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RTB House×JAL対談-非会員の新規獲得でリターゲティング広告の限界を乗り越える方法とは[インタビュー]

サイト離脱ユーザーに対して表示されるリターゲティング広告は、顕在層に向けたアプローチ手法として有効な打ち手として長らく活用されてきた。一方で、もはや宣伝を必要としない固定顧客にまで広告を表示したり、Cookie規制の直接的な影響を受けたりといった課題も少なくない。こうした課題を突破する取り組み事例を出した両社に話を聞いた。

(Sponsored by RTB House)

 

機械学習と深層学習の違い

 

―自己紹介をお願いします。

 

小島氏:日本航空株式会社のWeb販売部1to1マーケティンググループ主任を務める小島史也と申します。ウェブ広告とGoogle Analytics等計測ツールの企画立案・運用管理、SEO対策が主な担当です。

 

ウェブ広告に関しては、航空券およびパッケージツアー商品の予約獲得を目的として、各種のリスティング広告やディスプレイ広告などを運用しています。

 

加藤氏:RTB House JapanのBusiness Development Directorとして主に新規営業を統括する加藤貴大です。当社の特長となるディープラーニングを活用したダイナミックリターゲティング技術を活用した効率的な刈り取り施策を広告主や広告代理店の皆様にご案内しています。

 

―両社の取り組みが開始されるまでの経緯をお聞かせください。

 

小島氏:お陰様でJALというブランド名については多くの方々に認知いただいていますが、そうした方々すべてが旅行に出掛ける際にJALの航空券を購入しているわけではありません。やはり実際の販売につなげるためには、航空券のニーズを持つ方々に対して適切なタイミングで適切な情報を伝える必要があります。

 

 

航空券のニーズが顕在化するタイミングで接触するには、やはりリスティング広告やリターゲティング広告が有効です。加えて、大手広告プラットフォームだけでは生活者との接点が限られるという認識の下で、いわゆるオープンインターネットへの広告配信を行うDSPも活用しています。

 

ただし、獲得施策を実施すると、言わばお得意様となっている既存会員ばかりに接触し、会員規模の拡大には寄与しないという状況に陥りがちです。当然のことながら、日本国内にはまだまだ非会員ユーザーが多くいらっしゃるので、そうした方々にも当社サービスを広くご利用いただきたいと考えています。

 

そうした課題を抱えている最中に出会ったソリューションの一つが、RTB Houseのリターゲティング技術でした。現状では多くの広告プラットフォームが機械学習を最大限に活用していると思いますが、その中で恐らく唯一となる深層学習を実装したRTB House様なら違いを生み出せるのではないかという漠然とした期待を持ちながら、まずはトライアルとしてお願いすることになりました。

 

―機械学習ではなく深層学習であればなぜ課題を解決できると思ったのですか。

 

小島氏:正直なところ、確固とした根拠があったわけではありません。人間がデータの特徴を判断する一般的な機械学習と、機械が判断する深層学習は確実に異なるとまでは理解していたものの、広告配信への活用においてどのような違いが生じ得るかについては具体的なイメージは持っていませんでした。しかし、だからこそ、どのような違いが出るかを確かめるために一度試してみたいと思ったのです。

 

加藤氏:小島様が仰る通り、端的には学習プロセスに人間が介入するか否かが主な違いです。そして深層学習は機械がデータの特徴を判断するからこそ、人間が思いもつかないようなアプローチや答えを出し得ます。一方でRTB Houseの開発者を含めて、深層学習においてどんな特徴量(予測の手掛かりとなる変数)をどのように見つけ出しているかまでは分かりません。

 

 

RTB Houseのエンジンは、各サイトに流入したユーザーがどんな商品を閲覧し、その後どのようなウェブ行動を経てコンバージョンに至っているかをひたすら分析しています。ユーザーの動きは決して一様ではなく、JAL様のページを開いた直後に航空券を購入する人もいれば、格安航空会社サイトを含めてじっくりと比較検討する人もいます。こうした様々なタイプやニーズに合わせて異なるアプローチを考え付くのが深層学習は得意です。

