グローバル市場における標準化動向について―ATS Tokyo 2024 イベントレポート
デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2024」が2024年11月22日、都内にて開催された。
冒頭に実施された「オンライン広告に関する技術産業標準化動向」と題したプレゼンテーションは、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムであるIAB Tech LabのCEOを務めるアンソニー・カツール氏が担当した。
カツール氏はまず、2024年におけるIABの成果として、サードパーティCookieやIDFAの利用制限下においてもOpen RTB環境で透明性を担保ながらユーザーを推定的に識別できるIDブリッジングや、Google社より寄付されたデータクリーンルームのプロトコールであるPAIRの仕様のリリースなどに言及した。
続いてカツール氏は、オンライン広告業界が大転換期を迎えていると主張。象徴的な変化として地上波テレビからコネクテッドテレビ(CTV)への移行を取り上げた上で、関連したIABの取り組みとして、地上波テレビとCTVを横断した計測やフリークエンシーキャップを容易に実施できる環境の整備や、複数のベンダーのビューアビリティー計測を1つのSDKで管理・運用するために開発されたOpen Measurement SDKのCTV視聴環境特有の課題への対応、さらには1つのCM枠内にある複数のCM広告枠への入札を1度のリクエストで可能にするPodded Biddingなどを紹介した。
またプライバシー保護の強化への対応も進捗していると報告。プライバシーに関するユーザーの同意についての設定を保存して渡すための標準化されたフレームワーク Global Privacy Platform(GPP)に加えて、プライバシー保護強化を目的としたプロジェクトとなるPrivacy Enhancing Technologies(PETs)などの概要を説明した。
最後には2025年の活動計画の一部を紹介。ライブ配信における広告在庫取引や、CTVの広告クリエイティブに関するテクノロジー、コマースメディアなどの標準化にも取り組んでいく方針を示した。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。