既に7割のクッキーが規制されている事実を語ろう~共通IDとデータクリーンルームで ”変える”マーケティング戦略~ ーATS Tokyo 2024イベントレポート
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on 2024年12月09日 inデジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2024」が2024年11月22日、都内にて開催された。
「既に7割のクッキーが規制されている事実を語ろう~共通IDとデータクリーンルームで ”変える”マーケティング戦略~」と題した本セッションには、Globalive株式会社 代表取締役社長 梅野 浩介氏、株式会社電通 部長, データ・テクノロジーセンター 前川 駿氏、KDDI株式会社 コミュニケーションデザイン部 大下倉 舞氏が登壇した。
各登壇者は「日本・海外でのデータクリーンルーム(以下、DCR)活用の現状」「DCRの活用法や課題点」などに言及。昨年のATS Tokyo 2023でも話題に上がったDCRの現状アップデートのみならず、より有効的な活用法について興味深い意見が飛び交った。
昨年と比較しDCR活用がどのように変化したかについて問われた前川氏は、3つの変化を述べた。一つ目は、ビッグテックによる運用自動化ツールの増加に伴い、マーケティング効果を最適化するためのDCR利用が拡大したこと。二つ目は、ファーストパーティーデータとDCRをどう組み合わせるかという話題が増えたこと。三つ目は、キャンペーン後の効果計測のみならず広告出稿前や顧客の状態把握を目的としたDCR利用が増えたことである。
広告主として現状のDCR利用について問われた大下倉氏は、KDDIではゼロ次分析・広告の施策評価にDCRを活用しているが、主にリアルな顧客データの分析に使われていると述べた。
梅野氏は海外でのDCR活用例として、戦略的パートナーシップを結ぶOptableのDCRを用いた事例を紹介した。ある携帯キャリア企業にて、課題であったユーザーの紐づけを目指し、Optableを導入しユーザー判別・広告配信に活用する例、もう一つはオープンインターネット内でOptableを使って複数の媒体社のデータを一つに取り込み、IDで紐づけて情報を活用している例となる。
日本・海外の違いをふまえた上で、顧客のデータ保護の観点からDCRの必要性を強調した前川氏。一方、大下倉氏は現状課題として、DCRが他媒体を横断してデータ結果を活用することができない点に言及した。対して梅野氏は、オープンインターネット内での活用法として、それぞれの媒体の保有データをDCRに入れることで、媒体社が束になって、スケーラビリティを高めることができ、ウォールドガーデンと同じような配信が可能になる海外での取り組み実例を紹介した。
オープンインターネットでDCRを活用する価値について問われた前川氏は、「規模よりも深さ、ファンを作る、という部分で勝負ができるのでは」と述べた。DCRを介して企業同士がデータをシェアできるようになれば、既存の広告を超えた「体験」を創造していけるのでは、と提案する。
梅野氏は、「オープンウェブの中でDCRの上手な活用法を、メディアコンサルティングなどと共に媒体社をリードできればと考えている」と述べ、これからのDCR利用拡大への意欲を見せた。
DCRをどのように使っていくか、について個々の見解を交えながらも、データ分析のみならず、カテゴリーや産業といったジャンルを超えたプロダクトの開発にもDCR活用が広がり、今後さまざまなDCRを使ったトライアルが生まれることが期待される。
ABOUT 角田 知香
イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。