 

―深層学習機能ないしRTB Houseのエンジンを利用する上で広告主側が準備すべきことはありますか。

 

加藤氏:RTB Houseのタグを広告主様のウェブサイトに設置いただいています。今回のJAL様の案件に関しては、非会員を主な対象とするため、タグによる学習対象ユーザーのコントロールを行っていただいておりました。

 

非会員の購入が2~3倍に

 

―実際の広告効果はどうだったのですか。

 

小島氏:RTB Houseの広告配信開始後から数カ月で他の広告プラットフォームとの明確な差が出てきました。驚いたのは、購入者全体の中に非会員が占める割合の大きさです。他の広告プラットフォームの2倍以上大きかったのです。非会員獲得を主な目的とはしていたものの、ちょっとうまく出来過ぎなのではないか、という印象でした。

 

 

加藤氏:一般論として、非会員ユーザーは会員ユーザーよりもコンバージョン獲得が難しい。先ほど申し上げた通り、深層学習の中身については我々もよく分かっていないのですが、ともかく人間が容易には見出すことができない特徴量を機械が見つけ出したことで生み出した成果だと思います。JAL様とのお取組全体を振り返ると、過去1年でキャンペーン予算規模は3.56倍、コンバージョン数は1.55倍、売上額は3.72倍に拡大しました。

 

 

―本事例は、小島氏が言うように「ちょっとよく出来過ぎ」なのでしょうか。

 

加藤氏:いえ、決してそんなことはありません。他社様でも同様の事例は出ています。ただJAL様のサイトは日々多くのユーザーが訪問しているので、当社タグを通じて一定規模以上のデータが取得できたことが大きく寄与したのではないでしょうか。深層学習はデータが多ければ多いほど威力を発揮します。

 

Privacy Sandboxの最新状況とは

 

―リターゲティング広告はCookie制限の多大な影響を受ける見込みと言われています。

 

加藤氏:当社はGoogle提供のサードパーティCookie代替技術となるPrivacy Sandboxの開発に早期から関わってきました。2024年になってサードパーティCookie廃止を取りやめると発表されたものの、Privacy Sandboxの開発作業自体は継続しており、当社タグも対応済みで、Cookieレス環境下でリターゲティングを引き続き実現する仕組みは整いつつあります。

 

粛々と準備を進めてきた事業者の立場としては「リターゲティングは今後できなくなる」という声を聞くと、実態とは明らかに異なるので、少し歯がゆい思いを抱きます。

 

小島氏:大手広告プラットフォームではコンバージョンAPIのようにファーストパーティデータを有効活用する仕組みを代替手段として導入していることが多いという印象です。こうした背景を踏まえ、当社でもCookieの代わりにファーストパーティデータを活用した広告配信のあり方について試行錯誤を繰り返している最中にあります。

 

ただし、ファーストパーティデータを安全に利用するためのデータ環境を整備するのは簡単なことではありません。Privacy Sandboxであれば、広告主側が準備すべきことがほとんどないという点は魅力的だと思います。

 

―今後の事業展開についてお聞かせください。

 

小島氏:より多くの皆様に会員ユーザーになっていただくために、RTB House様との提携などを通じて、引き続き非会員ユーザーへのアプローチは続けていきます。

 

Cookieレス対策については、異なるソリューションの一長一短を見極めつつ、最終的には複数を組み合せて活用していくことになるだろうと見込んでいます。

 

加藤氏:当社はこれまでリターゲティング広告に特化してきましたが、2025年からはミッドファネル向けの「IntentGPT」という広告商品を本格的に展開する予定です。国内でも実験的な取り組みから成功事例が出始めているので、然るべき用意が整い次第、詳細をご案内できたらと思います。

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。