプラットフォーム。
・Ad Age 100(Advertising Ageが発表した大手広告主ベスト100)のうちの83社、comScore 100 (comScoreが発表した大手広告主ベスト100)のうちの70社における採用実績。
・グローバル動画広告の自動化のトレンドを変革するほどの能力を持った社内体制。
Adap.tvは2012年、トップブランドの広告主による26,000ものグローバルなキャンペーンを、9,500を超えるウェブサイトにおいて展開した。AOLはこのように勢い著しいAdap.tvを取り入れることにより、広告主とパブリッシャーを一気通貫してつなぐ新たなソリューションの実現を目指しているようだ。
AOLの会長兼CEOのTim Armstrong氏(AOLのCEOに就任する前は、米国googleの副社長を務めていた人物)は、今回の買収について、次のように述べている。
「AOLはオンライン動画におけるリーダーであり、AOLとAdap.tvが協力することにより、動画広告のプラットフォームは大きな発展を遂げるでしょう。Adap.tvの創始者と彼らのチームは、動画広告をEコマースのような身近なプラットフォームに作り上げようとしている最中です。AOLとAdap.tvは、協力してこのビジョンを強く推し進めていくつもりです。
今、動画配信においては2つの大きなトレンドが起こりつつあります。1つは、従来型のテレビ放送からオンライン動画配信へという動き。もう1つは、職人的な手作業によるトランザクションの獲得から、プログラマティックなメディアバイイングへの移行です。Adap.tvは、今生まれつつあるこれらのトレンドの発信源となりうる大きな機会を目の前にしていると言えます。」
一方、Adap.tvのCEO、Amir Ashkenazi氏は次のように述べている。
「Adap.tvは、デジタル広告におけるもっとも重要なカテゴリにおける、もっとも重要なビジネス創り上げることを目指しています。我々は、ほとんどのテレビ広告が、我々の広告プラットフォームのように、『プログラマティック』に出稿管理される日が、目の前まで来ていると考えています。AOLとAdap.tvが手を組んだことにより、我々のビジョンであるこのテレビと動画コンテンツが効率的かつ効果的に配信されるためのプラットフォームは、大きく前進するでしょう。」
日本においても今年は動画広告が注目されており、今回、米国のプレミアム媒体社であるAOLが新鋭の動画プラットフォーム企業の買収に踏み切ったことにより、今後世界的に動画広告への注目度がますます高まると考えられる。
これまで、デジタル広告は大きくそのマーケットを広げてきたが、「コンバージョン獲得型」の広告が主流で、「ブランディング型」の広告については、まだ十分にその価値を発揮されてはいなかった。今回の買収により、ブランディング型の広告展開を重視する大手企業がデジタル広告へとその比重を傾ける布石ができたと言える。
世界展開するブランディング型の広告主がデジタル広告へ大きく進出することで、デジタル広告業界における国境の壁が低くなるという動きも今後充分に考えられ、日本市場における動画広告の活用に拍車がかかる可能性もある。動画広告業界の動きは、ますます目が離せなくなりそうだ。
関連リンク
ABOUT 大山 忍
ExchangeWire Japan 編集長
米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。
2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。